Curly Giraffe「a taste of dream」 PR

Curly Giraffe|自然体で表現した自分の根っこの音楽

Curly Giraffeが4月24日にニューアルバム「a taste of dream」をリリースした。

前作「Fancy」から4年9カ月ぶりのアルバムとなる本作には、高橋幸宏や藤原さくら、ハナレグミといった親交のあるミュージシャンたちとのデュエット曲など全12曲を収録。そのうち8曲は初の日本語詞に挑戦した楽曲だ。6月には東京と大阪でバンド編成でのアルバム発売記念ライブも開催される。

音楽ナタリーではCurly Giraffeにインタビューを行い、アルバム制作のきっかけや日本語詞に初挑戦した理由、デュエット曲のレコーディングエピソードなどを聞いた。

取材・文 / 大谷隆之 撮影 / 吉場正和

自然に作りたくなるまで5年近くかかった

──7枚目のアルバム「a taste of dream」とてもよかったです。前作「Fancy」からはかなりインターバルが空きましたね(参照:Curly Giraffe「Fancy」インタビュー)。

そうですね。「Fancy」までわりとコンスタントに出していたんですが、ずっと同じ作り方をしてたこともあって、創作欲がひと段落しちゃったというか。特に休憩宣言をしたわけじゃないんですけど、自然に作りたくなるのを待っていたら、5年近く過ぎてしまっていたという(笑)。

──その間もベーシスト・高桑圭として多忙を極めていましたし。

でも、忙しさだけでいうと、5年前のほうがもっと働いてたんですよ。サポートの仕事が続いたほうが、むしろ合間を縫って自分のことをやりたい欲求が強まるみたいで。

──なるほど。

だけど「Fancy」を作ったあと、なんとなく達成感が生まれちゃったんですね。それで一時期、頭からCurly Giraffeのことが離れていた。とは言えアコースティックのライブはときどきやっていたので。来てくれたファンの方には「新譜出してなくて申し訳ない!」と思いつつ……この5年くらい過ごしてた感じです。

Curly Giraffe

作曲ってどうやるんだっけ?

──ひさしぶりに作ろうと思ったきっかけは?

一番の理由はシンプルに、新しいレーベルが決まったこと。そこから具体的にアルバムの話になって、去年の秋頃から本腰を入れて作り始めました。自分の中で1回、気持ちがリセットできたのがよかったんじゃないかと。

──今回もほぼすべてのパートをご自分で制作されていますが、作り方で何か変わったところはありましたか?

いえ、そこは変わらずです。特に今までと違うものを打ち出そうという意識もなかったし。相変わらずオール宅録で、使っている機材もほとんど変わってない。ただブランクが長かったので、最初はちょっと戸惑いました。

──へえ、それは意外です。

でしょう(笑)。前のアルバムを出した頃までは、けっこうコンスタントに曲も書いていたんですよ。それこそ「趣味? 作曲です」って感じで。誰に頼まれたわけでもなく、自然にストックが溜まっていた。でも、ここ5年はそのサイクルも止まっていて。「えーと、作曲ってどうやるんだっけ?」的なところから再起動する感覚もあったりして。

──クリエイターとしての、ある種のバイオリズムなんでしょうか?

そうかもしれませんね。1つ確実に言えるのは、気分が乗ってないのに無理に曲を作っても、いいものにはならない。もともとCurly Giraffeの活動自体が、自分が根っこのところで好きな音楽を自然に表現できたら、というところから始まっているので。その気持ちを軸にアルバムを作っていく姿勢は、変えずにキープしていきたいなと。

西海岸っぽいサウンドはずっと好き

──“ルーツにある音楽”ということで言うと、今回の「a taste of dream」の音像はどこか1980年代っぽいというか……。

あ、うんうん。

──「Fancy」はわりあいフォーキーな手触りの仕上がりでしたが、今回はアメリカ西海岸のAOR的なニュアンスを端々に感じました。

いいですよね、アダルトオリエンテッドロック。世代的には、僕たちよりちょい上の人たちがブームど真ん中だと思うんですけど。中学生の頃とかはけっこう好きで、よく聴いてました。

──80年代の初頭ですね。

ええ。好きでした。ほかにも、なぜか家に父親が買ったAmbrosiaのLPがあって。それも好きだった。ただ僕の場合、中3から急にUKの音楽にハマって。AORとかアメリカンロックは全部切り捨てちゃったんです。ピーター・バラカンさんがMCをされていた「ザ・ポッパーズMTV」の直撃世代なので。高校時代はニューウェイブとかネオアコ一辺倒。アメリカの音楽はまったく聴いていなかった。

──その振れ幅、同世代なのでわかります(笑)。ソフィスティケートされておしゃれなAORから一気に、ダークで文学的なUK方面に走ったと。

まさに(笑)。でも20代に入って、自分はやっぱり根っこの部分ではAOR的な音楽も好きなんだって再認識するわけですね。というか、受け入れられるようになった。

──いいものはいい。好きなものは好き、だと。

そうそう。以来、西海岸っぽい乾いたサウンドは、ずっと変わらず好きです。そういう僕にとってのルーツミュージックを、自分なりのフィルターを通して表現しているのが、詰まるところCurly Giraffeなんだと思う。

ロスの空気が反映されている

──アートワークは毎回、高桑さんご自身が手がけていますが、今回はモロにアメリカのロードサイドの風景ですね。撮影はどちらで?

Curly Giraffe

ロスです。去年の秋、まだ曲が1つもできてない時期に、先に写真だけ撮ってきちゃいました。なので今回は、先にビジュアルイメージから決めて。そこからサウンドを作っていったという順番ですね。

──空の青さ。「CAFE」という看板。上下とも白という高桑さんのコーディネート。すべてが世代的にグッときます。

あははは(笑)、そうですか。じゃあよかった!

──先行シングル「SOMEWHERE」のジャケットは、赤いスポーツカーで。ロゴも含め、鈴木英人さんの80年代のイラストを思い出しました。しかも重要なのは、そのビジュアルが抜けのいいギターの音色と完璧に合っている。

この歳になってようやく、自分の好きなものをてらいなく出していこうと思えるようになったんでしょうね。前のバンド(GREAT3)をやってた時代は、まだ若くてヒネクレていたので、「わかる人にわかればいい」って感じが強かったんですけど。そこから5周くらい回って、どんどん直球になってきた。

──今回は最初から、AORを1つテーマにしようと決めていたんですか?

いえ、特にそういう感じではないです。どのアルバムにも言えることですが、コンセプトって基本ないんですよ。その時期にできた楽曲をシンプルに入れていくだけで。ただ、1つ大きな理由があるとしたら、3年前から家族がロスに住むようになったんですね。それで僕も、しょっちゅう東京と西海岸を行き来するようになって……年に4、5回くらい行ってるのかな。イメージの西海岸じゃなくて、リアルにロスの空気を吸うことが増えた。その皮膚感覚が音に反映されている部分は、かなり大きい気がします。

──すごく納得しました。

あと最近のアメリカ西海岸って、若い世代のバンドが、けっこう昔っぽい音を出してたりするんですね。もちろん手法はデジタルなんだけど、質感はむしろアナログっぽかったりする。そういうサウンドに接する機会が増えて、刺激を受けたのもあるかもしれない。

──例えば、どんなバンドが面白いですか?

西海岸でもロスじゃなく(オレゴン州)ポートランドが拠点のバンドだけど、今年の「FUJI ROCK FESTIVAL '19」にも出演するUnknown Mortal Orchestraとか。アレンジは相当考え抜かれていて、面白いことをやってるんですけど、受ける印象としてはシンプルで。気に入ってますね。

──そういう刺激も、アルバムの仕上がりに影響しました?

つながってる部分、あると思いますね。今回の「a taste of dream」って、実は全体にかなり音数少なめなんです。5年ぶりに本気で作りだしたら、なぜか色をたくさん塗るのに飽きちゃっていた。少なくとも今は、色が少なめのほうがグッとくるモードですね。それと、実際に暮らしてみて思ったのは、ロスって意外に派手めのアレンジが似合わないの。

──へえ、そうなんですか。

天気はいいけれど、車社会で、人の気配もあんまりしないし。車で走りながら音楽を聴いていると、むしろちょっとけだるくて“ドローン”とした音像がしっくりくる。まあ、これは僕の感じ方ですけれど。