大橋トリオ&THE CHARM PARKインタビュー|最高のパートナーと紡ぐ“色あせない音”

大橋トリオとTHE CHARM PARK。これまで何度も共演してきた盟友同士の2人が、初のデュオアルバムを完成させた。

「Trio & Charm」というシンプルなタイトルと同様に、収録されている楽曲は2人のアコースティックギターとボーカルハーモニーで構成されたシンプルの極み。新曲5曲に加え、大橋トリオとTHE CHARM PARKそれぞれの既発曲の新バージョンと、Simon & Garfunkel「Bridge Over Troubled Water」、大胆かつ繊細なアレンジを施した松任谷由実「青春のリグレット」のカバーが収められた本作は、聴く者に驚きと安らぎの両方をもたらす1枚となっている。

音楽ナタリーでは2人にインタビュー。アルバム制作秘話から、お互いへの信頼について、そして今後の共演の予定までたっぷり話してもらった。

取材・文 / 高岡洋詞撮影 / LisA=kozai
撮影場所 / shirasagi(石川県金沢市柿木畠4-16)

音楽を思いきり楽しめる最高のパートナー

──素晴らしいアルバムで興奮しました。お二人とも絶対の自信がおありなのではないかと思いますが……。

大橋トリオ ある部分とない部分があります(笑)。

Charm 2人の名義だからこその自信というのはありますよね。お互いに頼れるというか。

大橋 そうだね。信頼関係のもとに成り立っているという。

左からTHE CHARM PARK、大橋トリオ。

左からTHE CHARM PARK、大橋トリオ。

──昨年12月のBillboard Live TOKYO公演の模様が映像ディスクに収録されていますが、そのライブでSimon & Garfunkelの「The Boxer」を演奏する前に「一緒にやるきっかけになった曲」と話されていましたね。

大橋 ほぼそうですね。アコギ2本で2人でコーラスをするってことをやりたいと思ったのは「The Boxer」のカバーが大きいです。

Charm 2017年に大橋さんのツアーを僕がサポートしたときに、“一本マイクコーナー”で何をやりたいか聞いてくださったので「『The Boxer』をコピーしませんか」と。それが初めてですよね。

大橋 ファレル・ウィリアムスの「Happy」とかも一緒にやったことはあるんですけど、もっとトラディショナルな、アコギを2人で弾いて2人で歌うっていうのはどうかと。少なくとも僕は聴いてみたいし、同じ考えの人がいるんじゃないかと思ったんですよ。「Charmくんとだったらできるな。いつかやりたいな」と思ってました。

Charm その少しあと、2018年3月に「J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE」というイベントで、初めて連名でライブをしたんです。

大橋 そのときはそれぞれの楽曲をアコースティックで披露して、適度にハモるぐらいでしたけど、どうせやるならもっと作り込んで、いいものを作らないと満足できなくなってきたんですよ。ただセッションしてるだけじゃなくて、ちゃんと作りたいなって。

──その後も何度かお二人でライブはされていますよね。アルバムの構想はいつ頃から?

Charm オフィシャルに声がかかったのは去年の夏前ぐらいだった気がします。

大橋 レーベルから「次のアルバムどうしますか?」と言われたときに、大橋トリオの作品をやる気持ちがまったくなかったんですよ(笑)。だったらこのタイミングでCharmとやりたいなと思って。聴きたい人もいるだろうし、マンネリの打破にもなるし。そういうことも含めて、いろいろ考えました。

──なるほど。Billboard Live TOKYO公演の映像込みでの印象ですが、大橋さんがとにかく楽しそうでした。ちょっと驚くほど。

大橋 やっぱりね、ギターは1人で弾くんじゃなくてCharmくんと弾きたい。それが一番楽しいんですよ、僕の中で。というか、世の中にいるギターがうまい人たちを見てても、「絶対1人で弾くより2人のほうがいい」ってどっかで思っちゃうんですよね。あくまで僕は、ですけど、より音楽的に感じるのは“2人”なんです。もちろんソロギターの名手はたくさんいて、僕が大尊敬する吉川忠英さんもすごいし、憧れてコピーしたりもしましたけど。ただ、ソロだと1個も間違えられないじゃないですか。すぐバレるから。でも2人なら、そこまで細かいことを気にしなくてもいいし。

Charm うんうん。それはありますね。

大橋 あと歌をハモれるのも楽しい。

──音楽を思い切り楽しめる、最高のパートナーですね。それだけCharmさんに信頼を寄せる理由は?

大橋 僕からしたら感覚が一緒なんです。「こういうフレーズ欲しいな」と思ったらすぐ、何も言わなくても出てくるとか。感覚が似てるのか、合わせてくれてるのかわからないけど。

──Charmさんにとって大橋さんは?

Charm 前から言ってますが、大橋さんの音楽がアメリカにいたころから大好きで、一番聴いてたアーティストなんです。だからこうして2人の名義でアルバムを出せるのは光栄の限りです。大橋さんに「信頼できる」と言われるのも、とにかくありがたいですね。だからそこまで大橋さんに合わせてる意識はないんです。一応、2人で楽しく演奏できるようには意識してるかもしれませんが。

──大橋さんの音楽がCharmさんの中にもともと入っているということですかね。Charmさんが大橋さんの曲名を盛り込んで作詞した「Fragments」(2019年発表のアルバム「THUNDERBIRD」収録)という曲もありました。

Charm (笑)。あれは楽しかったです。

大橋 そういうことをやってくれるんですよ。愛がないとありえないじゃないですか、それって。

──歌声も、ときどきどっちがどっちかわからなくなるくらい溶け合っていますね。

Charm 僕もミックスするときに何度か「あれ?」ってなりました。

大橋 「どっちが今メインなの?」みたいな。一応、近付けて歌ってるからね、お互い。

Charm 「2人合わせてひとつの声」っていうのが、今回のアルバムのテーマでもある気がします。

──そのイメージというか、お手本のようなものはありましたか? カバーもされていますし、Simon & Garfunkelなのかな、と思ったりしますが。

大橋 Simon & Garfunkelはかなり大きいですね。ただ、僕が聴く限り、あの2人って奇跡のようなバランスで成り立ってる気がして、あれは彼らしかできないものだなと。だとすると、我々にしかできないことを純粋にやればいいのかなと思ったんです。

左からTHE CHARM PARK、大橋トリオ。

左からTHE CHARM PARK、大橋トリオ。

このアルバムは“ポップス”

──1曲ずつお話を伺っていきますが、冒頭の大橋さん作のインスト「16mm」からつかみはOKという感じですね。引き込まれました。これは音楽的にはなんと言えばいいんでしょう。ブルーグラスというか、ジャズというか。

大橋 まあ、いろいろ……になっちゃいましたかね。「16mm」に限らず、このアルバムは僕的には一応、何か1つのジャンルに絞るとしたらポップスなんですよ。そのうえでアコギ2本で何かやるってなったときに、トラディショナルっぽいことも、フォークソングみたいなのも……現時点で思いつくことはやったかなっていう。

──親しみやすいけれど実はオルタナティブなアルバムだと思うので、それを堂々と「ポップス」と言われるとちょっと感動しますね。

大橋 あえてJ-POPとは言わず。ポップスなんです。

──わかります。2曲目の「The Yonder」はCharmさん作詞作曲ですが、これもいい意味でジャンルを特定しにくい。

Charm ブルーグラスほどでもないけどトラディショナルな感じ……昔からよくある進行で、メロディは今どきの雰囲気で、歌詞は英語。そのバランスを取った感じですかね。最初にできたデモがこちらなんですよ。

大橋 これは文句なしだね。

Charm アコースティック、声2つということで縛りをかけた曲です。

大橋 男らしくね。ほかに混じりっけなし。

──しかもノーダビング。

Charm はい。それぞれ自分のアルバムでは音を重ねて全部1人で作り上げてるので、2人名義ではなるべくダビングをしたくなかったんです。

大橋 逆に自分のアルバムだったらこれはやらないよね。

Charm 今回、僕が作った曲は全部そうです。1人では無理っていう。

大橋 その中でも「Mr. Ghost」はCharmっぽい曲じゃない? アコースティックではあるけども。

Charm そうですね。「Mr. Ghost」も「The Yonder」と一緒にデモを出したんですよ。アメリカにはアコースティックギターを弾きながら2人で歌うスタイルで活動してるデュオが何組かいて、僕も好きなのでそのスタイルを取り入れつつ、自分たちなりに何ができるかを悩みながら作りました。

──次の大橋さん作曲の「キャンディ」の作詞は羊毛こと市川和則さんですね。「触れるギター重なったら 僕だけのオーケストラみたいさ」と、ユニットの性格を表す一節もあったりして、かわいらしい歌です。

Charm 素敵な歌詞ですよね。僕も好きです。

大橋 彼なりに僕たちのことを意識してくれたんでしょうね。なんのオーダーもしてないですけど。直してもらうときに「ちょっと歌詞を尖らせてくれないかな」みたいなことをちらっと言ったぐらいで。

Charm 2人のアルバムとは言いつつ、曲ごとに主導権を持つ人がいるんですよね。自分が書いた曲は自分がその世界観の責任を取るという。その意味でこの「キャンディ」と「KAAMOS」と「16mm」、あとカバーの「Bridge Over Troubled Water」は大橋さん主導で、大橋さんがイメージしてる形に近付けるようにがんばったので、ある意味ラクというか、身を任せた感じはあります。

──確かにどちらかが主題権を握ってどちらかがサポートする形の音になってますね。

Charm そのほうがやりやすいんですよ。

大橋 時間的な制約もありましたからね。「青春のリグレット」のアレンジは2人で「ああでもない、こうでもない」とやりましたけど。

Charm あと自分たちの楽曲のカバーは2人で時間をかけてやりました。