ナタリー PowerPush - agraph
石野卓球の秘蔵っ子が紡ぎ出す 優しいエレクトリックミュージック
飲み屋で怖い先輩に変なあだ名をつけられる
——ところで名前の由来を教えてもらえますか?
視覚的要素はいろんなことを思い出すアイコンになるから、ユニット名には「グラフィック」って言葉を入れたいなと、いくつか候補になるものを作ったんです。でも卓球さんにその名前を話したら「それはないわぁ~!」って爆笑されちゃって。ちょうどInKの作業をやってたところだったので「今から川辺ヒロシと飲み行くから、そこで一緒に名前考えてやるよ」って言ってくれたんです。でも行ってみたら2人がべろんべろんに酔っ払ってて(笑)。そんなの嫌じゃないですか。怖い先輩に変なあだ名つけられる気分ですよ(笑)。で、そこで2人が「グラフィックじゃなくてグラフって言い方にすれば、数学のグラフって意味にも取れるじゃん? 理系っぽくてテクニカルなことばっか言ってる頭でっかちなお前にはピッタリだから、グラフって言葉を絡めて考えようよ」「じゃあ何グラフか、グラフ何か、だよね?」「あ! ナニグラフでいいじゃん!」「ナニグラフ、1stアルバム『What is Graphic?』でいいじゃん! 決定!」って。
——(笑)。
翌日の作業のときに「あのー、昨日言っていただいたので、ナニグラフっていう名前にしようと思うんですよ」って言ったら。2人とも「へ? 何それ?」って表情で。えーーーーっ!!? て感じですよ。それで前の晩のことを説明して、この名前に決めましたからって言ったら「ふーん、そうなんだあ」って(笑)。
——ひどい(笑)。でも「GATHERING TRAXX VOL.1」の曲はkensuke ushio名義でしたよね。
そのコンピでのアーティスト名を決めるしめ切りの日に、ドイツに行ってた卓球さんから「ナニグラフヤバイ! kensuke ushioにすべき!」ってメールが入ってきて(笑)。えーっ!? と思いつつ、スタッフさんに「kensuke ushioでお願いします!!」って電話したら、「牛尾君、ギリギリオッケー!」って言われて。
——それはよかった(笑)。
でもデビューするにあたってやっぱりなんかユニット名決めたいなと思って、2人の言っていた「頭でっかちのグラフ」っていう話からagraphに決めたんです。「a」っていうのを単語の頭につけると、「ひとつのグラフ」とも読めるし、「Go ahead」みたいに接頭語として読んでもちょっとポジティブな意味があるし。あと名前をつけた後で知った話で、スペルはたぶん違うと思うんですけどピアノの部品に「アグラフ」っていうのがあるそうなんです。特殊なピアノに使われてる弦押さえで、音程をとても安定させるらしいんですけど。もともとピアノがルーツなので僕にピッタリかなって思って。
いつかはタレ目のサングラスをつけてジゴロっぽくなります
——これからagraphとしてどんな活動をしていきたいと思っていますか?
アルバムを1枚作りましたがまだまだやりたいことはいっぱいありますし、新しいことに挑戦していけたらなあと。
——昔やってたというエレディスコやイタロディスコはもうやらないんですか?
いいですねえ。上品なアルバムを作り終わったら、その反動で今ものすごく下品なことをやりたくなってて(笑)。ベースがオクターブで♪ンベンベンベって鳴ってるようなの作りたいんですけど、でもメジャーでイタロって大丈夫なんですかねえ(笑)。相当イナタいっすよ?
——でも電気グルーヴの「YELLOW」はちょっとそういうイタロ的なイナタさがありますよね。意外といけるのでは?
あのアルバムに「Fake It!」っていう曲があるんですけど、もともとこれはInKの1stアルバム「C-46」を作ってるときに、川辺さんが帰ったあとで卓球さんに「ちょっとイタロを一緒に作りませんか?」って言って、2人で朝方に作った曲だったんですよ。でも卓球さんに「そんなんじゃダメだよ!」「もう、お前ってやつは!」とか言われつつ作ってたら、結局卓球さんが入れた音しか残らなくて(笑)。それが後に進化して「Fake It!」になったという。
——あの曲は牛尾さんのイタロ好きから生まれたんですか(笑)。
僕はもうホントにジョルジオ・モロダーとか大好きなので、いつかはああいう曲をやりたいんです。とは言え、同じagraphって名前で次の作品がいきなりそれだと今回のアルバムとはあまりに方向性が違うし、頭のおかしい人みたいですよね(笑)。とりあえずこれからは1stアルバムの発展形となるものを作っていきつつ、少しずついろんなことができたらなあと思ってます。いずれ僕がイタロのCDを出すことになったらタレ目のサングラスをつけてジゴロっぽく登場するので、そのときはよろしくお願いします(笑)。
CD収録曲
- gray, even
- in gold
- and others
- quietude
- ohma
- still in there
- one and three lights
- turn down
- cyanback
プロフィール
agraph(あぐらふ)
牛尾憲輔のソロユニット。2003年よりテクニカル・エンジニアとして石野卓球、電気グルーヴ、RYUKYUDISKO、DISCO TWINSの音源制作やライブをサポート。2007年に石野卓球主宰レーベル・platikから発表されたコンピレーションアルバム「GATHERING TRAXX VOL.1」にkensuke ushio名義で参加。agraphとしては2008年12月3日リリースのアルバム「a day, phases」が初の作品となる。