自分がどうしたいのかが一番大事
──ところで今回のオーディションでは、韓国でも募集を行うと聞いています。
面白い試みですよね。どんな人が来るんだろう?という楽しみもありますし、もし固い決意をもって日本へ来るのであれば、自分にヘルプできることがあったら支えてあげたい気持ちになりますよね。
──JUNEさんがそう言ってくださると、韓国からの応募者も心強いと思います。
同じ韓国人が所属している事務所のオーディションということで、もし安心してもらえるんだとしたらうれしいですね。ただ、自分はもう人生の半分以上を日本で暮らしているので、最近は韓国語を忘れつつあります(笑)。
──あははは。
たまにお母さんと電話すると言葉が出てこないときがあって、黙っちゃったりして(笑)。
──ちょっと一般化しづらい話かもしれませんが、日本人アーティストと韓国人アーティストの違いみたいなものを感じることはありますか?
1つ大きくあるなと思うのが、韓国のアイドル文化には厳格に確立されたやり方があるということですね。最低3年、普通は5年とかの長い時間をかけて合宿を行いながらメンバーたちが猛練習を日々繰り返す。最終的にデビューするのはその中の何人かだけになるので、本人たちは必死です。メンバー同士であっても競争なんですよ。それに対して日本では、才能ある人が本来持っているものを生かす意識が強いですね。才能を見つけたら、そのポテンシャルを生かしてどれだけ早くデビューさせるかということを考えます。そこが異なるのかなと思いますね。どちらのよさもあると思うんですけど。
──韓国に住んでいる韓国人の方でも、もしかしたら日本のやり方のほうが合っている人もいるかもしれませんよね。その場合、今回のように日本でオーディションを受けるという選択肢があるのはいいことだなと思います。
本当にそうですね。結局のところ、自分がどうしたいのかが一番大事です。その指針がしっかりしている人はちゃんと選べると思いますが、それを明確にする努力も必要です。そのためには常にイメージトレーニングをして、自分が目指すものはなんなのか、その解像度を上げていかなければいけません。本当にアーティストを目指すのであれば、その鍛錬は必要不可欠なものだと思いますね。
──オーディションへの応募を迷っている方がいたとしたら、JUNEさんはどんな声をかけて背中を押しますか?
さっきお話ししたことと重複してしまいますが、オーディションに落ちたとしてもそれは失敗ではなく、1つの過程に過ぎません。とにかくチャレンジしてほしいですね。少しでも「やってみようかな」という気持ちがあるのであれば、人の人生ってどう転がっていくか一切わからないものですし、また新たな自分を見つけられるかもしれません。仮にアーティストにはなれなかったとしても、チャレンジした経験は必ずその先の人生でものすごく大切な財産の1つになります。すぐにその経験が生きることはなかなかないと思いますが、いつか「あのときあれをやっておいてよかった」と思える日が必ず来ます。応募はタダですので、ぜひ挑戦してみてほしいなと思います。
──オーディションに落ちることが失敗ではないことを知れば、その場で泣かずにいられる自分を手に入れられるかもしれない。
それはもう、まさにおっしゃるとおりで。人は常に日々の中で数えきれない選択をしながら生きていますが、仮にその選択の1つを大きく間違えたとしても、それを“間違い”ではなく“改善のきっかけ”と捉えることで、プラスに変えることができます。それは間違いなく大きな経験になりますので、もし自分が今アーティストを目指す若者の立場だったら、このオーディションには間違いなくチャレンジしますね。
人生を生きていくうえでのステージ1
──素晴らしいアドバイスをありがとうございます。ちょっと余談っぽくはなりますが、もしJUNEさんが今回のオーディションに参加する立場になったとしたら、どういうアピールの仕方を考えますか?
そうですね……オーディション会場に行ったときに、ほかの参加者さんを注意深く観察するかもしれないです。どういう感じの方がいらっしゃるのか。自分はその中で目立たなければいけないわけですから。
──なるほど……!
例えば、歌のうまい人がたくさん集まっていたとしましょう。その場合、歌のスキルだけで勝負するのでは勝ち目が薄くなりますし、周りと同じアピールポイントで戦っても印象には残りません。そこで、歌以外のところで審査員の人たちに自分の印象を残せる何かがないかを考えますね。ちょっとふざけた感じの動きを取り入れてみようかな、とか。
──自分と同じ武器を持っている人が多いと判断したら、プラスアルファで「こいつは面白いぞ」と思わせるフックを何か加える。
そうです。あるいは、審査員の方がおそらく何人もいらっしゃると思うんですが、その中の1人にターゲットを絞ってアピールできる方法を考えるかもしれないです。審査員全員に響くパフォーマンスは難しくても、1人だけがすごく面白がってくれることならできるかもしれないですから。そうすれば、別の可能性が残ります。そのオーディション自体には落ちたとしても、その方が個人的に声をかけてくれるかもしれません。
──誰に向けて、なんのために、何を表現するのかを考えることが大事なんだと。確かに考えてみれば、それはアーティストになったあとも常にやり続けることですもんね。
おっしゃる通りですね。もちろん、普通にオーディションに受かってトントン拍子にデビューするというスムーズな流れが一番理想ではあるんですが、そこでアーティストになれたからといって成功するとは限りません。その先にも多くの関門が待ち受けていますが、オーディションはその第1関門として、人生を生きていくうえでのステージ1だと思って足を踏み入れてみるのも面白いんじゃないかなと思います。
SDR Presents 超アーティストオーディション 2025
超特急、DISH//、Vaundyなど、多彩なアーティストを輩出しているスターダストプロモーションの音楽レーベル・SDRによるオーディション。第4弾となる今回は歌手のみならず、作詞作曲などでアーティストを目指す人、その他音楽で将来を考える人、すべての人が対象となる。
グランプリ獲得者には賞金および今後の活躍を期待しての活動費として、300万円が贈呈される。さらに、デビューへ向けて、レーベルが育成契約を締結する。
募集期間
2025年7月17日(木)0:00~9月30日(火)23:59
審査
一次審査:10月初旬(書類審査)※選考通過者には10月初旬までに二次審査を案内予定
二次審査:10月中旬(オンライン)
最終審査:11月のいずれかの土日(東京都にて開催予定)
プロフィール
JUNE(ジューン)
1987年1月2日生まれ、韓国・ソウル出身。18歳のとき、デモテープが松尾潔の耳に留まり、2006年11月にソニーミュージックよりデビュー。アーティストとして活動する一方で、独自の音色選びやコーラスアレンジが話題を呼び、作曲およびプロデュースを手がけた黒木メイサ「Bad Girl」をきっかけにクリエイターとして注目を浴びる。2011年よりボーカルラップグループ・WAZZ UPのボーカルとして活動。グループの作詞作曲、プロデュースを行うと同時に、K、w-inds.、KEITA、山下智久、KG、U-KISS、Flower、傳田真央、伊藤千晃、Little Glee Monster、ONE N' ONLYなど数多くのアーティストへの楽曲提供、プロデュース、アレンジ、ボーカルディレクションなどを行う。2015年に韓国での兵役義務に就くため活動休止したのち、2017年6月にクリエイターとして再始動。嵐への作詞提供やGFRIENDの日本デビューアルバムへの日本語詞提供、TOMORROW X TOGETHERの日本デビュー作全曲のボーカルディレクションなど、活動の場をますます広げている。