BiS「Hey boy hey girl」インタビュー|大切にしたい“今”を歌う (2/3)

1回のライブでいかに爪痕を残すか

──今年の夏に第3期BiSはデビュー3周年を迎えます。いろいろ大変なことがたくさんあったかと思いますが、活動を通して「変化していったこと」を挙げるとしたら、どんなことがありますか?

ネオ 個人的な変化が合わさって、BiSとして前よりよくなってるとすごく感じています。私は、以前だったら声が枯れても出し切るぞという気持ちで必死にやってた部分が強かったけど、今はチーム感を持って支え合えてる。前だったらモンちゃんに「ここの歌割、代わってくれる?」とか申し訳なくて言えなかったけど、その申し訳なさがただの決め付けで、相談したら快く「いいよ。むしろ歌いたい」とまで答えてくれた。だからメンバー同士、頼ってもいいんだなって。もしその気持ちが変わってなかったら、グループとしての今は違ったと思います。「BiSがよくなれば、それでいいんだ」と思えるようになった。信頼を積み重ねてきた感覚です。

イトー これからの話ですけど、モンバス(8月20、21日に香川県で開催される野外フェス「MONSTER baSH」)への出演が決まったこともあるし、目の前のお客さんは全部取り込みたいという意欲がより強くなりました。ロックフェスに出て、正直なところ自分たちはその雰囲気に飲まれたなと思うこともあるし、お客さんの手が挙がらないと感じることもあった。それはフェスに限らず、ツアーでも起こり得ることで、反省する機会は多いです。ロックフェスやイベントで、BiSを知らない人たちにどれだけ私たちの爪痕を残せるか、それが課題としてまだ残っています。

イトー・ムセンシティ部

イトー・ムセンシティ部

ネオ 「ARABAKI」も、岩手の宮古での「The Far East End ~Another Style Of Power Stock In Miyako~」も、私たちの出番のときに満員ということにはならなかったんです。ロックフェス以外のイベントのときはもっと集まるから、とても悔しかったけど、残念ながら納得できてしまった。「仕方ない」とは言えないけど、そんな自分たちが悔しい。でもほかのアーティストさんのライブを目の当たりにして、自分たちがまだまだだと実感できたのは収穫ですね。

イトー イベントで私たちのライブを初めて観てくれた人に「次は広い会場のワンマンライブで観たい」と思ってもらえるライブをするのは難しいことですね。ワンマンとイベントだと曲数も違うし。ある意味、BiSがまだまだ無名だという感覚もあったし、BiSのセールスポイントを自分たちで決めなきゃいけない。「必死さがいい」とか、それだけでも1回のライブで受け取ってもらえるのは大事なんですよね。

チャント ロックフェスでのパフォーマンスはすごく難しかったなって私も思いました。フェスに出るとほかのアーティストのライブを観れる機会が多くて、そこで思うのは、初めて観るアーティストのライブでいきなり手を挙げられるかと言ったら、自分はできないかもなって。だからライブ中にお客さんの手が挙がっていない状況にビビらず、自分たちのライブをいつも通りの熱量で届けられるようになれたらいいと思ってます。自分で自分の心を強く持って。

BiS

BiS

──駆け出しのロックバンドのような熱い思いを感じますね。

チャント 7月23日には北海道でLINDBERGさんと「霧フェス」の中のイベント(「SET YOU FREE IN KUSHIRO KIRI FESTIVAL」)で対バンするんです。LINDBERGさん目当てで待機している人も私たちのライブを観てくれると思うので、そのときこそ、もしアウェー感があっても飲み込まれないようにしたいです。自分たちを信じて。

今でしょ!

──ニューシングルのタイトル曲「Hey boy hey girl」は、SCRAMBLESの豊住サトシさんが作曲を担当していますが、BiSのシングルで表題曲を担当するのは今回が初めてですよね。豊住さんと言えば、「This is not a love song」「SPiLLED MiLK」の2曲をこれまで作曲していて、どちらもエモーショナルで高揚感の高まる曲が多かったですが、今回は底抜けに明るい曲調になっています。

ネオ クレジットを見て豊住さんなんだ!って驚きました。この曲は「今しかねえ!」みたいな内容を歌っています。

チャント この曲はまさに“今でしょ曲”ですね。“今”について強く歌っていて、「先のことを考えて不安になるくらいだったら、今に集中しなよ」と歌っています。私自身、先のことを考えて、起こってもいないことで不安になることがあるんですけど、「今でしょ!」とこの曲にビンタされた気持ちになりました(笑)。私みたいに先のことで不安になりがちだったり、優柔不断だったりする人に刺さる曲だろうなって。“今でしょ曲”と言いましたけど、実際に歌詞には「今」って単語が28回も出てくるんです(笑)。振り付けも“今でしょ!”な感じになってます。

イトー この曲で繰り返し「今」と歌うから、いろいろ今について考えてたんです。メンバーに共通してるのって、BiSに応募したタイミングなんですよね。今しかないと思った瞬間にメンバーオーディションに応募したんだなって。先の不安よりもその当時の「BiSになりたい」という気持ちを大事にしたからこそ、今に至っているし。勢いに任せて突っ走った“あのときの今”があるから、現実の今があるんだなって。

BiS

BiS

──ちなみにネオさんは歌詞の捉え方がほかのメンバーといつも違うケースが多かったですが、今回はどうでしょうか?

ネオ 私も、今は今しかないと思いながら生きていますし、歌詞を読んで「そんなこと、わかってるよ!」って思ったんですけど、やっぱり今を大切にするのって難しいです。なんだかんだBiSのこの先のこととかばっかり考えちゃう自分がいるし。だから改めてそういう状況が歌になると気が付くことも多い。今しかないから、今やることを楽しみたいと改めて思ったし、今を楽しんでやることが、結局その先の今にもつながるから。今を楽める人が一番幸せだし、そんな人を見ていたらこっちも幸せになる。それは「The Far East End ~Another Style Of Power Stock In Miyako~」で競演した柳家睦 & THE RAT BONESさんのライブを観て感じたことでもあります。

イトー すっごい元気が出た。

ネオ 睦さんのライブは、「今を楽しんでればいい!」と思わせてくれるし、そのくらい楽しそうにしていて、うらやましく感じるくらいでした。

ネオ・トゥリーズ

ネオ・トゥリーズ

イトー あの空間、踊らないと後悔しそうって空気感だったもんね。

ネオ やっちゃったもん勝ちというか。今、思い返してもすごく楽しかったし、今を楽しむというのは素敵なことだと実感できました。

──ちなみにこのシングルのジャケットは真っ黒ですが、熱に反応する仕様なんですね。

イトー サーモクロミック仕様で、35度以上でジャケットの写真が見えるようになります。全5パターンなので、何が見えるのか、いやらしい気持ちでドキドキしてくれたら(笑)。

チャント 何もしないと真っ黒のジャケットなので、逆にCDショップで目立つと思います。ジャケットの情報量がないから、店員さんが作るポップにも目が向きやすい感じがしますね。

ネオ 熱を与えるときは、ドライヤーでやるのがオススメです。

イトー 手でこすっても見えるんですけど、指紋を付けたくない人もいると思うので(笑)。