EGO-WRAPPIN'インタビュー|アナログ2タイトル同時リリース、来たるべき最新アルバムに向けて放つブランニューサウンド (3/3)

歌詞のテーマは「サウナ」

──「AQUA ROBE」はダンスビートに、サウナをテーマにした歌詞が乗っかるというのがユニークですよね。ずっと一定のビートで続いていくサウンドは、サウナの時計が回るのをずっと眺めている感覚に通じるというか(笑)。

中納 この曲で何を歌おうかなと思ったとき、ちょっと生活が出た歌詞がいいなと考えて。私がサウナもお風呂も好きやから、そこをテーマにしてみようかと思ったんです。自分のソロ曲だと日常的な歌詞になるんですけど、エゴってやっぱり世界観がもうちょっと広くなるというか。だけど一旦、広がりを抑えて自分の世界観の中で歌詞を書いたら、どうなるかなって。ドリフの♪ババンババンバンバンとかもあるし、そういうのがええなと思ってたんです。

──ザ・ドリフターズの「いい湯だな」は有名ですけど、意外と風呂ナンバーって少ないかも。

中納 そうそう。風呂ナンバーって意外に少ないし、それがダンスナンバーやったら最高やん!と思って。

EGO-WRAPPIN'

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──ちなみに、中納さんはサウナには長く入れるほうですか?

中納 最近は昔ほどではなくなりましたね。前は8セットとかいけてたけど。

 8セットはすごいな。

中納 今は3セットぐらい。最近はサウナじゃなくて、銭湯の温冷浴にもハマってますね。熱湯に入ってから水風呂に入る。あれもオツやなって。京都の銭湯でやったら、めっちゃ気持ちよかったんですよ。あれは、けっこう穏やかでいい。サウナのあとの水風呂って、やっぱり温度差が激しいから。

 僕は風呂もサウナもどっちもやります。

中納 どっちもやります(笑)。

野音をイメージした“昼と夜のダンスミュージック”

──SUN SIDEの「Treasures High」はアフロビートを感じさせるダンスナンバーですね。

 この曲は、カリンバの音色から導かれてできた曲ですね。いつも利用しているスタジオでカリンバを見つけて、これで曲を作ってみようと思ったんです。初めてカリンバを手にして、これしか与えられてへんところから、どうやって曲を作るか。カリンバをボーンボーンって弾きながら、それでリフを3つくらい作って。和音も出せるから自分の気に入った妖しい響きを生かした、変なリフとかも作れるんですよ。それで、自分の中で成立していたらとりあえずOKみたいな。ドラムとベースが合わさって、そこにカリンバのリフを乗せたりすると、楽器の混じり具合で曲が面白くなっていく。そういう実験っぽい感じで作っていきました。イントロとか密林に迷い込んだような雰囲気があって、民族楽器を使ったメランコリックでインダリストリアルなダンスミュージックというか。

──不安さが漂うサウンドが続いて、そこからビートが変わって、視界が開けたように歌詞もサウンドもポップに展開していく。

中納 そこはわりと直球っていうか。ワクワクしていたいなという感覚から、新しい世界に踏み出すような歌詞が浮かんでいった感じかも。

──エゴならではのニューウェイブっぽいテイストが垣間見えながら展開していくのが、聴いていて気持ちよくて楽しい。12inchシングルとしてこの2曲がカップリングされた、組み合わせの妙みたいなものもありますよね。

 そもそもこの2曲は、毎年野音でやっているワンマンライブ「Dance Dance Dance」でお披露目しようというところから始まってるんですよ。野音って2つの表情があると思うんです。そこで陽が出ているときの1曲、陽が落ちてからの1曲みたいな感じで、昼と夜のダンスミュージックをイメージして作っていったんです。

EGO-WRAPPIN'

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──なるほど。だからMOON SIDEとSUN SIDEと銘打ったダブルサイダーになっているわけですね。今回の作品は、今年の「Dance Dance Dance」に先駆けてリリースされるわけですが、日比谷野音もいよいよ改修工事に入ってしまうという。実はEGO-WRAPPIN'って、単独アーティストとしては野音でのライブが最高回数だそうですね。

中納 そうなんや! それは光栄ですね。野音はお客さんもうれしい場所ですよね。お酒も飲めるし、どこからでも見やすいし、マジックが起こりやすい会場だと思う。私らも思い入れが深い会場だから、変わってしまうのは寂しいですけど。

結成30周年&待望のニューアルバムに向けて

──今回、待望の新曲が発表されたわけですが、読者の皆さんが期待してるのはアルバムの制作が現在どうなっているのかっていうところで。

 アルバムに向けて制作している中での、今回の2曲なのでね。この間のホールツアーでも、また別の新曲を聴いてもらってますし。

中納 アルバム用に、もうちょっと曲を作ります。まあ、来年30周年ですからね。それまでにライブもたくさんあるし。夏フェスもたくさんあって。

──さらに大忙しな日々が続きますが、元気で活動できてるのは、日々の温冷浴のおかげということで。

中納 おかげさまです。そういえば、おかげさまって「お陰様」と書くじゃないですか。お日様じゃなくてお陰様ってね。陰に様を付けるっていうのは、どこから来たのか。不思議やなあと思ってて。コツコツ見えないところでやってきたことが、力になりますみたいな感じなんかな。

──でも、EGO-WRAPPIN'は本当にずっと休まず活動してきたじゃないですか。アルバムのリリースこそ長期間空いているにしろ(笑)。

中納 そうですね。おかげさまで(笑)。

EGO-WRAPPIN'

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プロフィール

EGO-WRAPPIN'(エゴラッピン)

1996年、中納良恵(Vo)と森雅樹(G)によって大阪で結成。1999年の2ndミニアルバム「SWING FOR JOY」や2000年の3rdミニアルバム「色彩のブルース」、2001年の2ndアルバム「満ち汐のロマンス」などで多様なジャンルを昇華した独自の音楽性を示し、人気を集める。ライブパフォーマンスにも定評があり、2001年に東京・東京キネマ倶楽部でスタートさせた「Midnight Dejavu」、2012年に東京・日比谷野外大音楽堂で初開催した「Dance Dance Dance」はいずれも恒例イベントとしてファンに定着。現在ではどちらも東京、大阪の2都市で行われている。結成20周年イヤーである2016年、4月にベスト&カバーアルバム「ROUTE 20 HIT THE ROAD」を発表し、11月には初の東京・日本武道館公演「EGO-WRAPPIN' memorial live」を実施。2019年5月に約6年ぶりとなるオリジナルアルバム「Dream Baby Dream」を発表した。2025年7月2日に12inchアナログ「Treasures High / AQUA ROBE」と7inchアナログ「Sunny Side Steady / Sunny Side Dub -Prince Fatty Dubwise-」を同時リリース。また7月12日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)、8月2日に大阪・大阪城音楽堂にて、恒例のワンマンライブ「Dance, Dance, Dance」を開催する。