音楽ナタリー Power Push - 石崎ひゅーい×蒼井優×松居大悟鼎談

映画でタッグを組んだ3人が再び集結 惹かれ合う3つの個性

石崎ひゅーいが2年10カ月ぶりとなるフルアルバム「花瓶の花」を5月18日にリリースする。

松居大悟監督、蒼井優主演で冬に公開される映画「アズミ・ハルコは行方不明」にて、蒼井演じる安曇春子の同級生・曽我役に抜擢され話題を呼んだ石崎(参照:石崎ひゅーい、蒼井優の相手役に抜擢!松居大悟監督映画でスクリーンデビュー)。アルバムの初回限定盤付属DVDには、松居脚本・監督、蒼井出演で制作された短編映画「花瓶に花」と、それを再編集して作られた表題曲「花瓶の花」のミュージックビデオが収められる。そこで音楽ナタリーでは石崎、松居、蒼井の3人による鼎談を実施。お互いの印象やアルバムの感想、20代から30代になっての心境、映画の見どころなどをたっぷりと語り合ってもらった。なお特集後半では、短編映画およびMVの撮影現場の様子も紹介する。

取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 山本佳代子

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石崎ひゅーい×蒼井優×松居大悟鼎談

お互いのイメージは「怖そう」だった

──今回、松居さんが脚本と監督を務め、石崎さんと蒼井さん出演で短編映画とミュージックビデオが制作されたわけですが、これは映画「アズミ・ハルコは行方不明」での共演がきっかけですよね。そもそもなぜ映画でこのメンバーが集まったんでしょう?

左から蒼井優、石崎ひゅーい、松居大悟。

松居大悟 そうですね、まず……なんかすっごい恥ずかしいな(笑)。けっこう長い時間を一緒に過ごしてきたんですけど、このメンバーで取材を受けるの初めてなんで、こうやってかしこまってしゃべるの恥ずかしい。

蒼井優 早くしゃべって(笑)。

石崎ひゅーい あははは(笑)。

松居 まず映画の主演として蒼井さんが決まりまして。それで、相手役の曽我のキャストを誰にしようかって考えたんですけど、俳優をやってる人じゃないほうがいいなと思ったんですね。技術よりも、地方から抜け出せない雰囲気とか目が離せないような空気感を素で持ってる人と蒼井さんを組ませたほうが面白いなと思ったときに、ひゅーいしか思い浮かばなかったんですよ。

蒼井 もともと2人は何で知り合ったの?

松居 お互いクリープハイプの尾崎くんが共通の友達で、クリープのライブに行ったらひゅーいがいるなっていうのは気付いてたんだけど話したことはなくて。それで、一昨年の年末に僕がミュージシャンと対談するM-ON! MUSICの「松居大悟の松の間」って番組にひゅーいに来てもらったときにちゃんと話したのかな。それがきっかけで一緒に飲みに行くようになって、ひゅーいが劇団鹿殺しの舞台をやるっていうのも聞いてたし(参照:石崎ひゅーい×丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)舞台「彼女の起源」出演記念対談)、一緒に映画を作りたいと思って、映画のプロデューサーに提案してみました。

──蒼井さんと石崎さんはこの映画が初顔合わせ?

蒼井 初めてですね。

──お互いどんなイメージを持ってました?

石崎 僕は優ちゃんはすごいストイックな人なんだろうなって思ってたから、松居くんに「ひゅーい、一緒にやる相手は蒼井優だぞ」って言われたときにまず覚悟したのが怒られることでした。

蒼井 どんなイメージよ(笑)。

石崎 僕は演技経験も全然ないし、絶対に迷惑はかけるだろうなっていうのがあって。松居くんに「もし僕が蒼井優さんに現場でめっちゃ怒られたりしたら、助けてくれる?」って聞いたら、「一緒に泣く」って言われて。あ、助けてくれるわけではないんだって(笑)。

蒼井 あははは(笑)。そっか、松居も私と一緒にやるの初めてだったもんね。

松居 そう。ひゅーいと話してたらどんどん不安になっていって(笑)。僕にとってもやっぱり憧れの女優さんというか、いつか一緒に仕事したいなと思ってた人なので。同い年だけどキャリアは全然違うから正直怖かったですね。

石崎 会う前のイメージはそんな感じで。それで、一番初めの台本の読み合わせのとき、俺、ガチガチだったんですよ。ちゃんとセリフを言えずに「あ、い……うう」みたいな。そのときに優ちゃんがすごい気を遣ってくれて、休憩中とか「ちょっと話しに行こう」って優しく声かけてくれて。

──蒼井さんは石崎さんにどういうイメージを持ってました?

蒼井 私は最初にミュージックビデオを観たんですよ。

松居 怖そうな人って言ってたよね。

蒼井 そうそう。ひゅーいくんって表現方法が独特で、「俺はこれ」っていうのが確実にある人だから。私は芝居を10何年やっていて、どんなに拭おうをしても拭えない色があるから、そういうのを拒絶されてしまうとなあって思ってた。役者じゃない人と絡むのも初めてだったし。

石崎 そっか、そうなんだ。

蒼井 だからけっこう気合い入ってた。やっぱり関係性が画面に出るから、友達になる必要はないけど、いい空気感でお互いが楽しめる関係にはならなきゃなって思ってたら……普通に友達になってた(笑)。

石崎ひゅーいの音楽を聴いたらマーキュリーになっちゃった(笑)

──映画の話はあとでまた伺えればと思うんですが、お2人はこれまで石崎さんのライブを観たことは?

左から蒼井優、石崎ひゅーい。

蒼井 2列目で観たことあります!

石崎 そこで観ちゃダメだろっていう(笑)。

──え!? 絶対周りがザワザワってなりますよね?

蒼井 全然気にしない。

石崎 存在感がすごいんですよ、ライブでも。

蒼井 松居組全員、主要キャストとかスタッフとか、みんなでひゅーいくんのライブを観に行って「ダー」って叫んでました(笑)。

松居 誰より声が出てたよね。「ひゅーいが笑うまで『ひゅーい!』って呼ぼう」とか言って(笑)。

蒼井 ひゅーい愛があふれてるから。

石崎 あの、「常識」って言う僕の曲があって、けっこうテンポがゆったりめの、そんなに「ワーッ」って盛り上がる曲じゃないんですけど、優ちゃんがライブ来てくれたときに1人すごいこんな感じで(席を立って仁王立ちで右拳突き上げる)、フレディ・マーキュリーみたいになってて。

一同 あははは!

──Queenの「JEWELS」のジャケットみたいな(笑)。

石崎 そうそう。え? そんな曲じゃないんだけどな。感情移入しすぎだからって(笑)。

蒼井 ライブとか全然行ったことなくて、ライブの楽しみ方がオリジナリティにあふれちゃったっていう。どうしたって石崎ひゅーいの音楽を聴くとアガッちゃうから、いろんなものがドワーッとあふれて……マーキュリーになっちゃった(笑)。

石崎 初めて見たよ、お客さんでそんなふうになってる人。

蒼井 しかも私、指摘されるまでそれが変な行動って気付いてなかったからね。

石崎 楽しみ方は人それぞれだから別に変じゃないんだけどさ……いや、でもやっぱ変だったよ(笑)。

ひゅーいが誰かのために歌ってる姿を見せたかった

──今回フルアルバムとしては約3年ぶりになりますが、石崎さんはどんな作品にしたいと思いながら制作したんですか?

石崎 僕はアルバムってそれまで作ってきたものがまとまってるくらいの感じで、コンセプトはあまり意識してなくて。で、「花瓶の花」というデビュー当時から歌っている僕の曲がありまして、その曲はたぶんお客さんたちにとっても大切な曲だなっていうのを感じてたんですね。なので、このアルバムは僕の中では「花瓶の花」を聴かせたいアルバムという感じで作りました。

──ストレートなラブソングである「花瓶の花」を一番に聴かせたいと思った理由は?

石崎 「花瓶の花」が今ある僕の曲の中で一番普遍的な感じがしていて。だからこの曲をアルバムの軸にすれば、ブレずにいけるだろうって思って。

蒼井 ひゅーいくんの曲って個人的な歌が多いけど、「花瓶の花」は石崎ひゅーいの曲の中でもすごい間口が広いというか、石崎ひゅーいとはまた別の視点で描かれてる感じがするから、これは本当にたくさんの人に聴いてほしいよね。なんかどこかに懐かしさがあると思う。いい曲って懐かしさがあるんだよね、いい映画もそうだけど。

松居 安心する感じあるよね。

──以前石崎さんは、「ガールフレンド」(2013年発売の1stアルバム「独立前夜」収録曲)という曲は結婚する先輩のために作ったと言っていました(参照:石崎ひゅーい「独立前夜」インタビュー)。そのとき、ほかにもそういう曲があると言っていたので、「花瓶の花」もそうなのかなと思ったんですが。

石崎 そうですね。僕の地元の友達が結婚するって決まったときに、僕が曲を書いてあげるよって言って作った曲です。そいつと彼女との馴れ初めとかを聞いて、結婚式の当日にサプライズでお嫁さんに聴かせるっていう流れで。

──まさに今回の短編映画やMVのストーリーと一緒ですね。

石崎 はい。そういう僕の話を松居くんに聞いてもらって、それで作ってもらいました。

──松居監督はこれまでにもクリープハイプや大森靖子さんのMVなどを撮っていますが、今回はどういう作品にしようと?

左から石崎ひゅーい、松居大悟。

松居 バラードのMVを作るのは初めてだったんです。今まではアーティストの曲を僕の解釈で映像にすることで、結果的にいろんな要素が合わさって作品として豊かになると思いながらMVを作っていたんですけど今回はちょっと違って。すごく純粋な「花瓶の花」という曲を聴いたときに、この曲と対峙するよりも同じ方向を向いて一緒に走るほうがいいなと思ったんですよね。それで、ひゅーいになぜこの曲を作ったかを聞いて、「いい話だな」と思ったから、その話のどこを物語にするかを考えていった感じですね。

──なるほど。

松居 ひゅーいのほかの曲やMVって、当然と言えば当然なんですけど「石崎ひゅーいを観るもの」だと思うんです。でも「花瓶の花」のMVでは、ひゅーいが誰かのために歌ってる姿を見せたいなと思って。だからただひゅーいが演奏するだけのMVではなくて、披露宴で誰かのために歌うっていう形にしました。

──石崎さんは完成した作品を観てどう思いました?

石崎 なんかもう「みんなすごいな!」って感心しちゃったっていうか。この曲って優ちゃんも松居くんもそうなんですけど、ホントにみんなに愛されて育ててもらってる曲だなと思いました。あんまりそういう感情って生まれたことないんですけど、曲が子供だとしたら親の気持ちみたいな。

蒼井 私も、この曲も石崎ひゅーいっていう人も本当に愛されてるんだなって思った。ストーリーやカメラワークが素晴らしいっていうのはもちろんなんだけど、「仕事だからやってます」って人がいないんだよね。そういうみんなの思いが映り込んでるなって思った。だって……クリープハイプが出てるんだよ?(笑)

──しかもすごく贅沢な使い方してますよね。顔をほとんど出さないで、セリフもMVだと「親っすか?」の一言、短編映画でもそれに加えて「もういい年ですもんね」だけっていう。

松居 観てる人の意識があんまり尾崎くんのほうにいってもなって。あくまで作品が第一なので。

INDEX
石崎ひゅーい×蒼井優×松居大悟鼎談
短編映画&MV撮影レポート
石崎ひゅーい ニューアルバム「花瓶の花」 / 2016年5月18日発売 / EPICレコードジャパン
初回限定盤 [CD+DVD] / 4500円 / ESCL-4614~5
通常盤 [CD] / 3200円 / ESCL-4616
CD収録曲
  1. ピーナッツバター
  2. 星をつかまえて
  3. メーデーメーデー
  4. 僕がいるぞ!
  5. トラガリ
  6. カカオ
  7. 花瓶の花
  8. 泣き虫ハッチ
  9. オタマジャクシ
  10. 天国電話
初回限定盤DVD収録内容
  • 第三惑星交響曲(MV)
  • ファンタジックレディオ(MV)
  • 夜間飛行(MV)
  • 僕だけの楽園(MV)
  • ピーナッツバター(MV)
  • 僕がいるぞ!(MV)
  • 花瓶の花(MV)
  • 短編映画「花瓶に花」
石崎ひゅーい(イシザキヒューイ)
石崎ひゅーい

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身のシンガーソングライター。風変わりな名前は本名で、デヴィッド・ボウイのファンだった彼の母親が、ボウイの息子・ゾーイ(Zowie)をもじってひゅーい(Huwie)と名付けた。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューし、2013年2月から5月にかけて全国47都道府県を回るライブツアー「全国!ひゅーい博覧会」を実施した。同年6月にテレビ東京系ドラマ「みんな!エスパーだよ!」のエンディング曲「夜間飛行」を、7月に1stフルアルバム「独立前夜」をリリース。2015年6月には劇団鹿殺しの舞台「彼女の起源」で俳優に挑戦した。2016年5月に2ndフルアルバム「花瓶の花」を発売。同年冬には、松居大悟監督、蒼井優主演の映画「アズミ・ハルコは行方不明」に出演する。

蒼井優(アオイユウ)
蒼井優

1985年生まれ。1999年にミュージカル「アニー」でデビュー。2001年に岩井俊二監督による「リリイ・シュシュのすべて」で映画初出演を果たし、以降「花とアリス」「亀は意外と速く泳ぐ」「ニライカナイからの手紙」など話題の映画に出演する。2006年には映画「フラガール」で第30回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など数々の賞を受賞。その後も「百万円と苦虫女」「ホノカアボーイ」「るろうに剣心」といった映画を始め、ドラマ、舞台、アニメ声優、ナレーションなど幅広く活躍。2016年冬に「百万円と苦虫女」以来約7年ぶりの主演映画「アズミ・ハルコは行方不明」が公開される。

松居大悟(マツイダイゴ)
松居大悟

1985年生まれ。慶應義塾大学入学とともに演劇サークルに入団し、2006年に劇団「ゴジゲン」を結成。2009年にNHKドラマ「ふたつのスピカ」で脚本家デビュー、2012年2月に映画「アフロ田中」で初の長編映画の監督を務める。以降は「自分の事ばかりで情けなくなるよ」「スイートプールサイド」などコンスタントに映画を発表し、「ワンダフルワールドエンド」と「私たちのハァハァ」で第7回TAMA映画賞の最優秀新進監督賞を受賞。またクリープハイプや大森靖子などのミュージックビデオも手がける。2016年冬に監督作「アズミ・ハルコは行方不明」が公開。