音楽ナタリー Power Push - 堂島孝平
やたらと楽しい会心作!20周年のミュージシャンズ・ハイ
「俺がどう思われようが、こんな曲が世の中にあったほうがいい」
──前作「フィクション」を今改めて聴くと、「A.C.E.」シリーズと今作の狭間にある、すごく不思議な作品ですよね。
あのアルバムで「俺は、ゆく」ができたことが大きかったですね(参照:堂島孝平「フィクション」インタビュー)。1曲目からいきなり死んでるっていう(笑)、遺言の歌を作ったから。姿勢としてはデビューの頃から変わってないんですよ。「世の中にこういう曲があったらいいのに」っていう。でも今回のアルバムは、その判断が究極「俺がどう思われようが、こんな曲が世の中にあったほうがいい」に変わってるんですよ。
──曲作りはツアーで全国を回っている合間に?
ツアー中にアイデアをまとめておいて、一気にガーッと作った感じですね。5月、7月、9月とツアーがあって、最初に曲を出したのが6月かな。そのときはイメージだけ先行してあって、歌詞は一切ない状況で。最初スタッフに説明するとき、楽器編成から伝えたんですよ。ハッピーであること、にぎやかであること、明るい、能天気……さっき言ったようなことをキーワードにして、それをどういう編成で表現するか。
──楽器編成は具体的にどのような?
まず俺、ギターは弾きませんよと。そして今回求める音は、ちょっとヒューマンタッチだったり、ハートウォーミングな部分が鍵になってくるから、やっぱり鍵盤は入れたい。自分がハンドマイクでいて、鍵盤を入れた4ピースのバンドにホーンセクションが3人、そして女性コーラスが3人いるっていう。これはラスベガスでショーをやるバンドのイメージなんです。とにかくアッパーな、ちっちゃい子から爺ちゃん婆ちゃんまでみんな観たくなるような人懐っこさがある音楽がやりたいって。それだけはもう最初に決めてましたね。
──なるほど。確かにアルバムを聴いているとコーラスやホーンを加えたバンドのイメージが浮かびますけど、ここで堂島さんはマイクを握ってるんですね。
そうなんです。ギターを置いて。2月のサンプラでも堂島孝平楽団(ブラスやコーラスを従えた大所帯バンドスタイル)のパートがあったり、夏に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に呼ばれたときも「派手にやるか」と楽団で出たんですけど、そうやってひさびさに楽団でやったのも大きかったかもしれないです。ヒックスヴィルの3人がただ踊ってるだけとか(笑)、そういうのも込みでひたすら楽しいオリジナルアルバムって、実はなかったんですよね。
わざとわかりにくくすることはもうやめた
──ちなみに今回のアルバムで最初にできあがった曲はどれですか?
メロディだけなら1曲目の「PERFECT LOVE」ですかね。「免許を取ったら」も早い段階からあったかな。ただ、なんとなくこういうアルバムにしたいとか、曲ごとにこのタイトルでこういうことを歌おうというイメージはあったものの「……幸せな曲ってどうやって書くんだ?」みたいな(笑)。俺のライブを観た人が「ハッピーでいいね」っていうあの感じって、歌詞として言葉にしようとするとどうなるんだ?って。それはなかなか大変でしたね。徐々に見つけていった感じでした。
──ライブのあのハッピーな空間がまずイメージとしてあって、バンド編成のイメージもあるというところから、曲そのもののテイストを絞り込んでいくような。
そうなんですよ。歌詞についてはかなり瞬発力で書きましたね。時間的な制約もあって、悩んでたら全部ストップしちゃうから。逆にそれがよかったかもしれない。本当に一番絞りだけしかないみたいな(笑)。今回はいい意味で本当に説明のいらないアルバムで、いちいち細かい説明が不要な作品ができたなと。
──ここ数作で感じていたことではありますけど、歌詞の書き方は最近けっこう変わりましたよね。シンプルともまた違う、いわゆる詩的な表現とは異なる、ある意味作文的な表現というか。
ああ、それはやっぱり狙ってやってます。僕が考えてることを言葉にするときっとそうなると思うんですけど、口語で歌詞を書く、しゃべっているような言葉を使うようにしていて。あとはコピーライター的な感覚。その2つでやっているから、詩的な歌詞ではなくなっていますね。「オモクリ監督」(さまざまな著名人が監督としてショートムービーを撮影するフジテレビ系番組「オモクリ監督~O-Creator's TV show~」。参照:堂島孝平監督の「オモクリ」名作&オリジナルソングが商品化)で身に染みてわかったのは、映像ってちょっとでも意味がわかんないと、なんなのかまったくわからなくなるんですよ。疑問点が出てくるとまったく作品に入り込めない。わかりやすいことが絶対ってわけじゃないんですけど、わざとわかりにくくすることはもうやめた、という感じがあるんですよ。
歌詞は自分の考えをシェアする感覚
──「免許を取ったら」の歌詞なんて素朴極まる書き方ですよね。このタイトルで「僕が免許を取ったら」から始まる上に、「すぐに車を選んで 広めの道中心に東京を走りたい」っていう。
これ、けっこういいですよね。アホでしょ(笑)。この歌詞が書けたとき「俺、今回やったな」って思いましたね。「免許を取ったら」と「ワンダーサレンダー」は早い時期に歌詞が書けて歌を録ったんですけど、この2つでアルバムの方向が見えてきたところはあります。「免許を取ったら」はいろんな可能性が考えられる曲だったんですよ。もっと英語っぽく、洋楽っぽくしようと思っても全然できちゃうタイプの曲で。でも今回やりたいのは、どっか能天気な感じだったから。「アルコール&レスポンス」なんかは「飲みに行こう」ってとこで曲にするというアイデアの時点で勝算はあったんですけど、そのまんまじゃつまんないし、はっきりと「楽しいことしかしたくない」という思いをムードとして形にするための配慮はかなり考えましたね。
──それはコピーライター的な感覚かもしれないですね。
うん。もともと「免許を取ったら」って曲は書こうと思ってたんですよ。ただ、この曲にするつもりはまったくなかったんです。「免許を取ったら」というタイトルが付いた違う曲が最初は別にあって。そろそろ40になるおっさんが「僕が免許を取ったら広めの道中心に」って歌うのって、なかなかキてんなあって(笑)。俺が免許を持ってないことを知ってる人たちに対しても面白いだろうし、俺のこと知らない人が聴いたら、20歳ぐらいの子が書いた曲に思えなくもないんですよ(笑)。免許を持っていない人でこう思っている人はいっぱいいるはずだと思って……前と感覚が違うのはそこなんですよね。外側に向けて自分の考えをシェアする感覚。たぶん俺じゃなくてもいいんですよ。極論を言うと。
──「免許を取ったら」という内容の曲がこの世にあればそれでいい。
そう、あったほうが絶対にいいはずなんだっていう信念があって。精神的な部分での音楽の向き合い方は、今までとは違う新しい感覚になってますね。
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- ニューアルバム「VERY YES」 / 2015年12月16日発売 / IMPERIAL RECORDS
- 初回限定盤 [CD+DVD] 4104円 / TECI-1473
- 初回限定盤 [CD+DVD] 4104円 / TECI-1473
- 通常盤 [CD] 3240円 / TECI-1474
CD収録曲
- PERFECT LOVE
- わがみ
- ワンダーサレンダー
- 免許を取ったら
- アルコール&レスポンス
- H.A.P.P.Y
- MR. RAINY MAN
- きみのため
初回限定盤DVD収録内容
「堂島孝平 活動20周年記念公演 オールスター大感謝祭!」ダイジェスト
- いとしの第三惑星
- 葛飾ラプソディー
- 6AM
- Remember
- メロディアス
- Selfish Girl
- 25の瞳
- スマイリー、月へ行く
- SHORT CUTTER!
- So She, So I
- 妹子なぅ
- スマイリンブギ
- 旅人のうた
- き、ぜ、つ、し、ちゃ、う
- サンキューミュージック
- LUCKY SAD
- 俺は、ゆく
- DJKH×A.C.E. TOUR 2016「君が、来る」
- 2016年1月9日(土)大阪府 Music Club JANUS
- 2016年1月15日(金)北海道 札幌KRAPS HALL
- 2016年1月23日(土)愛知県 ell.FITS ALL
- 2016年2月7日(日)宮城県 HooK SENDAI
- 2016年2月10日(水)広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
- 2016年2月12日(金)福岡県 DRUM SON
- 2016年2月21日(日)東京都 LIQUIDROOM
堂島孝平(ドウジマコウヘイ)
1976年2月22日大阪府生まれ。茨城県取手市で育ち、1995年2月にシングル「俺はどこへ行く」でメジャーデビューを果たす。1997年には7thシングル「葛飾ラプソディー」がアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のテーマソングに起用され全国区で注目を集めた。ソングライター / サウンドプロデューサーとしての評価も高く、KinKi Kids、藤井フミヤ、太田裕美、THE COLLECTORS、アイドリング!!!など数多くのアーティストに楽曲を提供している。デビュー20周年を迎えた2015年2月には、東京・中野サンプラザホールにて記念公演「堂島孝平 活動20周年記念公演 オールスター大感謝祭!」を開催。ゆかりのゲストを多数招いて華々しく行われた。同年12月には通算17枚目となるオリジナルアルバム「VERY YES」をリリース。