音楽ナタリー Power Push - BURNOUT SYNDROMES
“リスナーの耳”で作り上げたメジャー1stフルアルバム
メンバーもインタビューで答えを知る
──「雨 雨 雨」とつぶやくようなパートのあとには、クラシックに乗せて歌うパートです。
熊谷 モデスト・ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」の中に入っている「プロムナード」ですね。
──この「プロムナード」も教会で観た景色から連想して組み合わせることにしたんですか?
熊谷 そうですね。「展覧会の絵」はすごく厳かな楽曲で、ムソルグスキーが亡くなった友人の遺作の展覧会を観たときの記憶を音楽にしたものなんです。組曲を締めくくる「キエフの大門」はその友人の魂が昇華されていくような曲なんですけど、この曲も教会のように鐘が「ゴーン」「ゴーン」って鳴って終わっていくんです。それがすごくホーリーなイメージに感じて。
──熊谷さんから曲が上がってくるとき、メンバー間で「これが元ネタなんだよ」みたいな話はするんですか?
廣瀬 しないですね。熊谷がほぼ作り上げたものを聴く感じで。
熊谷 そういうのは隠し要素として、気になった人がこういうインタビューとかを読んで知ってくれたらいいかなあと思ってるんです。メンバーもだいたいインタビューで答えを知るぐらいの感じだと思います(笑)。
廣瀬 インタビューが始まるまで知らないことがけっこう多いです(笑)。
──それが制作の仕方として合っているのでしょうか?
熊谷 そうですね。結局聴いてくださる人っていうのは隠し要素を知らないまま聴くので、メンバーみんなにそういう前提があると、凝り固まったフレーズになっちゃうと思うし。初めて聴く人に変に引っかかっちゃうと思うんです。何も言わずにメンバーにデモを投げて、フラットに曲を作り上げたいんです。
メロディに対する敬意がすごい
──「檸檬」というタイトルは後付けだとおっしゃってましたが、主人公の憂鬱な感情が表現されている歌詞が小説の内容と共通していますよね。そして主人公がイヤフォンを着けて、聞こえてきた音楽に救われるという描写がありますが、ここにはBURNOUT SYNDROMESからのリスナーへの思いが表現されているのでしょうか?
熊谷 まさにそうですね。この曲を書く際に、僕らが中学生、高校生の頃にどうやって音楽を聴いていたかを思い出したんです。僕の場合は中学1年生のときにバンドに誘われて、ほとんど音楽を聴くのと作り始めるのが一緒だったので、一般的なリスナーの聴き方とは最初からちょっと違うのかもしれないですけど。
──最初から楽曲がどうやって作られたかを考えたり?
熊谷 そうそう。そこから入ったので、差異はあるかもしれないんですけど、それを踏まえた上で、自分の中でより一般的な「みんなこう思うだろうな」ってものをかき集めたんです。何か嫌なことがあったときには、たぶん音楽を聴いて自分を慰めたんだろうなって。
──お二人は「檸檬」を聴いたときにどんなことを思いましたか?
廣瀬 この曲はさっき話に出ましたが「プロムナード」に乗せて歌う部分があって、曲自体も「プロムナード」と同じメロディを軸に展開していくんですね。中学生の頃はオープニングのところしか知らなかったので、全部同じメロディでいくっていう発想で昇華できるものなんだなと。「すごいところに挑戦しに行ったな、熊谷」っていう感じでしたね。
石川 このメロディに対する敬意がすごいよね。ちょこちょこ転調してて、それが曲を飽きさせない工夫なんだなって。あとクラシックには僕らがロックバンドだけを聴いていたのではとても追いつけないようなコード進行が組み込まれているので、制作時に勉強になりましたね。
リスナーの耳になること
──中学生の頃から構想があった「檸檬」を作り上げた率直な感想は?
熊谷 この曲の歌詞は、僕が中学生の頃だったら書けなかったと思うんですよ。当時は「何歌えばいいのかな」って思ってたし。今回わりと自然に歌詞が出てきたんですけど、曲に対してある種冷たく当たれるようになったっていうのがあると思います。
──冷たく当たる?
熊谷 この曲には僕の中にある教会の景色が反映されていますけど、昔だったらそこに意識を取られすぎちゃって、他人には伝わるはずがないのにそこの景色の描写に躍起になってしまっていたと思うんですね。でも今はそうでもなくて、どうせこれはやりすぎても伝わらないんだからインタビューで聞かれたときでいいやって。
──前まではすべてを曲に出したいっていう気持ちがあったんですか?
熊谷 そうです。今回はそうじゃなくて、フラットに、“リスナーの耳”にとっていいものを作るっていう感じで制作ができたと思います。僕の耳も“リスナーの耳”にもなれるようになってきたというか。
──なるほど。そうなれるようになったきっかけはありますか?
熊谷 「文學少女」からプロデューサーとして関わってくださってるいしわたり淳治さんをずっと見てるからだと思います。いしわたりさんは変に思い入れをしたり、凝り固まったりしないで聴くことができる、一番リスナーの耳を持っている方なんですよ。けっこう感覚的なところかもしれないんですけど、まずは聴いて、いいか悪いかを右脳で判断して、さらにじゃあなぜいいと思ったのか、悪いと思ったのかを今度は左脳で考えることができる人なんじゃないかなと。それを20年ほど繰り返してきたから、「なんでよくないのか」「ここのリズムがちょっとヨレてるからだ」みたいなところを瞬時に頭の中で処理することができるのかなって。第一線で活躍してきた方の能力なんだと思います。
廣瀬 本当にすごいよね。なぜこれがダメなのか、なんでこっちのがいいのかっていうところちゃんと論理的に説明して納得させてくれる。だから制作中にメンバーが同じ方向を向きやすいんですよね。バラバラにならない。
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- メジャー1stフルアルバム「檸檬」/ 2016年11月9日発売 / EPICレコードジャパン
- 「檸檬」
- 完全生産限定盤 [CD+グッズ] / 3500円 / ESCL-4735~6
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / ESCL-4732~3
- 通常盤 [CD] / 3000円 / ESCL-4734
CD収録曲
- 檸檬
- Bottle Ship Boys
- FLY HIGH!!
- アタシインソムニア
- エレベーターガール
- ナイトサイクリング
- 君は僕のRainbow
- 君のためのMusic
- ヒカリアレ
- 人工衛星
- エアギターガール
- タイムカプセルに青空を
- Sign
初回限定盤DVD収録内容
- 「FLY HIGH!!」ミュージックビデオ
- 「ヒカリアレ」ミュージックビデオ
※副音声にメンバーがMVを解説するオーディオコメンタリー付
- 最新シングル「ヒカリアレ」/ 2016年10月26日発売 / EPICレコードジャパン
- 初回限定盤 [CD+グッズ] / 1500円 / ESCL-4717~8
- 通常盤 [CD] / 1000円 / ESCL-4719
全国ワンマンツアー「ヒカリアレ~未来への祈りを合図に火蓋を切る~」
- 2016年11月11日(金)
- 愛知県 ell.FITS ALL
- 2016年11月13日(日)
- 宮城県 enn 3rd
- 2016年11月16日(水)
- 大阪県 梅田CLUB QUATTRO
- 2016年11月20日(日)
- 新潟県 CLUB RIVERST
- 2016年11月25日(金)
- 東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 2016年12月3日(土)
- 広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
- 2016年12月4日(日)
- 福岡県 Queblick
<料金>
前売り:3500円 / 当日:4000円(ドリンク代別)
BURNOUT SYNDROMES(バーンアウトシンドロームズ)
2005年に結成された熊谷和海(G, Vo)、石川大裕(B, Cho)、廣瀬拓哉(Dr, Cho)による関西在住の3人組ロックバンド。“青春文學ロックバンド”というキャッチコピーで活動しており、熊谷による日本語の美しさを大切にした文学的なリリックで支持を集める。2010年に開催された音楽コンテスト「閃光ライオット」では準グランプリを獲得。2012年に無料CD「リフレインはもう鳴らない」を全国各地のCDショップやライブハウスなどで1万枚配布する。2014年にはタワーレコード限定シングル「LOSTTIME」、初の全国流通アルバム「世界一美しい世界一美しい世界」をリリースし、2015年5月にいしわたり淳治プロデュースのもと2ndアルバム「文學少女」を発表。2016年3月にはテレビアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」第2クールのオープニングテーマを表題曲としたシングル「FLY HIGH!!」でEPICレコードジャパンからメジャーデビューを果たした。10月には「ハイキュー!! 烏野高校 VS 白鳥沢学園高校」のオープニングテーマ「ヒカリアレ」をシングルリリースし、11月にはメジャー1stフルアルバム「檸檬」を発売した。