音楽ナタリー PowerPush - 梶浦由記
人生を賭けて描く1つの絵
YUUKAの歌声と“声萌え”
──アルバム「elemental」のリリース後に「Yuki Kajiura LIVE Vol.#11 elemental Tour」がスタートするわけですが、2月8、9日にまずFictionJunction YUUKA(FJY)としての2DAYSスペシャルライブがありましたね。2日間でFJYの楽曲をすべて披露するという集大成的な内容でしたが、その開催にはどんな意図があったんでしょう?
意味みたいなものは特になく、これもはずみでやることになったんですよ(笑)。去年の「Kaji Fes」のときにYUUKAにはゲストで出てもらったんですけど、そのときの彼女の歌がすごくよかったんです。FJYとしてしばらく活動していない間に歌声が大人になって、いい意味で変化していたんですよね。で、ああこういう歌い方をしてくれるんだったら、ほかの曲たちも聴いてみたいなと思いまして。それで、どうせやるなら全曲やろうっていうことになったんです。
──YUUKAさんをフィーチャーしたFJY名義でのライブは、通常のFictionJunctionのライブと比べて、梶浦さんの中ではどんな違いがありますか?
わりと最近のFictionJunctionは大人数で歌ったり、コーラス主体の曲をずいぶん作っているんですけど、私はYUUKAのことをソロシンガーだと思っているので、彼女の声を4~5人のコーラスの中に混ぜるつもりにはならないんですよ。だから彼女は単体でっていう、そういう違いはありますね。
──6月にはその2DAYSの模様を収録したBlu-rayがリリースされましたが、それを拝見させていただくとライブ自体の見せ方も通常の「Yuki Kajiura LIVE」とはかなり違いますもんね。
うん、完全に違いますね。名義はFJYですけど、形的にはもうYUUKA+FictionJunctionくらいな感じですから。完全に彼女がソロっていう立ち位置でやっています。
──ライブ中、YUUKAさんの歌う姿を梶浦さんがものすごく愛おしそうに眺めている瞬間が何度もあって。それがすごく印象的でした。
あははは(笑)。私はわりとライブ中に歌い手さんを見てるほうだと思うんですけど、FictionJunctionのライブだと歌い手さんが4~5人いたりするので、単純に1人には集中できないところがあるんですよね。でもFJYの場合はYUUKA1人しかいないので、しょっちゅうガン見しちゃうんですよね(笑)。
──MCでは“声萌え”の話をされていましたけど、そういう梶浦さんの姿を見るとYUUKAさんの声を心底愛していることが伝わってきます。
YUUKAならこういうふうに歌ってくれて、ここで泣きが入って、聴いている人は“くぅ!”って思ってくれるだろうなって想像しながら曲を書いているので、その通りに歌ってくれると私も“くぅ!”って気持ちになるんですよ。それはやっぱりすごくうれしい瞬間で。「そうそう、それよ! あなたの声はここがいいのよね!」みたいな声萌えはありますよね、すごく(笑)。
梶浦由記、20年間の“王道”
──そして、そんなFJYの2DAYSを経て、今回Blu-rayとしてリリースされるツアー「Yuki Kajiura LIVE Vol.#11 elemental Tour」がスタートしました。
全7カ所8公演でしたが、これだけ長いツアーはひさしぶりだったんです。ツアーをやりたいとずっと思っていましたから。
──ツアーを回られてみての感想を改めて聞かせていただけますか?
とにかく楽しかったですよ。今回は全会場通してある程度は統一したセットリストにして、いつもの私に比べるとそんなに変化のない内容で回ったんですね。だからそのぶん、曲がライブの中で変わっていく感じとか、逆に完成して揺るがないものになっていく感じとか、そういうことを感じることができて。気持ち的な余裕もあったので、会場ごとのお客さんの反応をしっかり楽しめた部分もありました。
──アルバム「elemental」の楽曲を中心にしたセットリストでしたが、それ以外の曲に関してはどのようにセレクトしていったのでしょう?
今回は福岡や札幌のように初めて伺う場所が多かったこともあって、わりと王道のセットリストをドン!と持っていった感じでしたね。だからこそ、みんなが比較的落ち着いてライブできたところもあったと思います。
──20年のキャリアを考えると、その王道にもさまざまなパターンがありそうですけど。
確かにそうですね(笑)。そろそろ王道もかなりの曲数になってきたかなと思います。そういう中で今回考えたのは、人気の高い作品の曲をなるべく1曲ずつやるっていうことでした。例えば「.hack」から1曲、「NOIR」から1曲、「魔法少女まどか☆マギカ」から1曲といった感じで、なるべく万遍なく皆さんの思い入れがありそうなところを選んでいって。世に出ている曲数がとにかく多すぎるので、「全部が聴きたい曲だった」と感じていただくことは難しいとは思うんですけど、少なくとも「すごく聴きたかった曲が1曲はちゃんと聴けた」と言ってもらえるライブにはしたいと思ったんです。
──確かにどの世代にもヒットし得る最強のセットリストだったと思います。それって裏を返せば、この20年間で万遍なく、それぞれの時代でヒット曲を生み出していることの証明でもありますよね。
幸いなことに、すごく面白い作品の音楽をたくさん書かせていただけたということでもありますよね。リスナーの方々は、その作品への思い入れも含めて私の楽曲を聴いてくださっていると思うので、そのへんはライブにおいても裏切りたくないなっていう思いは常にありますね。
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- ライブBlu-ray「Yuki Kajiura LIVE vol.#11 elemental Tour 2014 2014.04.20 @NHK Hall + Making of elemental Tour 2014」 / 2014年9月24日発売 / 7020円 / FlyingDog / VTXL-21
- ライブBlu-ray「Yuki Kajiura LIVE vol.#11 elemental Tour 2014 2014.04.20 @NHK Hall + Making of elemental Tour 2014」
収録内容
- overture~elemental
- storytelling
- forest
- Liminality
- in the land of twilight, under the moon
- Luminous Sword
- 花守の丘
- Credens justitiam
- Historia:opening theme
- M23(空の境界「未来福音」)
- ひとりごと
- storm
- eternal blue
- 時の向こう 幻の空
- 野原
- rising up
- 凱歌
- absolute configuration
- 君がいた物語
- stone cold
- Distance
- zodiacal sign
- Parallel Hearts
- Sweet Song
梶浦由記(カジウラユキ)
1993年にユニットSee-Sawでデビュー。約2年の活動ののちソロ活動を開始し、テレビ、CM、映画、アニメ、ゲームなどさまざまな分野の楽曲提供、サウンドプロデュースを手がける。2002年にはボーカル石川千亜紀とSee-Sawの活動を再開し、テレビアニメ「NOIR」「.hack」関連の楽曲を担当した。2003年7月にはアメリカで1stソロアルバム「FICTION」を発表。同年よりFictionJunction名義のプロジェクトをスタートさせ、2008年からはボーカルユニットKalafinaの全面プロデュースを手がけている。「Yuki Kajiura LIVE」と題したライブを不定期に行っており、2014年2~4月にはツアー形式で「Yuki Kajiura LIVE Vol.#11 "elemental"」を実施。9月にはツアーファイナルとなった東京・NHKホール公演とツアーメイキング映像を収めたライブBlu-ray「Yuki Kajiura LIVE Vol.#11 elemental Tour 2014.4.20@NHK HALL+Making of elemental Tour 2014」がリリースされた。