GLAY特集|TAKURO & JIROソロインタビューで紐解くニューアルバム「Back To The Pops」 (4/4)

東京を離れ、曲と向き合い続けたプリプロ期間

──アルバムの収録曲をTAKUROさん発案でくじ引きで決めたそうですが、そのアイデアを聞いたときの心境は?

特に驚きも違和感もなかったかな。自分がDJをやってるFM802の番組(「Buggy Crash Night」)が今年25周年で、オンエアする曲は自分で選曲しているんです。昔はアルバムを聴いて、その中で自分が好きな曲をオンエアしていたのが、最近は変わってきて。アルバム1枚を聴いて1曲選ぶとなると、どうしても時間がかかる。だからApple Musicのプレイリストをいくつか聴いて、その中からいいなと思う曲があったら、それが収録されているアルバムを聴く形になった。

──音楽を聴くメディアの進化によって、ご自身のリスナーとして音楽の掘るスタイルが変わったと。

これまでアルバムの曲順というと、律儀に1曲目から最後の曲までの流れをライブのセットリストを考えるように決めてたけど、いちリスナーとしての今の自分の音楽の聴き方は違うわけです。あと、TAKUROが「このアルバムは1曲1曲が強いから、どれが1曲目だろうが最後だろうがあまり関係がない」と話していて。その言葉に納得したんですよね。あとは、単純にくじ引きで曲順を決めるとか面白いなと。

JIRO

──何が来るかわからないからドキドキするし、盛り上がりますよね。

そうなんです。アルバムミックスの終盤にTAKUROが、プロデューサーの亀田(誠治)さんに「最近のアーティストってどんなふうに曲順を決めてるんですか? 今回くじ引きで決めようと思うんですけど、どうですかね?」と聞いたら、亀田さん含めて全員が「面白そう」って盛り上がっちゃって。

──そんな経緯を経て、完成したアルバムを通して聴いたときの感想は?

全然違和感ないなと。

──なるほど。ベースのフレーズ作りにあたっては、TAKUROさんから何かリクエストはあったんですか?

基本なくてお任せという感じでした。アルバムのプリプロをやっていた時期はオフだったので、デモ作り用の機材を持って都外で過ごしてたんです。朝起きてからコーヒーを淹れて、それを飲みつつ前日録ったデモの音源を聴いて「なんか違うな。これは弾きすぎてるな」とか1人でいろいろ考えて。昼になったら昼ごはんを食べに出て、戻ったらまたベースを入れて、夕ごはん食べたらお酒を飲みながら弾き直してというのを10日間くらいやってました。

JIRO

──それはオフではないですね。

ホント、全然オフじゃなかったんですよ(笑)。ただ、その生活がすごく充実してて。東京だったら、マンション内の別のフロアに作業場があるから移動しないといけない。しかもスタジオだといろんな誘惑があるんです。カメラもあれば写真集も置いてあるし、テレビをつければサッカーの中継も観れるし。だけど今回のプリプロは生活の中に制作環境があって、しかもテレビも高校野球くらいしか観れない(笑)。集中して作業ができたので1曲1曲にすごく思い入れがあるし、自分でもいいベースが弾けたと思ってます。改めて曲に向き合う時間は必要だなと感じましたね。

──作業自体もスムーズでしたか?

すぐフレーズができた曲もあれば、なかなかうまくいかなかったものもあります。「whodunit」は結果的にシンプルなベースラインになったけど、いろんなパターンを試しては解体して、構築し直してという作業を繰り返しました。カッコよく言えば陶芸家みたいな感じで、作っては自分で「なんか違うなあ」となって壊しちゃったりすることも。あの10日間はオフじゃなくて、個人合宿でした。

いかにもGLAYのJIROが作りそうな曲=「シャルロ」

──1曲1曲に思い入れがあるということでしたが、JIROさん的に特に気合いが入った、挑戦した曲を挙げるとしたら?

「whodunit」かな。僕がこの曲のベースラインを作った段階では、JAYが参加することは決まってなかったんですよ。でもJAYの参加が決定してから、ENHYPENはダンスグループだからリズムに関して相当シビアだろうし、ちゃんと決めないとGLAYが恥をかくなと思ってレコーディングは気合いが入りましたね。「BRIGHTEN UP」のベースラインは考えながら超盛り上がってたな。TERUの歌を邪魔しないよう、時間をかけてフレーズを作っていきました。

JIRO

──「BRIGHTEN UP」同様に動きがある曲だと「V.」もそうでしょうか?

「V.」に関してはシンプルだけど、リズムで躍動感を出そうと工夫した曲ではありますね。よく一緒に飲みに行くベース仲間にR&Bが得意なスタジオミュージシャンの多田直人くんとLITEの井澤(惇)くんがいるんですが、その3人で飲んだ帰りにウチの作業部屋に来てもらったんです。僕はそれまでR&Bのベースを勉強したり、練習したりしてたんですが、3人でベースを弾いているときにGLAYのJIROが得意としているベースは8ビートだなと改めて気付いた。なんでもない8ビートの曲にベースで躍動感を出せるのが僕の持ち味だなということを感じて。「V.」のプリプロをしているときに、まさにこれが俺の持ち味が生かせる曲だなと思ったんです。フックを入れるところは入れてますが、ドラムと一体になるようなベースを意識しました。

──JIROさんの得意技が反映されている曲というと、作曲された「シャルロ」について触れないわけにはいきません。JIROさんが敬愛するthe pillowsを想起させる、軽快なリズムのオルタナティブロックチューンです。

「シャルロ」の原型は、「THE GHOST」と同じ時期に作ったんですよね。「THE GHOST」はR&Bテイストを意識したし、自分としてもかなり実験的だなと思っていた曲で。一方で「シャルロ」は“いかにもGLAYのJIROが作りそうな曲”というテーマで書いたんです。歌詞を書くのはTAKUROなので「気に入ったほうを使って」と「シャルロ」と「THE GHOST」の両方を渡したら、「ここは『THE GHOST』でしょ」ということでシングルとしてリリースされる流れがあり。さらにツアーのテーマとしても使われた。その後、アルバムに向けての曲作り期間に入ったタイミングで、TAKUROから「JIROまた1曲書いてきて」とリクエストをもらったんです。「THE GHOST」に続くタイプの曲も用意したけど、自分としては「THE GHOST」を超えられず。そのときに「シャルロ」の原型があったのを思い出して形にして、TAKUROに改めて送ったら「いいねいいね」と。

JIRO
JIRO

──TAKUROさんのお話によると、JIROさんの作った「THE GHOST」が隠れた楽曲をフィーチャーする「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023-The Ghost Hunter-」というツアーにつながり、「シャルロ」が「Back To The Pops」というアルバムのテーマを生み出すきっかけになったとのことで、とても興味深いです。ちなみにJIROさんが作られたデモから変わった点はありますか?

イントロのHISASHIのギターですね。あれが入ったことによって、曲の個性がより出た感じがします。

──いずれの曲もこれから始まるアリーナツアーで聴けるのを楽しみにしています。ツアーのセットリストはこれまで通りJIROさんが作られるんですか?

はい。アルバム以外の曲の方向性は決まっていて。デビュー30周年ですし、誰もが聴いて喜んでくれるような曲も入れる予定です。Queen + Adam Lambertや怒髪天とのイベント、サマソニで「GLAYのライブいいじゃん。ワンマン行ってみよう」と思ってくれた人たちが足を運んで、「全然知らない曲ばっかり……」みたいなことにはならないようにします(笑)。

──まだまだ30周年プロジェクトは続きますが、JIROさんはデビュー30周年という事実に対してどんな感覚を持っていますか? 長かったのか短かったのか。

うーん、体感的にはあっという間でしたね。でも、自分たちのファッションとかヘアメイクの変遷を見るとかなりの歴史を感じざるを得ないかな(笑)。

JIRO

公演情報

GLAY 30th Anniversary ARENA TOUR 2024-2025 "Back To The Pops" Presented by GLAY EXPO

  • 2024年11月8日(金)大阪府 大阪城ホール
  • 2024年11月9日(土)大阪府 大阪城ホール
  • 2024年11月16(土)長野県 長野ビッグハット
  • 2024年11月23日(土・祝)北海道 北海きたえーる
  • 2024年11月24日(日)北海道 北海きたえーる
  • 2024年12月7日(土)東京都 有明アリーナ
  • 2024年12月8日(日)東京都 有明アリーナ
  • 2024年12月14日(土)愛知県 Aichi Sky Expo ホールA
  • 2024年12月15日(日)愛知県 Aichi Sky Expo ホールA
  • 2024年12月21日(土)広島県 広島サンプラザホール
  • 2024年12月22日(日)広島県 広島サンプラザホール
  • 2025年1月3日(金)福岡県 マリンメッセ福岡 A館
  • 2025年1月4日(土)福岡県 マリンメッセ福岡 A館
  • 2025年1月18日(土)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2025年1月19日(日)神奈川県 横浜アリーナ

The Millennium Eve 2025

2025年2月22日(土)東京都 東京ドーム
<出演者>
LUNA SEA / GLAY

プロフィール

GLAY(グレイ)

北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年に活動を開始し、1989年にHISASHI(G)、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に12枚目のシングル「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブを開催し、当時有料の単独ライブとしては日本最多観客動員を記録する。2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年には宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行った。デビュー25周年を迎えた2019年より「GLAY DEMOCRACY」をテーマに精力的な活動を展開。10月にアルバム「NO DEMOCRACY」を、2020年3月にベストアルバム「REVIEW II -BEST OF GLAY-」をリリースした。コロナ禍の2021年3月から6月にかけて配信ライブ企画「THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK」を実施。デビュー30周年を迎える2024年は、周年のテーマとして「GLAY EXPO」を掲げて活動中。5月にシングル「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)- / シェア」を発表し、6月に埼玉・ベルーナドームで単独公演「GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025」を行い、10月に4年ぶりとなるアルバム「Back To The Pops」をリリース。11月から全国アリーナツアーを開催する。

2024年10月9日更新