ナタリー PowerPush - amazarashi

言葉の力があなたを揺さぶる ミニアルバム「爆弾の作り方」

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2009年12月に、地元・青森限定で500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」をリリースしたamazarashiが、新作「爆弾の作り方」(今作も詩集付き)を完成させた。

このタイミングで多くの人が初めてamazarashiの表現に触れることになるかもしれない。というかそれ以前に、amazarashiって特徴的なアーティスト名だけど、いったい何者!? と思う人が大多数を占めると思う。では、その内情から説明していこう。amazarashiは青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンドである。以上。

……って、それだけ!? と多くのツッコミが聞こえてきそうだが、こちらにも情報はそれしかないのだ。写真さえもなく、資料には、インディーズ時代から一貫したエグい画風のてるてる坊主が描かれているのみ。しかし、そこに記された歌詞を、楽曲を聴きながらじっくりと読んでいると、なんだか情報なんていらない、ここにあるものだけで十分、そんな心境になってくるのだ。

それほどに、彼の書く歌詞の力と、それを立体的に広げる曲の力が合わさった今作の全6曲、さらに、曲名と同名ながら異なる内容で書かれた6編の詩が収められた詩集は、amazarashiのすべてを包括していると思う。言葉を書くことで自分を保とうとしているのか、あるいは、言葉を書かずにはいられないトラウマがあるのか、そんなことを想像してしまうくらい、情景が浮かぶ物語のように書かれている歌詞は、その行間にまで感情がにじんでいるのである。

また、アルバムタイトルからは過激な印象を受けるけれど、決して“怒”や“哀”に終始しているわけではなく、その世界からは郷愁、命、夢、恋愛、痛み、季節、戦争、時代など、さまざまなキーワードが浮かび上がってくる。そして、そのすべてに、私たちが自己を投影することができる、生々しさがあるのだ。

「傷つきやすい僕等が 身を守るための方法 / 僕は歌で 君はなにで?」(「爆弾の作り方」)

感じやすい人間ほど生きにくいこの世の中において、amazarashiは、その心を汚さずに生き抜こうとしているソルジャーのようだ。さらに、それを必死で伝えようとしているからこそ、シンプルでメロディアスな曲調を選んでいるように思えてならない。

いったいこの作品を生む人はどんなふうに生きてきて、どんな思想を抱えているんだろう。余計な情報はいらないから、ただ、実際に会ってみたい。きっと、この作品に触れた人は、誰もがそう思うはずだ。まずはぜひ、この、何かを感じざるを得ない表現に触れてほしい。

文/高橋美穂

ミニアルバム「爆弾の作り方」 / 2010年6月9日発売 / 1529円(税込) / Sony Music Associated Records / AICL-2128

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CD収録曲
  1. 夏を待っていました
  2. 無題
  3. 爆弾の作り方
  4. 夏、消息不明
  5. 隅田川
  6. カルマ
amazarashi(あまざらし)

青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を2009年12月9日にリリースした。