ナタリー SuperPowerPush - 神聖かまってちゃん
ニューアルバム「楽しいね」総力特集
ちばぎんインタビュー
俳優や司会の仕事で自信がついた
──ここ数年でかまってちゃんを取り巻く状況はかなり大きく変化したと思いますが、ちばぎんさん的にはいかがですか?
もう自分自身も周りの環境も全部変わりましたね。
──何が一番変わりましたか?
僕は「友だちを殺してまで。」が完成したとき、実はすごく悔しかったんです。思うようにできなかったから。ベースの音もちっちゃくて。
──もっと自己主張したかった?
はい。でも今はの子の主張をもっと尊重するべきだって思えるようになりました。の子ありきのバンドなんだし、対立してもしょうがないっていうか。今はもっと全体を見て判断できるようになった。それが大きな変化かな。
──余裕ができたのかもしれませんね。
やっぱり「友だちを殺してまで。」が出た頃は、駆け足すぎて周りの景色も見れないし、何がなんだかわかんない状態でとにかくやってるっていう感じでしたからね。今はやっと周りの景色が見えてきて、かまってちゃんの一員でいればいいんじゃなく、自分でがんばんなきゃダメなんだなってすごく思います。だから来る仕事は全部拒まずやりたいんですよ。俳優の仕事とかも。
──俳優の仕事?
映画にちょっと出たんですよ、僕。
──えっ!?
佐藤福太郎監督の「わらわれもしない」って作品に小学校の先生役で。あとはインディーズアイドルのイベントの司会とかもやったり……。
──そんな仕事も?
月イチくらいのペースでやってます。いろんなことに挑戦して自分自身をスキルアップしたくて。そのおかげで自分のしゃべりに自信がついてきた。だから最近配信がすごい楽しいんです。自宅配信の頻度も上がったし。これは完全に変化ですね。
バンドが10年20年続いていく可能性も
──「友だちを殺してまで。」の頃のインタビューでは「1カ月後には解散してるんじゃないか」という話もありましたが。
あの頃は本当に全員いつ解散してもおかしくないと思ってて。まあそういう気持ちは今でもあるんですけど、なんだかんだで10年20年続いていく可能性も見えてきたっていうか、そう思うことがたまにある(笑)。問題はあるし、今も年に1回くらいは解散の危機があるんですけど、その危機をかわして続いていく未来っていうのもあるかもしれないです。
──そう思えるようになったのはなぜですか?
解散するとか誰かが辞めるとかクビだとか、いろんな危機が死ぬほどあったんですけど、それを全部かわして続いてきてるから、今後もなんだかんだで続いていくのかなって。
──ファンの人の期待もありますし。
そこはでかいです。ファンの人がの子以外を見てくれるようになったっていうのが以前と比べての大きな変化で。昔はみんなの子のファンだったのが、今はmonoくんやみさこさんや僕のファンだっていう人もいるようになって「この3人がいるからの子がやっていけるんだ」っていう気持ちでバンドを見てくれる人が増えたんですよ。それがすごく支えになってますね。
──それは大きいですね。
あと、の子もファンの人たちと同じく、以前よりメンバーを見てくれるようになった気はする。昔は今よりはるかに自分オンリーで、曲に関しても「これは俺の曲だ、誰にも触らせねえ」っていう空気があったから。
──そんなピリピリした感覚が今はだいぶ和らいだ?
丸くなったっていうわけでもないんですけど、昔はツンツンだったのが最近はツンデレになってきたかも。まあ本当のところはよくわからないですけどね。こんだけ付き合ってても。
「俺のベース悪くないな」って思えるように
──お話を伺っているとバンドのムードは良好なようですが、そうした状況はアルバムの内容にはどのように反映されていますか?
今までで一番、みんなで作った感じのアルバムになりましたね。メンバーの「こうしたほうがいいんじゃない?」っていう意見で変わったことが多々あるし。
──の子さんのデモをバンドで再現するだけじゃなく。
の子が、かまってちゃんの曲と自分のデモを分けて考えるようになったっていう気はしますね。
──中でもバンドで作り上げたという感覚が強い曲はどれですか?
個人的には「仲間を探したい」ですかね。最初はちょっと違う感じのアウトロがついてたんですけど、僕はこの曲のイントロが大好きで「最後は絶対イントロのフレーズに戻したほうがいい」って言ったのが受け入れられて。
──じゃあアレンジにも3人の意見が。
そうですね。これまでで一番入ってます。
──ベーシストとしてのセンスが問われる面も増えそうですね。
でもまだベースを始めてから丸4年くらいなんで、初心者並というか、とにかくずっと自信がなくて。「俺のベース悪くないな」って思えるようになったのは、シングル「Os-宇宙人」くらいからですね。
──結構最近ですけど(笑)。
そうなんです。今やっとアーティストとして、自分のベースラインやテクニックに自信が出てきた気がします。
CD収録曲
- 知恵ちゃんの聖書
- 仲間を探したい
- 友達なんていらない死ね
- コンクリートの向こう側へ
- ベルセウスの空
- 雨宮せつな
- 2年
- らんっ!
- 鳥みたくあるいてこっ
- 花ちゃんはリスかっ!
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)
の子(Vo, G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。
2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」を発表した後、ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年12月にメジャーレーベルのワーナーから「つまんね」、インディーズレーベルのPERFECT MUSICから「みんな死ね」という2枚のアルバムを同時リリースした。
2011年4月にはバンド史上最大規模の会場となる両国国技館ワンマンライブを行う予定だったが、東日本大震災の影響により中止に。これを受け、4月から6月にかけて全国8都市を回るフリーライブツアーを敢行した。2012年 11月にはメジャー3作目となるアルバム「楽しいね」をリリース。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続け ている。
2012年11月21日更新