ナタリー SuperPowerPush - 神聖かまってちゃん

ニューアルバム「楽しいね」総力特集

鬱から躁に転換するときに才能が爆発する

──の子さんの情熱はみんな常に感じてると思いますよ。

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そうですかね。まあ「の子くんはロックだよね!」って言われたりもしますし。でも俺はそういうものをちょっとバカにしてますから。例えば俺はパンクバンドがギャーギャー歌ってるのとか大嫌いなんです。ああいったものよりももっと静かな中での爆発っていうか。真っ白な部屋の中で、1人でこうやってダイナマイト持ち込んで爆発させるような、そういったイメージで俺は曲を作ってて。「ロックンロールは鳴り止まないっ」もそういうイメージで作りました。

──じゃあ「ロックンロールは鳴り止まないっ」はストレートなロック礼賛の曲ではないということ?

俺がアンビエントミュージックにハマってたときに作った曲ですからね。俺は自分の音楽は基本的にアンビエントロックだと思ってるので。アンビエントミュージックとロックの掛け合わせなんじゃないですかね。アンビエントミュージック+ポップスのメロディ+ロックのサウンド。

──その自己分析は興味深いですね。

そういうものをやりながら、やっぱり最終的に自分がロックになってしまったという。まあそれはそれでまあ別にイヤな気はしないですけどね。

──「コンクリートの向こう側へ」もまさにそういう静かな世界を描いた曲ですよね。

そうなんです。そしてそういうものを作るためには、やっぱり1人でいないといけないんです。ネットも避けて。俺はニコニコ生放送でネットの人と向き合ってしゃべることで満たされてしまうんで。2ちゃんで書き込みするのも同じで、それによって自分が満たされていくんです。

──満たされた状態では描けない世界がある?

そうですね。やっぱり孤独とか死とか、そういうものに向き合って曲を作るんで。やっぱり1人でいなきゃって思うんです。そういうものが必要なんですよ、これ本当に。絵を描く人とかでもそうなんですけど。自分だけの絵を描くためにはやっぱり自分だけの世界を作って自分の中に閉じこもらなきゃならない。音楽も、そうすることによって自分だけにしか書けない、本当に自分だけの曲ができるんです。

──今回のアルバムの曲もそうやって作ったんですか?

俺、気付いたんです。曲が書けるのは躁鬱のおかげなんですよね。一番芸術性に富んだいい曲ができるのが、多分鬱から躁に転換するタイミングなんですよ。なんか変なこと言ってるかもしれませんけど、自分の中ではそうなんです。鬱から躁に上がるときに、なんかものすごく爆発する。誰かに医学的に説明してもらいたいぐらいですけど、まあ俺の中では本当にそうですわ。

かまってちゃんを作ったことが自分の誇り

──お話を伺っていると、の子さん自身もバンドも現在すごくいい状態のように見えますが。

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いやいや、でも今のままじゃいけないっていうのは思ってますよ。2ちゃんとかでも「かまってちゃんはオワコンだ」とか言われたりして。なんなんだよクソが。あの、でもなんていうか、最初にも言いましたけど「もう解散だ!」って思ったりすることもありますし。でも本当は俺が一番このバンドを解散させたくないんですよ。どのメンバーよりも思ってますよ。神聖かまってちゃんは俺の人生なんで。なんていうか、もっともっと……俺はこのバンドを続けていきたい。このもっと先の未来も、ずっとずっと。

──それは今のメンバーと一緒にやっていきたいということ?

そうすね。このメンバーと一緒にやりたいです、それは本当に。

──でも「神聖かまってちゃん=の子」なのであれば、かまってちゃんの名前を背負ってソロ活動をすることもできるわけですよね。

そうですね。

──でもそれはしない?

今はしないですね。なんていうか、俺はやっぱ……躁鬱が激しくて。多分ソロになったらもっと弱いと思います。死と向き合ってるときに配信なんてできないし。メンバーがいたほうがいいですわ。やっぱり俺はこのバンドが好きなんで。いや、このバンドっていうか、バンドじゃないからこそ逆に好きなのかもしれません。

──インターネット活動団体?

はい。やっぱ世界中探してもこんなバンドどこにもいないですから。俺はこの団体を作り上げたことを誇りに思ってます。

──確かにかまってちゃんは結成以来、独自のスタンスを貫き続けてますよね。

なんでどこにもいないかっていうと、やっぱその日本のネットカルチャーがどこの国よりも発達してるからなんですかね。俺はなんで世界の奴らがもっとそこに敏感になんねえのかなって思いますよ。俺はこれからもどんどん独自に、本当にどこにもいないような存在になっていきたいんです。このバンドは続けていくことに意義があると思ってるんで。

──じゃあ続けていければ売れなくてもいい?

えっ、いや、売れたいです。何言ってんすか! 売れなくていいわけないじゃないですか!(笑)

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CD収録曲
  1. 知恵ちゃんの聖書
  2. 仲間を探したい
  3. 友達なんていらない死ね
  4. コンクリートの向こう側へ
  5. ベルセウスの空
  6. 雨宮せつな
  7. 2年
  8. らんっ!
  9. 鳥みたくあるいてこっ
  10. 花ちゃんはリスかっ!
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)

プロフィール画像

の子(Vo, G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。

2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」を発表した後、ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年12月にメジャーレーベルのワーナーから「つまんね」、インディーズレーベルのPERFECT MUSICから「みんな死ね」という2枚のアルバムを同時リリースした。

2011年4月にはバンド史上最大規模の会場となる両国国技館ワンマンライブを行う予定だったが、東日本大震災の影響により中止に。これを受け、4月から6月にかけて全国8都市を回るフリーライブツアーを敢行した。2012年 11月にはメジャー3作目となるアルバム「楽しいね」をリリース。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続け ている。


2012年11月21日更新