音楽ナタリー Power Push - GLIM SPANKY
幻想的×攻撃的 2面性で魅せる新作全曲解説
同時代の仲間といい眺めを見たい
──「いざメキシコへ」。この歌詞にはアレン・ギンズバーグ(※アメリカのビート文学における代表的な詩人)が出てきますね。
松尾 このアルバムの中で最後にできた曲。自分たちが好き勝手にやるロックがもう1曲欲しくなって、さらっと作った曲でした。私の父親はポエトリーリーディングが好きで、朗読会に参加したり、昔から「俺はビートニクの詩人だ」みたいなことをいつも言っているような人なので。アレン・ギンズバーグとかの詩集も小さい頃にもらいました。だから私が育ってきた要素を「ギンズバーグの詩に倣って」というひと言に置き換えたんです。あと、この歌詞を書いたとき、海外に行きたい欲がピークだったので、曲を完成させた数時間後に飛行機のチケットを取って台湾まで行ってきました(笑)。
──「風に唄えば」については?
松尾 ある昼下がりの午後、部屋でギターを弾きながら晴れた窓の外を見ていたら、なぜか私の中に細野晴臣さんの「恋は桃色」が流れてきて。そのときの気分からさらっと書きました。
──僕はこの歌詞、松本隆さんが頭に浮かびましたよ。「風をあつめて」とか。
松尾 本当に!? それ、すごくうれしいです!
亀本 もしかして「気がしたんです」の“です”とかですか?
──そうそう。
松尾 あー、確かに! それ、書いた私が気付いていなかった(笑)。
亀本 ちょっと友部正人さんとか高田渡さんの時代的な語尾ですよね。
松尾 本当だ(笑)。でも頭の中では「恋は桃色」とか、The Bandの「The Weight」のイメージだったんですよ。これを書いたとき、周囲の友達のバンドが解散してしまったりメジャーを降りたりという出来事が続いたんですね。それを受けて、でも究極を言ってしまえば「そんなのどうでもいいじゃん!」と言いたくて。
──ラストの「ワイルド・サイドを行け」しかり、レミさんの歌詞には自分の“仲間”に宛てた曲が幾つかありますね。
松尾 そうですね。同時代の仲間といい眺めを見たいという思いが強いので。たしかにそのバンドにとっては一大事だけど、一生音楽を続けていくのなら、そこに囚われず、もっと好きにやろうぜ!?って言いたかった。自分的にはウッドストックを今から作るという、かつてのアメリカの若者のような気持ちでした。
迎合しないままで、もっと音楽性を広げたい
──これで全曲分伺いました。最後に、この2ndアルバムのリリースを経て、今後のGLIM SPANKYについて考えていることを教えてもらえますか。
松尾 自分が好きなサイケデリックなロックも、さらにガンガンと書いていきたい。あとはロック好きな日本人というかアジア人として、オリエンタルな要素を表現したい。そこは決して白人には出せないテイストだから。
亀本 The Beatlesだって憧れていたぐらいだからね。
松尾 そうそう。で、幸運なことに、ロックとオリエンタルってちゃんと融合するんですよ。だから近い将来GLIM SPANKYが世界へと打って出るときに、強みになるのはオリエンタルなんじゃないのか?という話を私たち2人ではいつも話していて。私たちがいくら白人のロックを真似しても敵わない。だったら得意な音楽性で勝負すればいい。そこをどう追求していくのかが、今後の課題だと思っています。
亀本 仮に海外でライブをやるとしても、きっぱり言っちゃえば、日本語で歌う意味って本当は1つもないはず。でも僕らは日本語のまま歌いたい。だったら日本語で歌う意味を見出さなきゃダメだろうと。自分たちの音楽性の追求という意味では、今回の2ndアルバムでも大いに達成できた。でも一方で音楽ビジネスの規模自体はどんどん縮小している。そんな中だからこそ、僕らの音楽って、いろんなカルチャーとつながっていくほうが広がっていく気がするんです。タイアップがきっかけで新しい曲が生まれるという流れも僕は大好きだし、これからも迎合しないままで、もっともっと音楽性を広げていきたいです。
──これまでも口にはしてきましたが、いよいよ具体的に世界へと照準を合わせ始めたようですね。
松尾 だんだん意識が明確になってきました。私たちもビックリしたんですが、「境界のRINNE」のおかげなのか、「話をしよう」が、海外の配信チャートでいきなり1位を獲ったんです。「ONE PIECE」の主題歌も海外で流れるチャンスですから、また新たな一歩になれば、すごくうれしいですね。
- 2ndアルバム「Next One」/ 2016年7月20日発売 / Virgin Music
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / TYCT-69104
- 通常盤 [CD] / 2916円 / TYCT-60086
CD収録曲
- NEXT ONE
- 怒りをくれよ
- 闇に目を凝らせば
- grand port
- 時代のヒーロー
- 話をしよう
- NIGHT LAN DOT
- いざメキシコへ
- 風に唄えば
- ワイルド・サイドを行け
初回限定盤DVD収録内容
“ワイルド・サイドを行け”ツアーファイナル(2016.04.16恵比寿LIQUIDROOM)
- ワイルド・サイドを行け
- 褒めろよ
- リアル鬼ごっこ
- ダミーロックとブルース
- 夜明けのフォーク
- BOYS&GIRLS
- 時代のヒーロー
- NEXT ONE
- 太陽を目指せ
- 大人になったら
- 話をしよう
Next One TOUR 2016
- 2016年9月22日(木・祝)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2016年9月24日(土)京都府 磔磔
- 2016年9月25日(日)香川県 高松TOONICE
- 2016年9月30日(金)福岡県 THE Voodoo Lounge
- 2016年10月1日(土)岡山県 PEPPERLAND
- 2016年10月6日(木)石川県 vanvan V4
- 2016年10月7日(金)新潟県 CLUB RIVERST
- 2016年10月10日(月・祝)北海道 BESSIE HALL
- 2016年10月14日(金)宮城県 仙台MACANA
- 2016年10月16日(日)広島県 CAVE-BE
- 2016年10月22日(土)大阪府 umeda AKASO
- 2016年10月28日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2016年10月30日(日)東京都 新木場STUDIO COAST
GLIM SPANKY(グリムスパンキー)
松尾レミ(Vo, G)、亀本寛貴(G)による男女2人組のロックユニット。2007年に長野県内の高校で結成。2009年にはコンテスト「閃光ライオット」で14組のファイナリストの1組に選ばれる。2014年6月に1stミニアルバム「焦燥」でメジャーデビュー。その後、スズキ「ワゴンRスティングレー」のCMに、松尾がカバーするジャニス・ジョプリンの「MOVE OVER」が使われ、松尾の歌声が大きな反響を呼ぶ。2015年7月には1stアルバム「SUNRISE JOURNEY」をリリース。10月には東京・赤坂BLITZにてワンマンライブを実施した。7月20日に2ndアルバム「Next One」を発表。このアルバムには7月23日公開の映画「ONE PIECE FILM GOLD」主題歌の「怒りをくれよ」、10月8日公開の映画「少女」主題歌の「闇に目を凝らせば」などが収録されている。