音楽ナタリー PowerPush - 石崎ひゅーい×丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
舞台「彼女の起源」出演記念対談 未知なる世界で奮闘中
石崎ひゅーいが6月3日にスタートする劇団鹿殺しの舞台「彼女の起源」に出演する。
2000年に菜月チョビと丸尾丸一郎によって旗揚げされた劇団鹿殺しは、オリジナルの劇中歌やダンスを取り入れたエンタテインメント性の高い舞台で人気を集めており、昨年はCoccoを主演に招いた舞台「ジルゼの事情」(参照:Cocco、初舞台&初主演決定で「高鳴る胸に踊り出しそう」)が好評を博した。「彼女の起源」は、文化庁新進芸術家海外派遣制度により1年間カナダへ留学していた菜月の帰国後初出演作。父親に監禁され続けている姉(菜月)とその弟(石崎)が自分の思いを歌にしてカセットテープに吹き込み、“往復書簡”のように渡しあうことで心を通わせるロックオペラだ。
2014年6月リリースのシングル「ピーナッツバター」ではミュージックビデオの監督に初挑戦し(参照:ふんどし一丁で浜辺を疾走、石崎ひゅーい初PV監督作品で)、2015年2月より書き下ろしの連載小説「さよなら、東京メリーゴーランド」を発表するなど(参照:石崎ひゅーいが作家デビュー「さよなら、東京メリーゴーランド」)、表現の幅を広げている石崎。彼はどのようにして劇団鹿殺しと出会い、なぜ演劇の世界に足を踏み入れようと思ったのか。音楽ナタリーでは公演まで1カ月を切った5月上旬、彼らの稽古場を訪問。石崎と丸尾に、今作にかける意気込みや見どころを聞いた。また後半では稽古場の様子もレポートする。
取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 小原泰広
10年前に鹿殺しをよく観てた
──まずは石崎さんの最近の活動を振り返ってみたいんですけど、石崎さんは2014年、福田雄一監督のドラマ「新解釈・日本史」の主題歌を書き下ろしたり、山下智久さんのアルバムに楽曲を提供したり、対バンツアー「石崎ウォーズ」を実施したりと、かなり積極的にいろいろな人と関わっていた印象があります。
石崎ひゅーい 2013年に引きこもりみたいな生活をしていたので、2014年はもっと外に出なきゃと思っていたんです。このままだとヤバい、友達を作らないといけないと思って。2014年の目標は“オープンマインド”だったんですけど、面白いもので、そうするといろんな人に出会うんですよね。俳優さんだったり、小説家だったり、映画監督だったり。いろんな表現の分野の人たちと出会って、影響を受けまくっていました。
──綾野剛さんや長谷川博己さんも出演した園子温監督との対バンライブなどがありましたが(参照:綾野剛&長谷川博己も登場!石崎ひゅーい×園子温対バン)、ほかにはどんな方との出会いが?
石崎 松居大悟監督やマキタスポーツさん、角田光代さんとか。あとはムロツヨシさんとかと飲んだりする機会があって。園監督とのライブもそうですけど、けっこう俳優さんと出会うことが多かったかもしれないです。
──そうやって俳優の方と触れ合う中で自分も演技をやりたいと思うように?
石崎 昔からどこかのタイミングでやってもいいかなってなんとなく思っていたんです。でも、しょぼいものは見せたくないなと思っていて。
──昔、劇団に所属していたと聞いたことがあるのですが。
石崎 うちの母親がもともと僕のことを俳優にしたかったみたいで、中学生のときに児童劇団に所属していましたね。だから今回俳優をやってみようと思ったのは、それも関係あるかもしれないです。中学2年までは、将来は俳優になるのかなって思っていたんですよ。でも、中学3年でバンドを始めたら女の子にチヤホヤされて、こっちのほうがモテるって気付いてバンドをすることにしたんです(笑)。
丸尾丸一郎 そうなんだ(笑)。
──丸尾さんと石崎さんの出会いは?
丸尾 去年の夏に渋谷CLUB QUATTROで行われたライブが最初ですね(参照:“君の事が好き!”ひゅーい、渋谷で告白ライブ)。知り合いに面白いアーティストがいるよって紹介されて観に行って。ひゅーいくんは普通の顔をしていても泣いてるようにも笑ってるようにも見えるし、背後にドラマを感じる人だなと思いました。本人は無意識かもしれないけど、ひゅーいくんがいるだけで物語が始まっていくような。
──石崎さんは劇団鹿殺しのことは知ってました?
石崎 僕、10年前によく観てたんですよ。新宿のGAPの前でパフォーマンスをしてましたよね?
──劇団鹿殺しRJPという別ユニットとして、ライブハウスのほか、路上などでもライブパフォーマンスをされていますよね。
丸尾 2005~2007年頃はしょっちゅうやってましたね。
石崎 当時僕が組んでいたバンドの練習場所が新宿だったんです。だから、鹿殺しのパフォーマンスを観て練習に行くっていう日々を送ってました。あそこの路上でパフォーマンスしてる人っていないじゃないですか? だから変態がいるなって思いながら(笑)。
──鹿の被り物をしてトランペット吹いてますし(笑)。
丸尾 ははは(笑)。
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- Contents Index
- 石崎ひゅーい×丸尾丸一郎 対談
- 「彼女の起源」現場レポート
- 劇団鹿殺しロックオペラ「彼女の起源」2015年6月3日(水)~8日(月)東京都 CBGKシブゲキ!! / 2015年6月11日(木)~14日(日)兵庫県 AI・HALL
- 「彼女の起源」
<作>丸尾丸一郎
<演出>菜月チョビ
<出演>
菜月チョビ / 石崎ひゅーい / 丸尾丸一郎 / オレノグラフィティ / 山岸門人 / 橘輝 / 傅田うに / piggy(ex. pocketlife) / 辰巳裕二郎(ex. 花団) / and more
ストーリー
幼い頃から父親に監禁して育てられた金子陶子(菜月チョビ)のもとに、ある日1本のカセットテープが差し入れられる。差出人は彼女の弟の金子三樹夫(石崎ひゅーい)。テープを再生すると、そこには陶子の知らない世界の様子を伝える三樹夫の歌が吹き込まれていた。その日から陶子と三樹夫のテープを通じた交流が始まる。だが、しばらくして三樹夫からのテープが途絶えてしまう。
凱旋LIVE「彼女の起源FINAL」
2015年6月16日(火)東京都 TSUTAYA O-WEST
2015年6月18日(木)宮城県 darwin
※東京公演にはジョニー大蔵大臣(水中、それは苦しい)、鳥肌実、masato(SuG)がゲストミュージシャンとして参加。
石崎ひゅーい(イシザキヒューイ)
1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身のシンガーソングライター。風変わりな名前は本名で、デヴィッド・ボウイのファンだった彼の母親が、ボウイの息子・ゾーイ(Zowie)をもじってひゅーい(Huwie)と名付けた。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューし、2013年2月から5月にかけて全国47都道府県を回るライブツアー「全国!ひゅーい博覧会」を実施した。同年6月にテレビ東京系ドラマ「みんな!エスパーだよ!」のエンディング曲「夜間飛行」を、7月に1stフルアルバム「独立前夜」をリリース。2014年4月に、自身の亡き母をテーマにしたコンセプトアルバム「だからカーネーションは好きじゃない」を発表した。2015年6月3日より上演される劇団鹿殺しの舞台「彼女の起源」に出演する。
劇団鹿殺し(ゲキダンシカゴロシ)
2000年、関西学院大学在学中に菜月チョビと丸尾丸一郎によって旗揚げされた劇団。2005年に活動の拠点を大阪から東京に移し、年間1000回以上の路上パフォーマンスを敢行する。あわせてコンスタントに公演を実施し、2010年発表の「スーパースター」は、第55回岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネートされた。2013年6月、文化庁新進芸術家海外派遣制度により菜月チョビが海外留学すること、それに伴い1年間の充電期間へ突入することを発表。充電前最後の舞台「無休電車」は東京・大阪ともに全ステージ完売となった。2014年1月にはCoccoを主演に迎え、初プロデュース作品として「ジルゼの事情」を手がける。この公演は演劇界のみならず音楽界でも大きな話題を呼び、同年9月に再演された。2015年6月、菜月チョビの復帰後初出演作として石崎ひゅーいを招いた「彼女の起源」を上演する。