AI|今この世界で掲げる、ずっと歌い続けてきた“ラブ&ピース”

昨年7月にデビュー20周年記念の第1弾作品として「IT'S ALL ME - Vol.1」を発表したAIが、それに続く第2弾作品「IT'S ALL ME - Vol.2」を2月24日にリリースした。本作にはAwichを迎えたリミックスも話題となった「Not So Different」や、がんを治せる病気にするプロジェクト「deleteC」とコラボした「HOPE」といった先行配信楽曲をはじめ、ジャスティン・ビーバーやエミネムの楽曲を手がけるバーナード “ハーヴ” ハーヴィーや、クリス・ブラウン、タイ・ダラー・サインの楽曲プロデュースを行うBlaq Tuxedoといった海外プロデューサーを起用した力作が並んでいる。

そもそもこの「IT'S ALL ME」シリーズはどのような思いからスタートしたのか? 昨年から続くコロナ禍をAIはどう受け止めているのか? 楽曲に込められたメッセージを紐解きながら、次に向けた展望も語ってもらった。

取材・文 / 猪又孝 撮影 / 斎藤大嗣

どれもこれも自分

──今回のミニアルバムシリーズを構想し始めたのはいつ頃なんですか?

2019年の夏にいろんな曲を作ろうと思ってLAに行ったんです。「感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW &BEST」(2019年発売のベストアルバム)でゴスペルアレンジをやったので、それとは別のことをやりたいなという思いもあったし、今回は全曲のメッセージをそろえたくて。「今一番言いたいことはなんだろう?」と考えたときに、平和に向けたことを伝えたいと思ったんです。みんな仲よくなってほしいなという。

AI

──「音楽で、世界をもっと良くしよう。」というデビュー20周年イヤーのテーマにもつながりますね。

もともとは去年東京オリンピックもあるはずだったから、そういうメッセージがいいだろうと。自分も誰かと会ったときに、人種が違ったり、言葉が違ったりするけど、仲よくなりたいし、オリンピックで日本に来た人が「日本、最高だった!」と思って帰ってほしいなとか、そういうことをメッセージとして伝えられたらなと思って作り始めたんです。

──「IT'S ALL ME」というタイトルにはどんな思いを込めたんですか?

曲調が全部違うし、タイトルは悩んだけど、どの曲も自分なんですよ。だから、“どれもこれも自分”という意味で付けました。あと、これを受け取った人に向けたメッセージにもなるなと思って。人それぞれ、いろいろ個性があるし、例えばありのままの自分を見せることが恥ずかしいと思ってる人でも、それがあなたなんだからということを伝えたくて、このタイトルにしました。

──当初から2枚に分けてリリースするプランだったんですか?

曲をいっぱい作りすぎちゃって(笑)。作るとなると、ぶわーっと作っちゃうんですよね。自分としては全部気持ちを込めて作ってるから全部聴いてもらいたいんだけど、1枚にたくさんの曲を入れると、なかなか全部を集中して聴けないんじゃないかって。「だったら、小分けにして出していったほうがいいんじゃない?」ってスタッフに言われて、分けることにしたんです。

──「Vol.1」のリリース時点で、「Vol.2」の楽曲もあったんですか?

ありました。なので、バランスを見て2枚に分けて。「Vol.1」は、CMや映画で流れるとか、タイアップ先行で曲を決めていきました。あとは、いろんな国のアーティストをフィーチャーしたいという気持ちもあったんです。本当はオリンピックに向けて5大陸の人たちとやりたくて。私と一緒に海外アーティストにもメッセージを言ってもらうというのが大事だと思ったから、ジェン・モレルやジョエリイ、MJ116とコラボした曲も入れたんです。

──「Vol.1」は、壮大な景色が目の前に広がるようなゆったりした楽曲が中心で、豊かな包容力を感じる1枚でした。それに比べて「Vol.2」は、アグレッシブでエッジィな印象があるし、ヒップホップ / R&B色が強いと思いました。

そうかもしれない。もともとヒップホップ / R&Bが好きだから、何も考えないで作っちゃうと自然とこうなるんです。「Vol.2」はけっこう、自分の趣味を押し出した曲が多いですね。ひさしぶりにラップみたいな歌い方もやってるし。

──「JUMP」や「Expectations」ですね。特に「Expectations」は、USの最新トレンドを取り入れていて、全編英語詞だし、海外のラジオでかかっていても遜色がない感じだなと思いました。

ありがとうございます。たまには最近っぽいのもやっておかないと、と思って。「Expectations」は私も大好きで、作るときもすごく楽しかったです。レコーディングでも、オートチューンがかかってるから、好きなように、ちょっと下手に歌っても大丈夫という(笑)。ただ、ライブになると、私は生の音が多くてオートチューンを使わないから、そこがちょっと面倒くさそうだなって思ってます(笑)。

2つの煙

──今回の2作品のアートディレクションは、とんだ林蘭さんが手がけています。AIさんからのラブコールでコラボが実現したそうですね。

「IT'S ALL ME - Vol.1」ジャケット
「IT'S ALL ME - Vol.2」ジャケット

最初に会ったときからファンになっちゃったんです。今回、シリーズで出すことは決まっていたから、2作品にどこかで共通点とか連動性を持たせてほしいということだけ伝えました。

──2作品に共通して描かれている、このフワフワした綿菓子のようなものは、何のメタファーなんですか?

「Vol.1」のほうは、「子供とかAIちゃんの愛とか、そういうものを抱きしめてるイメージ」と彼女が言ってました。そういうものって形が変わったり、つかめなかったりするからって。このフワフワしたやつは白い煙を撮影して、あとから色付けしてるんです。私の腕の下から煙をパフッと出して、煙がいい形になったものを使ってる。アイデアはもちろん、作り方も面白いなと思いました。

──「Vol.2」のほうは?

Vol.2の方はもっと面白くて、透明のマネキンを置いて、その中に煙をパフッと出してるんです。そうすると煙が何となく人の顔の形になるという。私はずっとキスするようなポーズをしているだけ(笑)。

──「Vol.1」には優しさや母性を感じましたし、「Vol.2」のほうには強さや艶っぽさを感じました。

たぶん収録されている音楽の雰囲気から彼女が何かを感じ取ってくれたんだと思います。今回は洋服やヘアメイクも彼女がアイデアを出してくれたので、全部お任せで作りました。自分がこうなればいいなと思うものがどんぴしゃで上がってきて、最高でした。

世界中の人たちが仲よくなってほしい

──「Vol.2」からの先行配信第1弾シングル「Not So Different」は、西海岸ヒップホップをけん引してきたレジェンド級のプロデューサー、スコット・ストーチとのコラボになりました。「Not So Different」のイントロは、彼が手がけたドクター・ドレーのクラシック「Still DRE」を彷彿させますね。

そこは彼のシグネチャーサウンドだから。彼のプライベートスタジオにお邪魔してセッションして作ったんですけど、ピアノの前に座ったらあれを弾き出して。「チャンチャンチャンチャン♪」って。でも、曲を作る前に、今回私が届けたいメッセージを彼に念押ししておきたかったから、それを言うのに緊張したけどね。どっちかというとドラッグ、お金、パーティとか、そういうテーマのほうがカッコいいと思ってるのかな?と思って。そういう人に「世界をよくしたいんです」と言っても、「きれいごと言いやがって」と思われるんじゃないかって。ヒップホップな人たちに「そういう曲にしたいんです」ということは勇気が要るわけよ(笑)。でも、そういう世界的なプロデューサーがやるからこそ説得力がある曲ができるとも思ったから、そこはちゃんと言わないと、と。

──今回のミニアルバムは、メッセージの統一性を目的にしているわけですし。

そう。そしたらスコットさんはすごくいい人で。いつもサングラスをかけてて、なかなか目を合わせないシャイな人だったんだけど、サングラスの奥をのぞいたらすごくかわいらしい目をしてたんです(笑)。彼にはきれいな気持ちが絶対あると思ったし、私が曲で伝えたいことを話したら快く受けてくれて。それがまた、スコットさんがピアノを弾くときれいなコードが出てくるんですよ、Bメロのところみたいな。「ああ、もう最高!」と思って。スコットさんが弾くコードを聴きながら、もう1人のライターのアヴェドンと一緒にメロディをその場で作っていったんです。

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──「Not So Different」の歌詞はどんな思いから書いたんですか?

世界中の人たちが仲よくなってほしいなというのが一番。みんなそんなに変わらないんだから、話し合えばわかるよということかな。そんな闘わなくても、人を刺さなくても、戦争しなくても、話し合えばわかるよと言いたくて。

──ミネアポリスでの事件を機としたBlack Lives Matter運動の拡大を受けて書いたようにも受け取れる歌詞ですが、話を聞いていると、その前の2019年にこの曲を書いてるんですよね。

そうなんです。作ったときは、この曲を「Vol.2」に入れると決まってなかったし、たくさんある曲の中の1つだったんです。そんなときにBLM運動が拡大して、「今、これを出そう」ということになったんです。私はいつもこういうメッセージを発信していきたいんだけど、タイミングが合わないと曲が出せないことが多いんですよ。でも、今回はコロナウイルス、BLM運動があって、みんな自分のことのようにメッセージを受け止めやすくなるから、やっとそういう歌詞が認められたという。それがうれしかったですね。