音楽ナタリー PowerPush - クレモンティーヌ×大橋トリオ
フランスと日本から見た“ディズニーと音楽”
ディズニーはフランスのすべての子供が通るもの
──話が前後しますが、そもそも今回のアルバム「CLEMENTINE SINGS Disney」はどのようなきっかけで作られた作品なんですか?
クレモンティーヌ 私はディズニー映画の中でも「おしゃれキャット」のディズニー マリーが一番好きなんですが、その公式イメージソングを探しているという話を聞いて。ディズニー関連のアルバムは作ったことがないし、いつかやってみたい気持ちもあったので、そこからまず「パリのお散歩~ディズニー マリー」を作ったんです。
──アルバム1曲目に収録されているディズニー マリーのインスパイアソングですね。
クレモンティーヌ はい。で、せっかくだったら1曲だけじゃなくてアルバムにしてみようと。私なりのディズニーの世界観が出せればいいなと思って、このようなアルバムの形になりました。13曲入っていますが、私が子供の頃に聴いたディズニーのような、古い時代の魅力を感じる歌が多いかもしれません。
──ところで、お2人にとってディズニーはどういうものですか?
大橋 僕は東京ディズニーランドのイメージですね。実家が千葉なので昔からよく行ってて、海外へ行ったようなワクワクが気軽に味わえる場所だなって。
クレモンティーヌ 昔はフランスにディズニーランドがなかったので、私はディズニーといえば完全に映画。フランス人の女の子は必ず「シンデレラ」を通るし、一度はそのコスチュームに変身するのが昔から今の子供まで変わらない慣習で、私ももちろん着ました(笑)。ディズニー映画は子供にとって夢のような人生が詰まってるってところが魅力ですね。「シンデレラ」を例に挙げるならば、キラキラした舞踏会で王子様に出会えるっていう。主に女の子でしょうが、幼い子が憧れる要素がたくさん入っていると思います。
大橋 フランス人の女の子は、そういうコスチュームが似合いそうですね。
クレモンティーヌ 「眠れる森の美女」も人気が高いですけどね。男の子なら「ライオン・キング」とか「トイ・ストーリー」。ディズニーはフランスのすべての子供がなんらかの形で通っていくものです。
──ではディズニー音楽の魅力とはなんだと思いますか?
クレモンティーヌ ヒット曲制作マシーンと言ってもいいくらい必ずヒットしますよね。その理由は、昔からディズニーが1つの世界観を作り上げる中で音楽の要素を非常に大切にしているからではないかと思います。
大橋 昔の作品は特に画と音が細かく合っているイメージが強いですよね。僕も映画音楽をやらせてもらうことがあるんですが、ディズニーの音楽は本当にその道のプロの方が作っているものだなって。とにかくクオリティが高くて、音も曲もアレンジも素晴らしい。これはディズニーに限らずですが、映画音楽にはその時代の音楽のすべてが詰まっている気がします。
カバーの秘訣は楽曲の先入観を持たないこと
──お2人の共通点といえば、カバーも積極的に歌っていることが挙げられると思います。その際、楽曲選びで意識していることはありますか?
大橋 僕は「大橋がこんな曲やったんだ」って驚かれるような曲を選ぶようにしています。でも自分の畑と違い過ぎると失敗するので、そのジャッジは冷静に。で、リストアップしたものを必ず一度はギターやピアノで弾きながら歌って、これならいけるかもって手応えがあった曲に決めていますね。
クレモンティーヌ 私は周りのスタッフとよく話し合います。やるかやらないかのボーダーライン上にある曲は特に。結果としてそういうものが一番リスナーにウケたりするし、個人的には「なんとかなるかな」というギリギリのところにチャレンジしていくのがカバーの秘訣かなと思います。あとは楽曲に対する先入観を持たないこと。例えば歌詞にピンと来なくてもメロディにフォーカスしたら実は素晴らしい曲だったりするし、まっさらな目で見るといいところだけが見えてくる。
大橋 すごくよくわかります。カバーされる曲っていうのは、やっぱり名曲だからみんなカバーするんですよ。名曲と呼ばれる理由がちゃんとあるんだなって、カバーしてから改めて気付くことも多いです。音を分解していくと、名曲と呼ばれる理由がメロディではなくリズムにあったとわかる場合もありますしね。
──では実際にカバー曲を歌うときのポイントは?
大橋 オリジナルはオリジナルのよさがあるので、あえて同じことはせず。コード進行やメロディなど、どこかでオリジナルとは違う魅力を出せないだろうかと考えるところから始めます。それを変えることで自分っぽい何かが残せたらベストだなって。
クレモンティーヌ 私もそうですね。曲を別のアレンジや歌い方にして、こんな可能性もあるんだって感じられるものにしたいので。ただ今回のアルバムでカバーした「レット・イット・ゴー」のフランス語バージョンはすごく難しかった。もともと自分の歌や世界観ともっとも遠い雰囲気の曲だったので、私に合ったコード進行などを納得のいくまでアレンジャーと相談してからレコーディングに臨みました。
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- クレモンティーヌ ニューアルバム「CLEMENTINE SINGS Disney」 / 2014年11月26日発売 / 3024円 / Walt Disney Records / AVCW-63038
- 「CLEMENTINE SINGS Disney」
収録曲
- パリのお散歩 ~ディズニー マリー
[ディズニー マリー・インスパイア・ソング] - 2人は小さな恋人
[インスパイアド・バイ・ミッキーマウス&ミニーマウス] - ミッキーマウスマーチ(英語バージョン)
[ミッキーマウス・クラブ] - ビビディ・バビディ・ブー(フランス語バージョン)
[シンデレラ] - 栗毛色のお姫様
[バンビ・インスパイア・ソング] - アンダー・ザ・シー(フランス語バージョン)
[リトル・マーメイド] - いつか王子樣が(フランス語バージョン)
[白雪姫] - スパカリフラジリスティクエクスピアリドーシャス(フランス語バージョン)
[メリーポピンズ] - 流れ星のワルツ
[わんわん物語・インスパイア・ソング] - Ma cherie~デイジーみたいな君に
[ドナルドダック&デイジーダック・インスパイア・ソング] - 星に願いを(フランス語バージョン)
[ピノキオ] - パリのお散歩~ディズニー マリー(フランス語バージョン)
[ディズニー マリー・インスパイア・ソング] - レット・イット・ゴー(フランス語バージョン)
[アナと雪の女王]
収録曲
- PARODY
- サリー
- Cherry Pie
- めくるめく僕らの出会い
- 灰色の世界
- eito
- game over
- くるみ
- サーカス小屋
- 君のいない冬
- FLY
クレモンティーヌ来日公演
- 2015年2月21日(土)
東京都 早稲田奉仕園 スコットホール(DEPA RYO with CLEMENTINE) - 2015年2月23日(月)
大阪府 Billboard Live OSAKA
クレモンティーヌ
フランス人の女性シンガー。1988年にデビューして以来、ジャズ、ボサノバ、ポップスといったさまざまなジャンルで作品を発表している。また本国だけでなく日本でも1990年代前半に小沢健二、田島貴男、大沢伸一、福富幸宏らが提供したナンバーを歌ったり、2010年にテレビCMで「天才バカボン」をカバーしたりと幅広い分野で活躍している。2014年11月にディズニー作品のカバーとディズニーキャラクターのインスパイアソングを収めた「CLEMENTINE SINGS Disney」をリリース。12月に来日公演を行った。
大橋トリオ(オオハシトリオ)
マルチプレイヤー大橋好規によるソロプロジェクト。 音楽大学を卒業後、2003年に映画「この世の外へ クラブ進駐軍」にピアノ演奏とビッグバンドアレンジで参加。その後も映画やCMの音楽制作や楽曲提供、サポート演奏などで幅広く活躍する。2007年に大橋トリオ名義のアルバム「PRETAPOTER」を発表し、2009年にはミニアルバム「A BIRD」でメジャーデビュー。以降もコンスタントに作品をリリースし、2010年3月にカバー集「FAKE BOOK」シリーズをスタートさせた。また2014年には初のベスト盤「大橋トリオ」を発表。2015年1月28日には1年10カ月ぶりのオリジナルアルバム「PARODY」をリリースする。
- <大橋トリオ衣装>
- ジャケット:51000円 パンツ:24000円 / スリー ブラインド マイス(ストリームス 03-3403-5514)
- ニット 22000円 / ファクトタム(ファクトタム アパルトメント 03-5459-9779)
- シューズ:34000円 / キッズ ラブ ゲイト(スタイル 03-6416-9061)