音楽ナタリー PowerPush - ASIAN KUNG-FU GENERATION

4人に立ち返ったアジカンが描く「Wonder Future」

ASIAN KUNG-FU GENERATION スタジオレコーディングライブレポート

ニューアルバム「Wonder Future」のリリースを記念し、5月8日にスタジオレコーディングライブを実施したASIAN KUNG-FU GENERATION。このライブではニューアルバムから「Standard / スタンダード」「Easter / 復活祭」「Little Lennon / 小さなレノン」「Planet of the Apes / 猿の惑星」の4曲が演奏され、ライブの模様はスペースシャワーTV「V.I.P. -ASIAN KUNG-FU GENERATION-」およびTOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」でオンエアされた。こちらのページでは、この貴重なスタジオライブの舞台裏をレポートする。

後藤正文(Photo by AZUSA TAKADA)

スタジオ入りしたメンバーはサウンドチェックの後、この日演奏する4曲を通しでリハーサル。真剣な表情でそれぞれの音を奏でる。リハーサルが一段落すると全員ブースからコントロールルームへ移動し、演奏した音源をプレイバックさせて確認する。「Standard / スタンダード」を聴いた伊地知潔(Dr)は曲が始まるや否や「遅いなー!(笑)」と苦笑い。イヤーモニターでクリック音を聴きながら演奏していた4人は、このことについてスタッフと話し合う。後藤正文(Vo, G)は「ジャスト(のテンポ)でやるのが目的じゃないんだけど、意思疎通の手段としてイヤモニを入れるかどうかなんだよね」と自身の意見を述べた。

ひとまず4人はブースに戻り、もう一度4曲を演奏する。徐々にひさしぶりのスタジオライブの感覚がつかめてきたのか、それぞれのプレイにリラックスした雰囲気が漂い始めた。喜多建介(G)や山田貴洋(B)は通常のライブさながらに身体を揺らして演奏。しかし「Standard / スタンダード」では、先ほどの反動なのか若干速めのテンポになってしまった。コントロールルームに戻ってきた伊地知は開口一番「すいませんでした!(笑)」と謝り、後藤は「イヤモニを使うと五感のうち四感を切っちゃうから嫌なんだよね。耳だけに頼っちゃう」と話す。結局クリック音は聴かずに演奏することになり、4人は「ちゃんとそれぞれの目を見て合わせていこう」と改めて確認し合った。

伊地知潔(Dr)(Photo by AZUSA TAKADA)喜多建介(G, Vo)(Photo by AZUSA TAKADA) 後藤正文(Photo by AZUSA TAKADA)山田貴洋(B, Vo)(Photo by AZUSA TAKADA)

いよいよレコーディング本番へ。ここでコントロールルームに長野県の高校生バンド、The daybreakerの4人が通された。このライブに10代のバンド1組を招待するという「SCHOOL OF LOCK!」の企画で当選した彼らは、緊張と興奮が入り混じった表情で“アジカン先生”の様子を見つめる。そして「じゃあ、リラックスしていきましょう」という後藤の言葉から1曲目「Standard / スタンダード」が始まる。続く「Easter / 復活祭」、さらに「Little Lennon / 小さなレノン」と、メンバー4人がお互いを見ながら的確に演奏を噛み合わせていく。ラストの「Planet of the Apes / 猿の惑星」では、それぞれエモーショナルなプレイを披露した。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONスタジオライブレコーディングの様子。(Photo by AZUSA TAKADA)ASIAN KUNG-FU GENERATIONスタジオライブレコーディングの様子。(Photo by AZUSA TAKADA)

ここで曲中に後藤が歌詞を間違えてしまった「Standard / スタンダード」をもう一度プレイ。最初よりも表情や動きから硬さが取れ、より楽曲の魅力が伝わる演奏となった。ここで演奏した音源を確認し、「Easter / 復活祭」「Little Lennon / 小さなレノン」「Planet of the Apes / 猿の惑星」を再度レコーディングすることが決定。先ほどつかんだ感覚を失わないためか、4人は曲が決まると即座にスタジオに戻り、演奏を再開する。各曲とも1回目から飛躍的に華やかさが増したプレイとなり、この2回の演奏でレコーディングは終了となった。

レコーディング終了後、スタジオ内で「SCHOOL OF LOCK!」によるアジカンとThe daybreakerの対談の収録が行われた。番組MCのとーやま校長の進行のもと、8人はこの日の感想や音楽に対する思いを語り合う。アジカンのスタジオレコーディングライブはこれまでに何度か行われているが、後藤はこの日のライブについて「基本的には無観客試合なんですよ(笑)。でも今日は初めて観客がいたから、緊張したな」と明かす。一方、いまだに緊張が取れない表情のThe daybreakerのメンバーたちは「これは現実なのか、って思いながら観てました」「すごい体験をさせてもらいました」とそれぞれの感動を語った。

The daybreakerと対談するASIAN KUNG-FU GENERATION。(Photo by AZUSA TAKADA)ASIAN KUNG-FU GENERATION(Photo by AZUSA TAKADA)後藤正文(Photo by AZUSA TAKADA)

対談の後半では、アジカンの楽曲をカバーしているThe daybreakerからアジカンメンバーへの質問タイムも。「オリジナル曲の作り方」という質問には、伊地知が「ギターリフを口で歌って、それを建ちゃん(喜多)に弾いてもらう」という“口作曲”の手法を明かしてThe daybreakerを驚かせた。ほかにも「コーラスの秘訣」「『リライト』の演奏のコツ」などの質問に、アジカンの4人は丁寧に答えていく。最後はThe daybreakerのメンバーたちの楽器にサインを入れ、“アジカン先生”による貴重な特別講義を終えた。

The daybreakerと対面するASIAN KUNG-FU GENERATION。(Photo by AZUSA TAKADA)ASIAN KUNG-FU GENERATIONとThe daybreaker。(Photo by AZUSA TAKADA)
ニューアルバム「Wonder Future」 / 2015年5月27日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / KSCL-2587~8
初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / KSCL-2587~8
通常盤 [CD] / 3146円 / KSCL-2589
アナログ盤 [アナログ] 3780円 / KSJL-6182
CD収録曲
  1. Easter / 復活祭
  2. Little Lennon / 小さなレノン
  3. Winner and Loser / 勝者と敗者
  4. Caterpillar / 芋虫
  5. Eternal Sunshine / 永遠の陽光
  6. Planet of the Apes / 猿の惑星
  7. Standard / スタンダード
  8. Wonder Future / ワンダーフューチャー
  9. Prisoner in a Frame / 額の中の囚人
  10. Signal on the Street / 街頭のシグナル
  11. Opera Glasses / オペラグラス
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「Easter / 復活祭」ミュージックビデオ
  • 「Standard / スタンダード」ミュージックビデオ
  • アルバム「Wonder Future」のレコーディングに密着したドキュメンタリー映像
スペースシャワーTV
「V.I.P. -ASIAN KUNG-FU GENERATION-」
2015年5月28日(木)21:00~22:00(再放送)
2015年6月6日(土)25:00~26:00(再放送)
2015年6月18日(木)24:00~25:00(再放送)
ASIAN KUNG-FU GENERATION
(アジアンカンフージェネレーション)

1996年に同じ大学に在籍していた後藤正文(Vo, G)、喜多建介(G, Vo)、山田貴洋(B, Vo)、伊地知潔(Dr)の4人で結成。渋谷、下北沢を中心にライブ活動を行い、エモーショナルでポップな旋律と重厚なギターサウンドで知名度を獲得する。2003年には、2002年にインディーズで発表したミニアルバム「崩壊アンプリファー」をキューンレコードから再リリースし、メジャーデビューを果たす。同年メジャー1stアルバム「君繋ファイブエム」を発表。2004年には2ndアルバム「ソルファ」でオリコン週間ランキング初登場1位を獲得し、初の日本武道館ワンマンライブを行った。

2010年には映画「ソラニン」の主題歌として書き下ろし曲「ソラニン」を提供し、大きな話題を呼んだ。2003年から自主企画によるイベント「NANO-MUGEN FES.」を開催。海外アーティストや若手の注目アーティストを招き、幅広いジャンルの音楽をファンに紹介する試みも積極的に行っている。2012年1月には初のベストアルバム「BEST HIT AKG」をリリースした。2013年9月にはメジャーデビュー10周年を記念して、横浜スタジアムで2DAYSライブを開催。2015年5月にロサンゼルスでレコーディングしたニューアルバム「Wonder Future」を発表した。