自分らしい曲を書けた手応えの「飛行」
──「stroll」と「Come Away」のアレンジとプログラミングはESME MORIさんです。
「stroll」は先ほどもお話しした通り、自分で作ったトラックに歌詞を乗せて作りました。まだ自分1人では完璧なトラックは作れないので、ESME MORIくんに音を足してもらったりしながら作ったんです。「Come Away」もESME MORIくんと楽器のプレイヤーの方と一緒にベースとなるトラックを作って、そのループから歌詞を書きました。大体はメールでやり取りしていましたね。
──「Come Away」のギターとベースが作り出すグルーヴが心地よいですね。アレンジも「Juice」と比べるとかなり引き算で。
だいぶシンプルになりました。「Come Away」のグルーヴは自分でも得意分野と言うか、ジャズっぽいヒップホップみたいなバランスは好きですね。
──フロウについては、例えばスキルアップのために練習したりしているんですか?
この間、1stアルバムをひさびさに聴いたら、完全にポエトリーリーディングみたいな感じで、「全然ラップじゃないな、これ」と思いましたね(笑)。特に何か練習してるというわけではないんですけど、ライブを重ねていくうちにラップっぽくなっていった気がします。ボーカルも同じような感じで。
──ご自身のボーカルについては?
“うまく歌う”という意味とは別に、声の出し方にもっとバリエーションがあったらいいのになっていうのはずっと思っています。だから、今回の「Only One」のサビは、キーが超高いですし、「飛行」の後半でもこれまで出したことのない声で歌っています。もっとバリエーションを増やしていきたいですね。
──その「飛行」のトラックプロデュースはKan Sanoさんです。
これは最初、イメージのレファレンスになったダニエル・シーザーがH.E.R.をフィーチャリングした「Best Part」という曲があって。私がギターのループを作ってそれに歌と歌詞を乗せて「『Best Part』みたいな感じのテイストで作りたいんですけど」とKan Sanoさんに伝えたら、このトラックが返ってきました。曲の後半でガラッと雰囲気が変わるのも、「Best Part」の後半のちょっとカオスな感じともつながっていて。
──そうだったんですね。実は僕、個人的にはこの「飛行」が一番好きでして。
ああ、ありがとうございます。
──なんて言うか、もし今SMAPが健在だったら、こういう曲を歌ってほしかったなあって。
えー!?(笑) でも私がこう言っちゃうのもなんですけど、私も一番好きです。「自分らしい曲を書けた」という手応えがあるから。自分の原点でもある、弾き語りからの曲作りというスタイルが反映された曲でもあるので。
リスナーに向けて何かをもたらすことのできる存在になれたら
──先ほどレファレンスの話がありましたが、iriさんが主にリスナーとして音楽と接する手段は?
基本的にはApple MusicやSpotifyとかSoundCloudが多いですね。あとちょっと前からアナログも聴き始めたので、家にいるときはかけますね。
──改めてプロフィールを見返すと、1stシングルのリリースが昨年の2月23日です。そこを起点に考えても、この1年半ぐらいの間に、かなりの数、相当なクオリティのトラックメーカーたちと駆け抜けるように制作をしてきました。
そうですね。すごく勉強になりましたし、たくさんのことを吸収させてもらいました。
──さっき、「Only One」には次作へ向けたトライが含まれているというお話しもありましたが、今後については?
ちょうど悩みながら曲を作っている最中ですね。ここまでの経験から、どんなタイプの曲が自分には合っているのか、どんなキーが、音数が、BPMが心地いいのか、生音とトラックのバランスはどれくらいがいいのか、そういったことを自分なりに分析して曲を作っていこうと思っています。ただ、一緒にやる人や曲のムードや景色は異なっても、自分が考えているメッセージや表現したいことは変わらないと思います。
──12月には東名阪で初の自主企画イベントも予定されていますね。
はい。私が最近好きなアーティストの方々を呼びたいと思っています。
──iriさんはかつてスクールカウンセラーと言うか心理カウンセラーを志した時期もあったとお話しされていました。以前からインタビューの場で語っている「誰かの背中を押すような音楽を届けたい」という思いは、より強くなっていますか?
そう思います。今のところ、私の曲を聴いてるのは女性が多いみたいなんです。フェスで歌ったときとか、「iriちゃんに勇気もらってます。元気もらってます」って泣きながら話してくれた女の子に会って。そういうとき、「ああ、音楽やっててよかったな」とうれしくなります。この仕事を選んでよかったなあと思える瞬間がもっと増えたらうれしいし、もっと多くのリスナーに向けて、何かをもたらすことのできる存在になれたらうれしいですね。
──ちなみにiriさんが会ったら泣くほどヤバい人は?
えー、誰だろう……やっぱりアリシア・キーズかな。自分に一番影響を与えてくれたシンガーなので。私が彼女を好きになったきっかけは、彼女のピアノの弾き語りのときの表情でした。ピュアで、気取りがなくて、彼女の魂のようなものを感じました。今でも憧れです。
──iriさん自身も、ステージでそこに近付けたらという思いがありますか?
ええ。理想ですね。
- ライブ情報
iri Presents "Night Dream" 2018 -
- 2018年12月17日(月)東京都 UNIT
- 2018年12月20日(木)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2018年12月21日(金)大阪府 Shangri-La