あいみょん「瞬間的シックスセンス」 PR

あいみょん|怒涛の1年を駆け抜けた“ひかりもの”

「失楽園」にインスパイアされた「二人だけの国」

──世間の期待値が高い中でリリースされる2ndフルアルバム「瞬間的シックスセンス」は、シングルやタイアップ曲に新曲を加えた12曲入りです。このアルバムのキーになる曲はどれなんでしょうか?

あいみょん

「二人だけの国」だと思います。書き下ろし曲が多い中で、この曲がアルバム全体のバランスを保ってくれたなと。アルバムの制作時期に映画「あした世界が終わるとしても」の主題歌や挿入歌、「めざましどようび」のテーマソング「プレゼント」の書き下ろしの依頼があったので、並行して作っていきました。普段は0から曲を作るんですけれど、タイアップは1つのテーマを与えていただくので、その1を100に近付けていく作業なんですよ。タイアップじゃないと生まれてこなかった曲がこのアルバムにはたくさん入っています。

──「二人だけの国」には「決定的瞬間の愛」や「染まりきった色水」といった、アルバムのタイトルやジャケットを想起させる「瞬間」「水」という言葉が入ったラインがあります。

確かに。あまりそこは気にしていなかったですね。この曲は映画「失楽園」にインスパイアされて作った曲なので、映画を観てから聴いてもらうとより深いところまでわかってもらえるかなと思います。最初の「運命共同体同士」という歌詞を思い付いたときにその言葉に音階を付けるのが難しかったんですよ。「運命共同体同士」という言葉を棒読みしていたらお経っぽいなと思って、「ナンマイダ ナンマイダ」と付けました。

──平坦なメロディだからこそ、Bメロ、サビに展開していく中で開放感があります。関口シンゴさんのアレンジも効いているなと思いました。

サビでは開ける感じにしたかったんですよね。こういう変な曲のアレンジを関口さんに頼むのが好きでお願いしました。「失楽園」がモチーフだという話をしつつ、私は音楽的な用語があまりわからないので、ジャキジャキになりすぎず柔らかい感じでって、ニュアンスでいろいろ伝えました。水面に波紋が広がるような感じの音が気に入っています。

──アレンジャーはいつもどうやって選んでいるんですか?

曲の雰囲気に合いそうな人を選んでお願いしていますね。

──「二人だけの国」はギターの演奏も含め関口さんにお任せしたんですね。そして続く「プレゼント」も関口さんがアレンジを担当しています。

同じ人がやったとはあまり思えない感じのアレンジになっています。続けて聴くと関口さんのすごさがわかりますよね。

あいみょん

“ひかりもの”だった2018年

──資料を見ると、「満月の夜なら Under the ful moon」、「ら、のはなし what if...」のように各楽曲タイトルに英語のタイトルが付いています。「ひかりもの」のところに「Raw Like Sushi」とありますが、この曲で歌われているのはお寿司の“ひかりもの”のことじゃないですよね?

そうなんですよ。何か意味があるらしいんですが、あんまりわかっていなくて……(笑)。

あいみょん

──「ひかりもの」はあいみょんさん自身のことを歌ったバラードですよね。アレンジは「マリーゴールド」のカップリング曲「あなたのために」も手がけたトオミヨウさんです。

トオミさんは激しいアレンジもいいんですけど、ホンマにバラード職人なんです。「ひかりもの」の音が上がってきたとき、泣きそうになりましたもん。初めてストリングスを取り入れた曲で、壮大なアレンジになりました。

──いつ頃書いた曲なんですか?

2018年の頭に書いた曲なんですけど、その頃はいろいろあって最悪な2018年の始まりだったんですよ。23年も生きていれば恋、仕事、生活、家族とかでいろいろ傷付いてきたし、もうだいたいのことは大丈夫だと思っていたんです。それなのに2018年の初めにすごいしょうもないことで傷付いて泣いちゃって、まだまだ傷付くことってあるんやなって思い知って。あと私が2018年の自分自身を「ひかりもの」と呼んでいたんですよ。

──というのは?

会う人会う人に「あいみょんすごいじゃん、どこに行っても名前をみるよ」と言われるたびに、感謝の気持ちはありつつ「いやいや、今だけなんで」って言ってたんです。ホンマに口癖でした。調子に乗りたくなかったので、そういうところで自分を制御しないと暴走しそうと思って。

──あいみょんさんはこれまでのインタビューや歌詞でもかなり達観していると言うか、ネガティブなイメージがあまりないのでこういう歌詞の曲が出てくるのは意外でした。

本当にだいたいのことで傷付いてきたと思ってましたからね。私はヘコんだから曲を書くタイプじゃないんですけど、このときはめずらしくヘコみまくって曲を書いたんですよ。そういうことがあって、恋も仕事も生活も家族も学生の頃は現実から引き離したかったはずなのに、今となってはなんとしてでも引き止めたいと思うものになったんです。

──そういうことをファンクラブ会員向けの日記に書いていましたよね。「変な声だ、変な顔だ、変な歌詞だ、変なコードの押さえ方だ、変な名前だ。いろんな事を言われてきました。多分これからも」と。その中にあった「この身長も、髪質も、足のサイズも、どこか家族に似ていると思うと儚い身体です」という言葉がすごく印象的だったので覚えています。

いろんなことを言われても、今は傷付いている暇もないですしね。実家に帰って前髪を上げた妹のおでこを見たら私とそっくりで、すごく愛おしくてつなぎとめたいと思ったんですよ。この天然パーマはきっとお母さん譲りで、妹と私はおでこが似ていて、弟とは目が似てる。妹とお姉ちゃんとは声が似てる。音楽が好きなのはお父さん譲り。私の体のほとんどが家族でできていると知って、ホンマに自分のことを大切にしようと思ったんです。自分が表に出れば出るほどそれを強く思うようになって。お正月に実家に帰ったら今まで本名で呼んでいた親戚たちから「あいみょん」って呼ばれて花束と寄せ書きの色紙を渡されて、なんかすごく悲しくなっちゃったんですよね。メディアに出て顔が世の中に知られれば知られるほど、近かったはずのみんなが他人になっていく気がして怖くなりました。そんな中で一番近い私の家族は今までと何も変わらずに接してくれて。

──そんなことがあったんですか。

でもそれってみんなが変わっちゃったんじゃなくて、私が勝手に変わったんですよ。だからみんなの対応も変わったというだけ。でもお父さんから、私がこうならんかったらこんなに親戚が集まることはなかったからって感謝されて、家族のためになれたならまあよかったかなと思いました。

あいみょん

andymoriへのリスペクトを込めて

──曲の話に戻りますが、「恋をしたから」はストレートに歌が聞こえる弾き語りベースのアレンジですね。

あいみょん

私のパートは弾き語りで一発撮りで、まったく直してないです。その上からフルートとかを乗せてもらいました。この曲は弾き語りにしたかったんですけど、せっかくのアルバムなのでそれが生きるアレンジにしてもらいました。

──歌詞にはあいみょんさんの恋愛観がつづられています。

私の恋愛観というか、これは恋愛が人間に与える影響のすごさを考えて書いた歌詞なんですよ。私は太宰治がすごく好きで、「人間は、恋と革命のために生まれてきたのだ」(「斜陽」の一節)という格言めいた言葉に「まさにそうやな」と感銘を受けたんです。人間を「恋」という文字で表現してもいいぐらいだなと思ったんですよ。だって恋がないと人類は生まれないし、恋愛って生きることにも死ぬことにもつながっているんじゃないかと。恋愛をするとものの見方が変わったりするじゃないですか。むしろ恋すらも一個人にとっては革命なんです。サビの「恋をしたから空が綺麗と思えた 恋をしたから明日が大好きだった」「恋をしたから空が寂しく思えた 恋をしたから明日が少し怖かった」という歌詞がまさにそれを表現していて。恋愛すると心も体も変化していく。人間を進化させる偉大なものだなということを歌詞にしました。

──「夢追いベンガル」はジャキジャキしたアコギサウンドと男気あふれる歌詞の楽曲です。タイトルもそうですけど、サウンドや歌詞からも「ベンガルトラとウィスキー」を歌うあのバンドへのリスペクトを感じました。

そうそう(笑)。andymoriです。この曲、菅田くんが「めちゃめちゃカッコいいやん」って褒めてくれました。菅田くんもandymoriがすごく好きで一緒に小山田壮平さんの弾き語りを観に行ったりもしていて。これは完全に小山田壮平さんへのリスペクトを込めています。

──あいみょんさんが「平成うまれのカリスマが溢れる世の中についてけない」と歌うのがまたいいなと思ったんですよ。

インタビューとかで「あなたも平成生まれのカリスマじゃない?」って言われるんですけど、私は違うんですよね。そもそもこの曲の主人公は自分じゃないし。私はSex Pistolsじゃなくて、キリンジの「エイリアンズ」をめざましにして、ぬるっと起きるので(笑)。

──このアレンジもトオミさんですね。

トオミさんのこういうアレンジが大好きなんですよ。ひゅーいさんの曲のアレンジもやっていて、バラードもいいんですけどちょっとガチャガチャっとしたワーッという曲のアレンジがいいなと思っていたので、「ベンガル」は最初からトオミさんにお願いしたかったんです。