むちゃくちゃ好き勝手にやらせてもらった「少女」主題歌

──ところでこのアルバムの収録曲は、「話をしよう」と「風に唄えば」というスタンダード感のあるフォーキーな2曲以外は、GLIM（幻想的）なテイストとSPANKY（攻撃的）なテイストの二極にきっちり分かれていますよね？

松尾　気付いてもらえましたか（笑）。そこはかなり意識しました。1stで歌詞の書き方に一区切り付けられた分だけ、今回は昔からウチらが持っている2つの大得意技を好き勝手に使わせてもらおうと思いました。

亀本　ここを振り切れたのも、やっぱりタイアップ曲の存在が大きかった。「怒りをくれよ」が「ONE PIECE」の主題歌なのにここまで振り切れているんだから、もう何をやっても大丈夫だろうという自信もあったし。「もっとわかりやすい曲を」なんていう話もまったく挙がらなかった（笑）。

松尾　そういう意味では、ものすごく作りやすかったアルバムだったとも言えますね。

──ではそれぞれの曲について伺っていきましょう。「NEXT ONE」と「ワイルド・サイドを行け」については、前回ナタリー登場時（参照：GLIM SPANKY「ワイルド・サイドを行け」インタビュー）に話していただいたので、「闇に目を凝らせば」から。まさしくGLIMサイドな曲ですが、映画「少女」への書き下ろしだそうですね。

松尾　「少女」を手がけた三島有紀子監督が、このアルバムに入っている「NIGHT LAN DOT」という曲をすごく気に入ってくださったそうで、「こういう曲を映画に書き下ろしてほしい」とオファーをいただきまして。とにかく監督のこだわりがすごくて、「映画の終わりで流す以上、ミュージシャンにも登場人物の1人になってほしい」と。「だから『エンドロールです、はい、バーン』とバンドサウンドが鳴る感じではなく、もっとお客さんにドキッとしてもらうような出だしがいい」とおっしゃって。だからまず私が1人で歌い始めるんです。

──なるほど。イントロでキュキュッと聴こえるのはチェロですよね？

松尾　それも監督からのリクエストでした。「ギター以外の楽器で始めてほしい」って。

──かなり細かいリクエストが（笑）。

松尾　あとは「とにかく売れ線系じゃない曲がいいです」とか。

亀本　「いわゆる“J-POP”とは違う曲にしてください」とか（笑）。

松尾　だから「じゃあそれならこっちも」と、幻想的な真夜中の世界を描いて。私の得意技で、むちゃくちゃ好き勝手にやらせてもらいました。

フェリーの旅から産まれた「grand port」

──「grand port」は旅の歌ですね。

松尾　1stアルバムのリリースツアーでフェリーに乗って北海道へ行って、着いた晩のホテルの部屋で書き上げた曲です。私はそのとき初めてフェリーに乗ったんですが、半日船で過ごすという経験が、私的にはかなりうれしくて大きな出来事だったんです。そこから感じたことを元に物語チックな曲にしました。船に乗ってまったく知らない土地へ行く。夜、外に出ると真っ暗だけど星だけが輝いていて、ここから何が起こるんだろう？とワクワクして。我ながらよっぽどうれしかったのか、ほとんど一瞬でこの歌詞を書き上げました。

──この曲だってある意味「ONE PIECE」っぽいですよね？

松尾　本当だ、気付かなかった（笑）。

──今回は特に旅を想起させる歌詞が多いですね。旅は好きなんですか？

松尾　大好きです！ 今、海外に超行きたくて。「刺激が欲しいよー」ってずっと言ってたら、こういう曲たちが増えたという（笑）。

──ちなみにどこへ行きたいんですか？

松尾　いちばんはアメリカ。ニューヨークと、ロサンゼルスのサルベーションマウンテンという砂漠の丘でアーティスト写真を撮りたいんです！

亀本　僕もアメリカがいい。（スタッフに）アメリカ行こう、アメリカ!!（笑）