AI×PUSHIM×DABO|同世代の3人が語る「今」と「これから」

AIがデビュー当初からクラブシーンでともに過ごした仲間であるPUSHIMとDABOを迎えた新曲「Untitled feat. PUSHIM, DABO」を配信リリースした。

この曲はAIの最新シングル曲「ワレバ」をベースにしつつ、2003年に発表されたPUSHIM feat. DABO「I Wanna Know You(J.J remix)」リテイクした音源をマッシュアップ。3人の声が甘く胸に響く大人のサマーラブソングとなっている。

音楽ナタリーでは、この曲のミュージックビデオの撮影現場で3人にインタビュー。楽曲の制作経緯や込めた思いなどに加えて、今の音楽シーンについて3人が思うことや制作を続けていく秘訣などについても話を聞いた。

取材・文 / 渡辺志保撮影 / 西村満

なぜ最新曲と21年前の曲を合体させたのか

──なぜ2003年に発表された「I Wanna Know You(J.J Remix)」を今よみがえらせようと思ったのでしょうか?

AI まず、何年経っても「I wanna know you~」というフレーズが頭から離れなくて。自分の「ワレバ」という曲をリミックスしようという話が上がったときに、「ただリミックスするだけじゃあね」となり、「何かと合体させたら面白いんじゃない!?」という流れになったんです。だったら、あの「I Wanna Know You(J.J Remix)」と合体させようかな、と思って。

左からPUSHIM、AI、DABO。

左からPUSHIM、AI、DABO。

DABO この2曲を混ぜることはAIが考えたの? PUSHIMの声をここに入れて、こういう構成にして……っていうのは。

AI そうですね。

DABO うまいこと作ったね! 自然だし。

AI 2人の声が入ってくれれば、もう勝ちだ!と思ってました。

PUSHIM 私も自分で聴いて、AIの「ワレバ」とこんなにマッチするなんて、って。

DABO びっくりしたよね。

PUSHIM やっぱり、感慨深いですね。歌っている3人もそうなんですけど、今日の撮影スタッフの中にも、当時と同じメンバーもいる。楽曲自体は21年前の曲なんですけど、こうしてずーっと変わらず集まれることがうれしいですね。

DABO そもそも、俺も「I Wanna Know You」にはオリジナルじゃなくてリミックスバージョンに参加しているじゃない。これはいろんなところで話しているエピソードでもあるんだけど、昔、渋谷のHARLEMでレゲエのイベントをやっていて、そこに遊びに行ったらPUSHIMがいて。そこで「I Wanna Know You」が好きすぎて、「オケはあのままでいいから俺にラップをさせてくれ」ってお願いしたんです。

PUSHIM そのときのこと、すっごい覚えてますよ。HARLEMの中2階のところだよね?

DABO そう。だからナンパみたいな形で「PUSHIMをゲットした!」と思ってた。でも、21年経って、今度はAIが「I Wanna Know You」をナンパしに行ったような感じがあって。

PUSHIM ホント、愛されてる曲だなあってすごく思いますね。だから、あの曲を作ってよかったなあ、と。

DABO ますます原曲が尊いなあって思うよね。

PUSHIM 21年前の曲なんですけど、今も自分のライブではオリジナルバージョンもよく歌ってますし、リアルタイムで「I Wanna Know You」を聴いたことがなかった若い世代の子も、AIの「Untitled」を通じて原曲のほうも好きになってもらえたらうれしいです。

左からPUSHIM、AI、DABO。

左からPUSHIM、AI、DABO。

左からPUSHIM、AI、DABO。

左からPUSHIM、AI、DABO。

ずっと残る曲や歌を聴いていたい

──21年前と比べると、さらに大きく国内のヒップホップやレゲエのシーンが盛り上がっています。それぞれ、下の世代のアーティストと共演することも多いと思うのですが、どのように見ていらっしゃいますか。

AI 今の若い世代のアーティストは、すごく素直ですよね。昔のお兄さんお姉さんと全然違うんですよ。昔のお兄さんたちは本当に厳しかった……(笑)。わかるでしょ?

DABO (笑)。

AI 今の子たちは、ライブが終わったら「じゃあ、また」っていう感じで帰る。さっぱりしていて、みんな、自分のやることをやってる感じ。

DABO いかに昔の人間のクセが強かったか、ということを感じるよね。「そこ、全然ダメ」みたいな感じで入ってくる人もいたし。

PUSHIM そういう話を聞いて「それ、言いたいだけちゃうん?」って思うこともあったし。今の子はもっと真面目というかね。

AI 一方で、そのクセの強い世代の方々はパワーがあったんですよね。もちろん、若い子たちの中にもいろいろいるけど、流行りとともに歌って、流行りとともにいなくなる人もいる。そうじゃなくて、本当の感動やときめきを持ってずっと(音楽を)やってほしいなと思うときもある。「I Wanna Know You」は何年経っても最高だし、DABOのフロウもカッコいい。こういうずっと残る曲や歌を聴いていたい、と感じることはありますね。

AI

AI

DABO 俺にとって、今のヒップホップの盛り上がりは、まったく違う宇宙のことという気もしていて。俺も子供がちっちゃいから、もうそんなにクラブも行っていないし、ストリートにも街にもいない。どこにいるかというと、デスクの前にいる。今のフェスに出ているような若いラッパーにも、もちろん知ってるやつもいるけど、彼らとは違う感覚でやっているという自負もある。ヒップホップの“ナンバーワン決定戦ゲーム”からは俺は降りてるんだよね。「今、誰が一番ホットなのか? 誰が金を持ってるのか?」という場所からは10年以上前に降りちゃって。それよりは、さっきのAIの話にも通じるけど「何年やれんの?」ってことのほうにフォーカスしてる。ラッパーとして、替えの効かない存在になりたい。数字やキャパの話じゃなく、ずっと活動し続けているRHYMESTERとかBOSSくん(ILL-BOSSTINO)みたいに俺もなりたい。もちろん、今のシーンに対してネガティブな気持ちはないし、若い子たちのこともすごく応援してる。あと、単純に「ラップうま!」って思うね。