高橋幸宏、藤原さくら、ハナレグミとのデュエット
──今回、ゲストの参加もすごくいいアクセントになっていますね。5曲目の「break the mold」は高橋幸宏さんとのデュエットです。
Curly Giraffeを始めた頃から、よく「幸宏さんと声質が似てるね」と言われていたんです。その後、In Phaseというバンドで実際にご一緒したんですけど、レコーディングでハモったりすると、確かに自分でもちょっと似てるところあるなと思って。いつかきちんと、歌で交われたらなという思いがあったんですね。今回それをデュエット曲で実現させました。
──ビートニク詩人風の歌詞といいフォークロックっぽい曲調といい、幸宏さんの雰囲気にぴったりですが、これは当て書きではないんですか?
違います。順番的には、先にデュエットソングができていて。アルバム用に曲を並べて誰と歌おうかって考えたとき、これは幸宏さんがいいなと思ったんです。ゲストを招くときって、とかくアレンジをゴージャスにしがちじゃないですか。だけど僕は、とにかく幸宏さんの声が大好きだったので。例えるなら素材を生かしたシンプルな料理というか、2人でハーモニーが奏でられたらそれだけで十分、という気持ちがあった。
──じゃあ、レコーディングも短時間で?
そうですね。今回、ゲストの3人共うちの自宅スタジオに来ていただいたんですけど、特にこちらからあれこれお願いすることもなく。皆さんサラッと歌って帰っていかれました(笑)。
──6曲目の「LA」をデュエットした藤原さくらさんとは、彼女のデビュー作からの付き合いです。
さくらちゃんも、あのスモーキーな声が本当に魅力的で。「LA」という曲は、シャッフル系のリズムも彼女の個性にぴったりかなと思って、参加してもらいました。事前にデモ音源を送っただけで、特にキーの確認すらしなかったんですけど、スタジオで歌ってもらったら「あ、完璧だ」と思って(笑)。結局、2テイク録っただけでOKにしちゃいました。
──小さな音で入っているバンジョーが、またいい感じで。
はい。カントリー系の楽器は大好きなので。この曲調にはマストだなと。
──10曲目の「one」はハナレグミとのデュエットで、レイドバックしたドブロギターが最高でした。高桑さんは2017年にハナレグミの「My California」という楽曲をプロデュースしていますが(アルバム「SHINJITERU」収録)、今回参加してもらった理由は?
(永積)タカシ君もやっぱり、声の魅力ですよね。レコーディングでは当初、少し僕の雰囲気に寄せて歌ってくれたみたいなんだけど、途中で「いや、もっとタカシくんらしさを出してくれていいよ」という話をして。それでああいう仕上がりになりました。
──オケを作るにあたって、何か気を付けたことはありますか?
あえて少し、時間を置くことかな。オケって、その気になれば1日で1曲すべて作れちゃうんですよ。だけど最近は、まず骨組みだけ作っておいて、ちょっと寝かすようにしている。そうすると、そのときは見えなかったアイデアがまた出てくるので。なので今回は1曲ずつ完成させていくんじゃなくて。12曲分の骨組みをまず作って、細かい色付けは最後にまとめてしています。
ベーシストとしてのエゴがない
──Curly Giraffeのアルバムは毎回そうですが、今回もベースのプレイが特に際立っているという感じはないですね。
こういう言い方は語弊があるかもしれないけど、僕、ベーシストとしてのエゴがほぼないんですよ。もちろん楽器のなかではベースが一番得意だけど。ミュージシャンとしてはすべての音が好きというか、アンサンブルでしか考えていないので。なので毎回、ベースの音入れは最後にしています。
──どうしてでしょう?
最初にベースを録っちゃうと、それだけでなんとなく曲が形になっちゃうから。そうするとアレンジのアイデアが浮かばなくなるんですね。むしろ不得意な楽器を先に入れたほうが、それをカバーするために「ここはこうしたらどうだろう」っていろいろ考える。で、そうやって最後に得意なベースで足りてないところに音を置いていくというのが理想ですね。
常に扉の開いた状態にしておきたい
──新しいアルバムを改めて振り返ってみて、どのような感想を?
これまで以上にシンプルに仕上げたな、と(笑)。だけど、そこに物足りなさは感じていない。もっと音を詰め込むこともできたとは思うんですけど、むしろここで筆を止めておいてよかった。ミュージシャンとしての経験値、人生の経験値、いろいろ積み重なって、かつてのアルバムよりもっと少ない素材でツボを押さえられるようになってきたのかなと。そういう手応えはありますね。あと、この5年間で音楽を取りまく状況も変わってきたような気が、個人的にはしていて。
──それはいい意味で、ですか?
うん。音楽の作り方も聴き方も、どんどん自由になってきてる気がする。特に若い人たちは、時代とかジャンルとか、国とか関係なく、いい音楽に積極的にアプローチするようになってきてるでしょう。Curly Giraffeにとって、これはチャンスじゃないかと。
──時代の空気はしっかり呼吸しつつも、流行りとは関係ない。タイムレスな音楽がCurly Giraffeですからね。
だとうれしいですね(笑)。Curly Giraffeでは自分にとってのルーツを表現していますが、聴いてもらいたいのはあくまで僕の音楽。できれば日本だけじゃなく、世界中いろんな人に興味を持ってもらいたい。今回、日本語で歌っているのも、それこそマック・デマルコの逆パターンで、1つのきっかけになればいいなと思ったりしてるんです。そのためにもCurly Giraffeの音楽は、常に自由で、扉の開いた状態にしておきたいなと。
ライブ情報
- Curly Giraffe tour "a taste of dream"
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- 2019年6月12日(水)大阪府 Music Club JANUS
- 2019年6月13日(木)東京都 WWW X
- OPEN 18:00 / START 19:00 出演者Curly Giraffe(Vo, B)/ 名越由貴夫(G) / 堀江博久(Key)/ 恒岡章(Dr)