私立恵比寿中学|いろいろあった10周年、集大成のその先へ

「えっ、これ本当に私たちが歌うの?」

──「愛のレンタル」はマカロニえんぴつとのコラボで、大人っぽいソウルフルなサウンドの中で真山さんの声が際立っています。

真山りか

真山 別の取材でメンバーが「これは恋愛の歌だ」って答えていて、私は「そうなんだ?」と思ったんですよ。「愛のレンタル」って毎日してるなと思うんです。それは恋愛だけじゃなくて、生きるうえでのテーマとも言える、人に優しくするという人間として生きるための初歩的な“愛”だと解釈していて。

──なるほど。

真山 私がこう捉えていたように、いろんな意味で“愛”を解釈していいと思うし、はっとりさんのちょっとダークな言葉選びだったり、韻を踏んでいて音楽的に楽しいところだったり、いろんな面で楽しんでもらえる曲かなと思います。

星名 この曲もラップが入ってるけど、これはライブで歌ってもほっこりしそう。

柏木 うん。優しさを感じる。

──展開が多い曲ですよね。ソウルを軸にラップが入ったり、リズムがスウィングしたり。冒頭からエビ中の新しい一面が狙い通りにどんどん出てくるなと。次の「ジャンプ」もシリアスな新機軸で、これは熱唱している安本彩花さんに話を聞きたかったですけど、お休み中なのでどなたか代弁をお願いします。

星名 彩ちゃんが曲を作ってくださった石崎ひゅーいさんの大ファンなんですよ。自分の生誕祭でも歌うくらい(参照:安本彩花、表現してみたいこと詰め込んだ21歳バースデーライブ)。

真山 先にこの曲がアルバムのリード曲になると説明されたんですけど、デモを聴いた時点でびっくりしちゃって。「えっ、これ本当に私たちが歌うの?」みたいな。この熱くギターをかき鳴らしている感じで私たちが歌う姿が想像できなかったんです。新しいし、インパクトがあるし……歌詞の世界観も、ここまでわかりやすく情景が浮かびやすい曲ってエビ中にはあまりなかった気がして。ライブで聴いてもスッと歌詞が飛び込んでくるんじゃないかなと思いました。

──安本さんのまくし立てるようなソロパート8小節から溜めに溜めての「今だ!」のシャウトが、やはり相当印象に残りますね。

柏木 デモのひゅーいさんの声からすごかったんですよ。

小林 びっくりしました。「……ハッ! 今か!!」って。

真山 この曲が一番コンセプト通りなんですよね。新しい人と組んで新しいエビ中を見せるという意味では、この曲が特に目に見えて新しいんじゃないかなって。エビ中としても、世間の皆さんが抱いているであろうアイドルの曲に対するイメージとしても大きくかけ離れているから……アイドルは本当にジャンルレスだと思うし、その中でもエビ中は特にジャンルレスなグループだと思っているので、この曲を歌えたことは自信につながります。

「出てるね、今日も」

──そして5曲目の「I'll be here」は、洋楽的なアプローチの本格的なR&Bで、冒頭から最初のサビまで完全に柏木さんのみがフィーチャーされています。

柏木ひなた

柏木 もうびっくり。

──安室奈美恵さんに多大な影響を受けている柏木さんには適任かなと思いました。でも柏木さん、歌い回しであったりとか、安室さんに近付けるような歌い方はしないですよね。ちゃんとオリジナリティのある声で、こういう大人びたテイストでも歌いこなせるよう進化しているように感じます。

柏木 ありがとうございます(笑)。この曲もやっぱり今までのエビ中にはなかった曲調で、iriさんが遠慮なく私たちにぶつけてきてくれている感じがすごくうれしくて。レコーディングにはiriさんも来てくださって。「笑う笑う笑う」は3回出てくるけど、最初はちょっと笑ってて、だんだん切なくなって、最後は落ちている……という感じをうまく表現してほしいと言われて、ホンットに難しかったです。要所要所で曲のポイントになるところをiriさん本人が指示してくださいました。

──メンバー全員の聴いたことない声が引き出されている印象がありますね。

小林 確かに。私は「29歳になって歌ってください」って言われました。最初は26歳だったんですけど、だんだん上がって29歳に(笑)。

中山莉子

──では小林さんと同い年の中山さんは……すごい顔になってますけど(笑)。

星名 どうした(笑)。古畑任三郎みたいになってる。

中山 レコーディングのこと思い出してるんです。でも私は何歳になってとは言われなかった。

星名 歌穂は独特なんだよ、やっぱり。

──次の「PANDORA」はアルバムからいち早くライブで披露されましたが、なぜこの曲を真っ先に?

星名 一番にできたからです(笑)。裏事情ダダ漏れですけど、最初に完成して振り付けも早くできたので。

──“エビ中史上最狂・最速”と謳われていますが、そんな激しい曲の中で星名さんがとりわけ激しく歌っているという。

星名 そうですね(笑)。高いパートはがんばって歌おうとレコーディングに臨んだんですけど、結果こんなにパートをいただいてびっくりしました。振りが付いたら私が姫という設定で、動きが奇想天外すぎて(笑)。今年は体調の問題であまり動けなかったので、ずっとお立ち台を使ってライブをしてたんですけど、それを生かすような振り付けを作ってくださったんです。

中山 めちゃめちゃ高い声なんですよ。いつも「わあー」ってつい見ちゃう(笑)。

小林歌穂

小林 「出てるね、今日も」って思う(笑)。

星名 高くて大変だけど、この曲を歌うとスッキリします(笑)。

──「キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~」(2015年1月発売の2ndアルバム「金八」収録曲)の「反抗!!!!!」しかり、凶暴な部分を星名さんが担うことが多いですよね。エビ中のアイドルらしさを担うポジションだったのに、いつの間にか荒ぶり担当に。

小林 確かに。

真山 でもライブで観ると意外と、ちゃんとアイドルなんですよ。ほかの子が荒ぶるとアイドルにならなくなっちゃうからこそ、この手の曲は美怜ちゃんがやってくれるからこそ締まるんじゃないかと思います。

──「シングルTONEでお願い」はいわゆるシティポップの直球路線だけど、それを作ったのが山下達郎さんのモノマネでおなじみのポセイドン・石川さんというのがいかにもエビ中らしいですね(笑)。

星名美怜

星名 校長(エビ中のチーフマネージャー・藤井ユーイチ氏)がポセイドンさんのファンでお願いしたらしいです。

柏木 コーラスも自分たちで録らずに全部ポセイドンさんにお任せしました(笑)。

──6人それぞれの個性がより際立った楽曲が多い中で、この曲だけは皆さんの声が同化しているというか。挑戦的な曲が多いアルバムの中にあって、少しホッとできる場所ですね。

星名 そうかもしれない。レコーディングではポセイドンさんにお会いできていないので、いつかライブで共演したいです。