音楽ナタリー Power Push - GLIM SPANKY
幻想的×攻撃的 2面性で魅せる新作全曲解説
「もっと変な音にしてください!」
──次は「時代のヒーロー」について。Amazonオリジナルドラマ「宇宙の仕事」の主題歌ですね。
松尾 これも「GLIM SPANKYがカッコいいと思うロックをやってください」というリクエストでした。本当に自由過ぎですよね(笑)。
──亀本さんはトーキングモジュレーターを使っています。
松尾 チープな宇宙がテーマという、B級感をよしとしているような作品だったので。あと、あれを意識しましたね。PUFFYさんの「アジアの純真」の「北京 ベルリン ダブリン リベリア」の後ろで鳴っていたワオワオワオ(笑)。
亀本 エフェクターを使うのは好きなんです。基本的に大体の曲のリフには、ギターで弾いた音程にプラス1オクターブ上の音を、オクターバーというエフェクターでうっすらと乗せて鳴らしています。ちょっと音がデジタルっぽくなるんですが、まったく気にせず(笑)。
松尾 リフの音色にはむしろ私が一番こだわっていて。とにかくとんでもない音が好きなので(笑)、カメがギタリスト然としたいい音で弾いていても、私が「足りん!」って楽器のスタッフさんを呼んで「もっと変な音にしてください!」と面白くしてしまう(笑)。
亀本 音数がそこまで多くないギターアレンジだから、オクターバーをかけようがファズをかけようが聴き取れる。そこはちゃんと計算しています。アンプからストレート、みたいな音はほとんどないと思う。
──GLIM SPANKYサウンドの秘密の一端が見えました。そして、「話をしよう」はテレビアニメ「境界のRINNE」のエンディングテーマでしたね。
松尾 サポートメンバーと話をしていて、あるとき、お互いに通じていると思っていたことがほんとに通じ合えていなかった出来事があって。そのとき「これだけ一緒にいても、やっぱり言葉で言わなきゃ伝わらないことってあるんだな」と思ったのがきっかけでした。「ありがとう」でも「ごめんね」でも、なんでも口で言わなきゃダメだなって。
亀本 そういうことってよくあるよね。
松尾 そう、よくあるっちゃあることなんですけど、気付けたことでいい方向に話が進んだのでよかったです。「境界のRINNE」のオファーをいただいて原作を読んだら、主人公の心のすれ違いが自分と重なって。あとは今までの主題歌を聴いたら“輪廻”とか“巡る”というワードがモチーフになっていたので、あえてそこを踏まずに、それでいてアニメと精神的につながっている曲を描こうと思って。LINEがあるような現代の時代性とも合うかなって。「話をしよう」という歌詞で終わらせたのも、そこで解決したわけじゃなくて、これから始まるから、あとはあなたに託します、という気持ちを感じてもらいたかったから。
「NIGHT LAN DOT」は美学の曲
──「NIGHT LAN DOT」はデビュー前、大学在籍時に書いた曲だそうですね。
松尾 当時とほぼ同じ形です。サビの1行だけ新しく言葉を付け加えたぐらい。ほとんど幻想文学の世界ですね。意味じゃなくて美学の曲というか。描きかけの現代美術の絵ぐらいの感覚。あと、私がこの曲を書いた大学1年のとき、あがた森魚さんの「バンドネオンの豹」っていう曲が大好きで……。
──やっぱりそうなんだ? もろに「バンドネオン豹(ジャガー)」という歌詞ですもんね。
松尾 そうそう。で、あがたさんが好きな作家に稲垣足穂さんという方がいて、その稲垣さんも私は大好きで、私は稲垣さんを好きになって、あがた森魚さんの「バンドネオンの豹」を知ったんです。つまり、この曲は私が秘かに、個人的に実現させた、あがた森魚と稲垣足穂のコラボ曲なんです。
──タイトルのLANはネットのLANですか?
松尾 そうです。ある夜にいろんな異世界とLANでつながっちゃったような世界を歌いたくて。私が保育園に通っていた頃、地元でおじいちゃんといつも遊びに行く川原があったんですよ。美しい川原で、白い砂浜にサラサラの砂がバーッと広がっている。でも、草を掻き分けて進まないとたどり着かないような、誰も知らない場所にあるような川原だったんです。ある日、そこに私1人で行ってみたんです。でも、同じところに行ったはずなのに、違う場所に着いちゃって。
──怖い。何か神隠しっぽい。
松尾 そう(笑)。そこは砂浜のはずなのに長い滑り台とか、巨人じゃなきゃ使えないような高い鉄棒とかがあって。私、そこでめちゃくちゃ遊んだんです、1人で。で、次の日またおじいちゃんと一緒に行ったんですが、そのときにはもう何もなかった。あれが夢だったのかなんなのかは今でもわからないんだけど、私は実体験として信じていて。あるときいきなりLANで自分の世界と異世界のドットがつながって、そういう場所に行けるかもしれない。そんな憧れから書いた曲です。
──それ、もしかしてレミさんの中での最古のGLIMな体験ですか?
松尾 あ、そうかも!
──じゃあまさに原点ですね。
松尾 かもしれない。本当だ(笑)。
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- 2ndアルバム「Next One」/ 2016年7月20日発売 / Virgin Music
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / TYCT-69104
- 通常盤 [CD] / 2916円 / TYCT-60086
CD収録曲
- NEXT ONE
- 怒りをくれよ
- 闇に目を凝らせば
- grand port
- 時代のヒーロー
- 話をしよう
- NIGHT LAN DOT
- いざメキシコへ
- 風に唄えば
- ワイルド・サイドを行け
初回限定盤DVD収録内容
“ワイルド・サイドを行け”ツアーファイナル(2016.04.16恵比寿LIQUIDROOM)
- ワイルド・サイドを行け
- 褒めろよ
- リアル鬼ごっこ
- ダミーロックとブルース
- 夜明けのフォーク
- BOYS&GIRLS
- 時代のヒーロー
- NEXT ONE
- 太陽を目指せ
- 大人になったら
- 話をしよう
Next One TOUR 2016
- 2016年9月22日(木・祝)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2016年9月24日(土)京都府 磔磔
- 2016年9月25日(日)香川県 高松TOONICE
- 2016年9月30日(金)福岡県 THE Voodoo Lounge
- 2016年10月1日(土)岡山県 PEPPERLAND
- 2016年10月6日(木)石川県 vanvan V4
- 2016年10月7日(金)新潟県 CLUB RIVERST
- 2016年10月10日(月・祝)北海道 BESSIE HALL
- 2016年10月14日(金)宮城県 仙台MACANA
- 2016年10月16日(日)広島県 CAVE-BE
- 2016年10月22日(土)大阪府 umeda AKASO
- 2016年10月28日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2016年10月30日(日)東京都 新木場STUDIO COAST
GLIM SPANKY(グリムスパンキー)
松尾レミ(Vo, G)、亀本寛貴(G)による男女2人組のロックユニット。2007年に長野県内の高校で結成。2009年にはコンテスト「閃光ライオット」で14組のファイナリストの1組に選ばれる。2014年6月に1stミニアルバム「焦燥」でメジャーデビュー。その後、スズキ「ワゴンRスティングレー」のCMに、松尾がカバーするジャニス・ジョプリンの「MOVE OVER」が使われ、松尾の歌声が大きな反響を呼ぶ。2015年7月には1stアルバム「SUNRISE JOURNEY」をリリース。10月には東京・赤坂BLITZにてワンマンライブを実施した。7月20日に2ndアルバム「Next One」を発表。このアルバムには7月23日公開の映画「ONE PIECE FILM GOLD」主題歌の「怒りをくれよ」、10月8日公開の映画「少女」主題歌の「闇に目を凝らせば」などが収録されている。