LiSA「LANDER」インタビュー|変わってしまった世界の中でたどり着いた新しい惑星で

LiSAの通算6枚目となるオリジナルアルバム「LANDER」がリリースされた。

ソロデビュー10周年を迎えた2021年は、アニバーサリーミニアルバム「LADYBUG」、テレビアニメ「『鬼滅の刃』無限列車編」のオープニングテーマ「明け星」およびエンディングテーマ「白銀」、初のテレビドラマ主題歌「HADASHi NO STEP」、Ayaseとのコラボ曲「往け」など精力的に作品をリリースしたLiSA。およそ2年ぶりのオリジナルアルバム「LANDER」にはそんな10周年の足跡と、その先を見据えるLiSAの思いが詰め込まれている。

音楽ナタリーでは2013年のシングル「best day, best way」発売時から継続的にLiSAにインタビューを行ってきたが、今回で通算20回目。コロナ禍で迎えたソロデビュー10周年の活動を経て「新しい惑星に着陸した」と実感を語る彼女に、その真意を聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃撮影 / 森好弘

「ソロデビュー10周年」を越えて

──昨年はソロデビュー10周年のアニバーサリーイヤーということで何かと慌ただしかったので、今年は落ち着くのかな……と思っていたんですけど、10周年の余波がずっと続いている印象もありますね。落ち着かないまま2022年も終わりに差し掛かっています。

そうですね(笑)。

──ご本人の実感としては、どんな1年でしたか?

10周年は全力で駆け抜けながらも、すごく先のことまで考えていて。そこからの今年1年は、この先の自分をイメージして、1曲1曲に時間をかけてきちんと向き合えた感覚があります。タイアップの楽曲もそうですし、このアルバムに収録される楽曲も。

LiSA

──ニューアルバム「LANDER」にはテレビアニメ主題歌をはじめとするタイアップが全14曲中9曲収録されています。「ABEMA・テレビ朝日FIFA ワールドカップカタール2022」の番組公式テーマソングや「カバヤ・ピュアラルグミ」CMソング、日本テレビ系「ズームイン!! サタデー」のテーマソングなど、タイアップの幅もさらに広がりましたよね。もはやLiSA=アニメソングというカテゴライズもなくなりつつあるような。認知の幅が広がったというか、より多くの“お客さん”を相手にする存在になったと思うんです。LiSAさん自身はそれをどう受け止めているのでしょう。

新しい挑戦をたくさんさせてもらっている感覚ですね。10周年のミニアルバム「LADYBUG」(参照:LiSA「LADYBUG」インタビュー)ではこれまで以上に幅広く、いろんなアーティストの方々と楽曲制作をさせてもらって。そのあとドラマの主題歌だったり(参照:LiSAインタビュー|ドラマ主題歌で新たな挑戦、軽やかなステップで歌う新作「HADASHi NO STEP」)、活動にいろんな広がりが出てきた中で、自分にとっては新たな挑戦の場をいただくことがこの2年は多かった。デビューから10年経ってもまだ勉強の機会や刺激をもらえることに、すごくワクワクしていて。小手先ではこなせないことに挑戦できる充実感がありますね。

──なるほど。そうやって新しい挑戦を楽しめているのか、もしくは認知の広がりにある種のストレスを感じているのか……ニューアルバムに収められているノンタイアップの新曲を聴くと、何か鬱憤を溜め込んでいるのかな?と感じるところもあったので(笑)、どういう状態にあるのか気になっていたんです。

あはは。それで言うと、こうやっていろんなタイアップに向き合った結果、アルバム用の曲作りに動き出したときに「私、作りたいものがまだまだあったんだな」と思いました。タイアップ曲だと、その向こうにあるいろんなものを考えながら制作していくんですけど、そこで学んだことを受けて、私にはまだ試したいことがあったというか。鬱憤と言ってしまえばそうなんだけど(笑)、自分の中に何か発散したいものがあったんだなって。

──その鬱憤、フラストレーションが限界まできているのか、比較的余裕を持って手懐けられているものなのか、そのへんを勝手に心配していたのですが、様子を見る限り後者のようで安心しました。

溜まったものを吐き出したというわけじゃなくて、自分自身と向き合って純粋に作りたい音楽を作ってみたらこうなった、という。結果的に「私、なんか溜まってたのかな」と思ったくらいで(笑)。例えば自転車に乗るときだって、最初からスイスイ乗れるわけじゃなくて、うまく乗れるようになるまでのフラストレーションがあるじゃないですか。慣れないことへのフラストレーション。「補助輪が付いてたらもっとスイスイ乗れるのに!」みたいな。挑戦する楽しさやワクワクがありつつ「自分なりの乗り方」をする楽しさもあったな、という伸び伸びした感じがノンタイアップの曲にはあるんじゃないかなと思います。

LiSA
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“新しい惑星”にたどり着いたことへの不安とワクワク

──オリジナルアルバムとしては「LEO-NiNE」以来およそ2年ぶりとなります。タイアップ曲が9曲ある中で、アルバムの全体像はどのようにしたいと考えていましたか?

タイアップ曲がそれぞれ個別の役割を果たしているので、そのほかの曲は自由に、好きなようにやっても“柱”はしっかりしているという安心感がありました。それは「往け」(参照:LiSAインタビュー|「ソードアート・オンライン」と共に駆け抜けた10年、Ayaseとの共作「往け」に込めたアスナへの思い)と「NEW ME」で始まりと終わりを作れたときに、さらに強く実感しましたね。その2曲がアルバムの頭とお尻にあることで、私がイメージしていた「新しい惑星にたどり着いたことへの不安とワクワク」みたいなものが形になったなって。

──そのイメージが「LANDER」というタイトルに表現されているんだと思いますが、これは制作中から浮かんでいたんですか?

「NEW ME」を作っているときにアルバムのタイトルが決まりました。「NEW ME」を作りながら、宇宙を駆け抜けてきたような……暗闇を駆け抜けて、自分自身のことを信じられないけど信じていこうという気持ち。それは「往け」を作っている頃になんとなく感じていて、「NEW ME」ではっきりと形になったというか。これまでの歩みを振り返らざるを得ない10周年を通して、結果的に“素晴らしい日”にたどり着いたんだけど、そこまでは晴れた日もあれば雨の日もあったなあって。それを象徴する言葉が「LANDER」なんです。

──宇宙の着陸船といった意味合いの言葉ですね。

世界は少しずつ変わっていて、今までと同じものを求めてもしょうがない。新しい世界で生きていくこと、楽しむ方法を見つけなくちゃいけないんだなというのを、4月のライブ(「LiVE is Smile Always~Eve&Birth~」。参照:LiSAがデビュー記念日に日本武道館に帰還!新たな自分の誕生を見せた全身全霊のステージ)ですごく実感したんです。12年目の新しい1歩を踏み出すこと、変わってしまった世界でみんなと新しい惑星を作っていく、というイメージに「LANDER」はすごくぴったりなワードだなと思いました。

LiSA
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リスナーとして聴きたいロックを

──アルバムは「往け」で幕を開け、続いてスケールの大きいロックナンバー「一斉ノ喝采」が登場します。このスケール感は、「LADYBUG」でB'zのTak Matsumotoさんとコラボした経験が生きているのでは?と感じました。

ああ、そうかもしれませんね。

──この曲は「ABEMA・テレビ朝日FIFA ワールドカップカタール2022 番組公式テーマソング」として作られたタイアップ曲ですね。

はい。サッカーは勉強中です。詳しくはないんですけど、スポーツに向き合う選手の人たちの気持ちには、つい自分自身を重ねてしまいますね。戦っているフィールドは違っても、そこに人生を捧げている人たちという部分でシンパシーを感じます。

──気持ちを鼓舞するもの、魂を揺さぶるもの、という点でLiSAさんの楽曲とスポーツの相性はすごくよいなと思います。新しい分野でのタイアップですけど、いい仕事をしているなと。この「一斉ノ喝采」のアウトロから間髪いれずに鳴る「dis/connect」のミュートカッティングがすごくいいですね。タイアップでのしっかりとした仕事ぶりを見せた直後に「ここからちょっとめちゃくちゃやりますね」みたいな。

あはははは。曲間の意図を汲み取ってくださってありがとうございます(笑)。ホントは曲間0秒にしたかったんですけど、曲がつながっちゃうと言われたのでほんの少し空けました。この曲は絶対この位置だなと思っていて。

──言葉数多くまくし立てるような曲なんだけど、乱暴なようで繊細なアレンジによって、すごく冷静な感じがします。

「往け」で私がAyaseさんから受け取った、いいなと思ったのは女性らしい表現で……メロディとピアノの絡み、演奏の繊細さ。私が慣れ親しんできたパンクロックは、3コードのギターがアンプでず太く鳴らされていればOKで、女性らしい繊細さは自分にとって遠いものだと思っていたんですよ。でも、「往け」で手に入れた繊細さがロックと絡まったときに、すごく自分らしいなと思いました。これまでの「DOCTOR」(2013年発売のアルバム「LANDSPACE」収録曲)などでは“女性らしさ”を強く見せていたけど、「dis/connect」ではちょっと大人の女性のような感覚。今の自分として等身大で歌う曲としてぴったりだなって。

──今作では堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)さんが「dis/connect」や「NEW ME」など4曲に参加していて、アルバムの軸を担っているような印象があります。LiSAさんが今の気分を楽曲に落とし込むうえで頼りになる存在だった?

今作りたいものはなんだろう?と考えたときに、晶太くんと作りたいなと思うことが多くて。晶太くんとは常にバンド仲間のような感じで、「あの曲カッコよくない?」みたいな話をよくするんです。

──「dis/connect」は「一斉ノ喝采」とは逆にアウトロに少し間が空いて、突然「あいたい」というつぶやきが聞こえてくるという。

はい(笑)。

LiSA

──4曲目は佐々木亮介(a flood of circle)さん作詞作曲の「シャンプーソング」です。このノンタイアップ2曲を続けて聴いて「鬱憤が溜まってるのかな?」と感じたんですけど(笑)。

いろんなことをやった結果、やっぱり私は時代とか関係なくロックが好きだなって。それは自分自身のフラストレーションというより、世の中全体にロックがそんなに盛り上がっていない、リスナーとして聴きたい音楽が少なくなったと感じる寂しさがあるんです。だからこそ、そういうフラストレーションを自分で発散したかった。佐々木さんはどんなときでもロックンロールを貫いている先輩だから、今この気持ちを曲にするなら佐々木さんだろうと思ってお願いしました。佐々木さんと先輩(UNISON SQUARE GARDENの田淵智也)のつながりで、前にTHE KEBABSのライブにゲストで呼んでもらったことがあって(参照:THE KEBABS、新曲だらけの初ライブは予測不可能な展開に)。そのとき初めて佐々木さんの楽曲を歌わせてもらったんですよ。それがなんだかしっくりきちゃって。佐々木さんのような説得力のある声は憧れで、自分とは別世界だと思っていたんですけど、佐々木さんのメロディを歌う自分の声にグッときたんです。

──なるほど。

ロックバンドはライブでそのエネルギーを発散することで楽曲がより鮮やかになってく、と私は思うんです。でも今の時代、ロックバンドはどうしても物理的に戦いづらい状況で、すごく寂しいなって。こういうとき佐々木さんが持っているエネルギーは心強いです。