iriが2ndシングル「Only One」を8月29日にリリースする。
4曲入りの本作には、これまでiriの作品に参加したYaffle(Tokyo Recordings)、ESME MORI(Pistachio Studio)、Kan Sanoといったクリエイター陣がトラックメーカーやトラックプロデューサーとして参加している。表題曲の「Only One」は国際ファッション専門職大学(仮称)のCMタイアップ曲なので、すでに耳にしているリスナーもいるはずだ。
今回の特集では、iri本人の言葉で2ndアルバム「Juice」から現在までの変化を紐解いていく。より“伝わる歌”に比重を置いたセルフプロデュースも含めて、デビューから1年半で急速な進化を見せるiriの現在地と今後を、このテキストで確かめてほしい。
取材・文 / 内田正樹
言葉がちゃんと伝わるように
──iriさんは3月に初のツアーを経験されました。まずは終えてみての感想から聞かせてもらえますか?
まず、自分の音楽が「こんなに広まっているんだ」ということに何より感動しました。チケットはソールドアウトでしたし、みんな歌詞もちゃんと覚えてきてくれて。うれしい反面、なんだか不思議な気分でした(笑)。ツアーサポートで入ってくれていたドラムの荒田洸(WONK)くんがブラックテイストのドラムを叩くので、今までと違うグルーヴが生まれたことも含めてとても楽しんで歌えたし、環境に合わせた会場ごとの音作りとか、勉強になったこともたくさんありましたね。
──ツアーの思い出やエピソードなどは?
LIQUIDROOMでやったとき、ステージからの景色が今まで見たことのなかった盛況ぶりだったので、とても感動しました。あとは打ち上げですかね(笑)。ゲストで出てくれた向井太一くんとも乾杯して話せたし。
──ちなみにiriさんって、お酒はイケるほうなんですか?
飲むほうだと思いますけど、弱くはないけど強くもないと言うか。真ん中ぐらいですね(笑)。
──そうですか(笑)。では今回の「Only One」について聞いていきます。そもそもiriさんのこれまでの曲作りは、ピンときたコードからコード進行とループを作って、そこに即興でリリックを当てはめていくという流れでしたが、今回はどうでしたか?
曲によって異なりますね。まず表題曲の「Only One」については、もともとピアノコードのループがあって、それにメロディと歌詞を乗せて、トラックメーカーのYaffleくんにトラックメイキングしてもらいました。2曲目の「stroll」は自分でトラックのベースを作って、それをPistachio StudioのESME MORIくんにアレンジをお願いして。3曲目の「Come Away」はギターのフレーズを作ってもらって、それに歌を乗せて作っていったし、4曲目の「飛行」はさっきおっしゃっていただいたように、ギターのループに即興で歌を乗せてできあがりました。
──2月にリリースされた2ndアルバム「Juice」と比べると、よりボーカルと言うか“歌”そのものが立った作りになった印象を受けました。
それはかなり意識しました。「Juice」はフロウのカッコよさやアレンジの心地よさを重視し過ぎて、曲によって言葉を詰め過ぎてしまったかな?という反省もあったので。言葉もちゃんと伝わるように、全体的にBPMも抑えめの曲を増やしたかったんです。
──そうなんですよね。「Juice」は現在シーンにおいて代表選手とも言えるトラックメーカーの仕事が一気に聴ける側面も持っているんですが、その一方で、言葉と音がケンカしているようなアタックの強さが快感な箇所もあれば、やや情報量が過多な箇所もあったように感じていました。
私自身も感じていました。ちょっと気合いが入り過ぎちゃったかなって(笑)。
──その分、今回の「Only One」はとても楽に聴けるんですよね。
よかったです。隙間のある曲作りはかなり意識しましたし、これからも、もう少しそうしていきたいと思っています。
──あと、リリックの書き方も静かに変化していると感じられました。伝えたいことはより明確になっているのですが、物語やそれを表現する舞台装置は心象風景と言うか、以前よりも抽象的になっている。その二律背反の気持ちよさのようなものが、今回の4曲に通底している気がしたのですが。
そこは無意識でしたね。自然とそうなった感じなんです。
普通にワンピースも着ます
──では1曲目の「Only One」について詳しく聞かせてください。この曲のミュージックビデオはフランスで撮影されたそうですが、えらくクールな仕上がりですね。
ありがとうございます(笑)。6月にフランスのフェスへ出たので、その合間に撮影しました。
──ちなみにフランスの観客のリアクションは?
フランスの人って、日本語はもちろんですが、英語もダメな人のほうが多いじゃないですか。だからもっと言葉の壁があるかと思っていたんですが、それ以上にみんなめっちゃ踊るんですよ(笑)。もちろんじっとして聴いている人もいたけど、ガンガンに踊っている人が多かったですね。
──なるほど。MVにおけるiriさんの主なスタイリングは、スポーツテイストも含めたカジュアルミックスでしたが、普段はどんなスタイリングなんですか?
プライベートではなんでも着ます。楽なものが好きですね。普通にワンピースとか。
──ワンピースも着るんですか?
着ますよ(笑)。地元の逗子にいるときとか、超ラフな格好してますよ。リスナーの人からしたら、あまりワンピースとか着るイメージないかもしれないけど。
──逗子でワンピース姿のiriさんに遭遇してみたいです。
それ、笑いますね。でもフリフリのワンピースじゃないですよ? シンプルなやつですから(笑)。
──ちゃんと書いておきます(笑)。「Only One」のトラックプロデュースはYaffleさんですが、キャッチーなトラックになりましたね。と言うか、今回は4曲いずれもかなりキャッチーな印象があります。
そうですね。「Only One」がキャッチーだから、ほかの曲は力を抜こうと思ったんですけど、意外とキャッチーになりました。でもそんなにキャッチーでした?
──自分はそう感じました。どれがリードトラックでもいいと言うか。
うれしいです。「Only One」はCMタイアップの曲だし、ある程度は最初にあったイメージから作りましたけど、ほかの3曲は次の作品に向けて実験的なことをやってみようという気持ちで作りました。
次のページ »
自分らしい曲を書けた手応えの「飛行」