ウォルターのタトゥーを入れちゃうアメリカ人

──影響と言えば、去年アメリカの「TIME」誌の“実世界に最も影響与えた架空の人物第1位”にウォルターが選ばれたんですよ。

マジか（笑）。

──アメリカ人は彼のどこに惹かれたと思いますか？

やっぱり“平凡な日常の裏にもう1つの顔が”っていうのに憧れるんだと思います。「俺もメスで一攫千金かあ？」みたいな。でも実際ウォルターの生活はストレスだらけなわけで、そういうのを観て「これはこれでしんどいよね……」って現実に帰っていくという（笑）。

──（笑）。

そういえば僕、InstagramでCRAZY TATOOってアカウントをフォローしてるんですけど、ウォルターのタトゥー入れちゃってるやつが意外に多くて。

──ドラマのキャラクターをタトゥーにするって、ちょっと考えられないですよね。

背中とかにでっかく入れちゃうからね。この軽さがアメリカ人っぽい（笑）。日本人は「半沢直樹」のタトゥーを背中に入れないもんね。

──かなり難易度高いですよ。

マリオとかもあるんですよ。「ちょっと入れちゃお」みたいな感覚なのかな？ 理解できないっすよ。でも、流行りにすぐ乗っちゃう感じがあるからこそ、「ブレイキング・バッド」がヒットしたという背景もあるのかもね。

──どういうことですか？

日本だと「ブレイキング・バッド」みたいな過激なものは「けしからん」ってなっちゃうけど、アメリカは「いいんじゃない、面白いんだし」って軽い感じで受け入れちゃうじゃないですか。「半沢直樹」が悪いとは思わないけど、やっぱり文化的な差を感じてしまいますよね。

莫大な予算が投入されたエンタテインメント作品

──アメリカ産の過激なエンタテインメント作品というとテレビゲーム「Grand Theft Auto」シリーズを思い出します。

わかる。ウォルターとジェシーがメス生成に足りない素材を盗むミッションとか、「Grand Theft Auto」（以下、「GTA」）にありそうだもん。あとメス生成のミッションとか。うまいタイミングで素材を入れないと失敗、みたいな（笑）。

──確かに（笑）。

あと「GTA」とかはすごく長い物語で、ストーリーが進行していく中で前半ではわからなかったことが徐々に明らかになっていくじゃないですか。「ブレイキング・バッド」もすごく長くて壮大なストーリーなのに、ちゃんと細部の辻褄が合っててしっかり作り込まれてる。こんなのかなりの予算がないと不可能ですよね。

──「ブレイキング・バッド」はもともと有料チャンネルAMCで制作されていたので、予算はかなり潤沢にあったようです。しかもSEASON3の後半からSEASON4あたりで人気に火がついたので、最終シーズンにはハリウッド映画以上の予算がかけられています。

なるほどね。確かにSEASON4で予想だにしない展開になりますからね。あれは練りに練られた脚本だと思います。僕、SEASON4が大好きなんですよ。なんか画質もきれいになった気がするし（笑）。

──それでもパイロット版として制作されたSEASON1の第1話ですら、日本で映画1本作れるくらいの予算感だそうですよ。

ということは、シリーズ後半なんてとんでもないことになってるってことですよね。ちょっと前だったら、映画が一番上でテレビドラマは下みたいな感じがあったけど、もうそういう感じじゃないんだな。しかも同じエンタテインメント作品として「GTA」とかとも勝負しなきゃいけないわけだから、生半可なものは作れないよね。