オグリキャップが負ける場面から生まれたフレーズ
──曲作りはどのように進めていきましたか?
TAKUMA 先方さんから「スピード感のある曲だとうれしいかも」みたいなオーダーはあったんですけど、なるべく抽象的に言ってくれて。「イメージはありますけど、なるべく好きなようによりいい音楽作りをしてください」って思ってはるような、愛を感じるお題でした。だから、「僕らが今一番カッコいいと思う音楽がこれです」というものができたら、それをお渡しすることが、この作品に対してやるべきことなんじゃないかなと。
──何が曲作りの取っかかりになりましたか?
TAKUMA やっぱり、スピード感を感じられる部分は入れたいなと思いました。あとは、ウマ娘の走るときや走る直前の気持ち、そこに向けて練習している日々の心の中を描きたいという気持ちが、今思えばあったんちゃうかなと思います。
──「今思えば」なんですね。それを書こうと思って作っていたわけではなく。
TAKUMA 集中しているときの模様みたいなんが描けたらええなとは思っていたけど、作っていく中で、自分がスポーツをやっていたときの気持ちも思い出して、どんどんそういう曲になっていったのかなと思います。自分がやっていたのはアーチェリーやったんですけど、練習以上の結果が出せたことが一度もなかったんです。自己新記録はいつも練習だった。だからオリンピックとかで自己新記録を出している人を見ると「なんやねん、この人」って思うんですよ。練習のときは指先にも脳があるくらいに集中してできていたのに、本番になったら、ふわふわしてもうて、震えて全然できないというのが普通やったから、本番で結果が出せる人ってどんな世界におんねやって。そういうものが描きたいなって、制作しながら、どんどんそういう気持ちになっていきました。
──制作は今回も、TAKUMAさんがデモを作って、お二人に展開して詰めていくという形で?
TAKUMA そうですね。骨組みたいなのを作って、2人に共有して。
──NAOKIさん、KOUICHIさんはその骨組を受け取ったときにどう感じましたか?
KOUICHI 「疾走感のある感じやな」って思いました。ドラムに関しては、TAKUMAの思っているリズムで一度録りつつ、いろんなパターンを叩いて、どれがハマるか探していきました。
──サビがシャッフルのリズムになっているのが、効いていますよね。
TAKUMA それ、KOUICHI案です。もともとは普通の8ビートになる予定で、最初に「このリズムにしたい」「もしかしたらこっちのほうがスピード感が出るかも」って言われたときは「めちゃくちゃなこと言うな、この人は」って思ったんですけど(笑)、だんだん「あのリズムよかったな」と思えてきて、結局あれになりました。
NAOKI そっか。今の話を聞いて思い出したけど、途中でドラムのリズムが変わったってことやもんな。最初、TAKUMAからデモを受け取って、ベースのラインを自分の中で「こういう感じがいいんやろうな」って組み立てていっていたんですけど、レコーディングのタイミングでリズムが変わったから、見直したんや。基本的には歌のメロディとリズム、コード感に対して、ベースという楽器でその間をどう埋めていこうかと考えてフレーズを作っていきました。
──この曲は、ベースがかなり歌っていますよね。
NAOKI そうですね。うねりというか、実際にボーカルと一緒に歌っている感じは意識しました。それこそリズムが変わったことによって、より歌を生かそうというスイッチに変わった気がします。
──そう思うと、サビのリズムの変更は、この曲に大きな影響を与えたんですね。
NAOKI はい、大きかったと思います。
──基本的には造語が多い歌詞で、2番に「悔しい悔しい悔しさ悔しいよ」と“悔しさの結晶”でできたブロックがあることも印象的です。ここはどのような意図で書かれたものなのでしょうか?
TAKUMA 主人公のオグリキャップは、化け物と言われるくらい圧倒的に強いんですけど、作中にそんなオグリキャップが負ける場面があるんです。もちろんその負けもちゃんと次に結び付いていくものの、「負けも経験なんで」って言えるかといったら、やっぱりそうじゃなくてめちゃくちゃ悔しがっていて。そういう悔しさが本番のプレッシャーや緊張に打ち勝つものにも変わっていくとは思うんですけど、“悔しさ”というのは競技とか勝負事の中ではけっこう重要なことで。そのオグリキャップにとって重要な感情とワードを、面白く音楽に昇華できたらいいなと思って、こういう歌詞にしました。
友達主催のイベントは、楽しいのでできるだけ出たい
──「スパートシンドローマー」のリリースを経て、秋からはほかのバンドの主催イベントへの出演が続きます。一方で、11月からは各会場1000人キャパの10-FEETモバイル会員限定ツアー「10-MOBA TOUR 2025 ~1000-FEET~」もありますね。
TAKUMA 友達主催のイベントは、楽しいのでできるだけ出たいんです。お互いにそう思えていたら最高ですよね。
NAOKI 「1000-FEET」のほうは、モバイル会員のお客さんが来てくれるということで、それならではのライブにしたいですね。フェスではあまりやらない曲も組み込んだりして。「普段見れへんもん見れたな」みたいな気持ちで帰ってもらえるライブになったらいいなと思います。
──さらに1月には所属事務所・BADASSによるレーベルツアー「BADASS TOUR 2026」が開催されます。10-FEETのほか、G-FREAK FACTORY、NUBO、ヤバイTシャツ屋さん、カライドスコープが出演予定です。レーベルツアーは初めての開催ですが、どのような気持ちで回りたいと考えていますか?
KOUICHI いい意味で刺激し合えたらいいなと思います。
──ファミリー感というよりも、ライバルという意識なのでしょうか?
KOUICHI 各々そういう気持ちはあると思います。というか、あったほうがいいと思う。ないとなあなあになっちゃうし。
NAOKI そもそも5バンドでの対バンってひさびさかも。自分たちやお呼ばれのツアーでもだいたい2、3組だし。
──しかもずっと同じメンバーでツアーを回るという。
TAKUMA そうですね、ずっと同じ顔を見ないといけない(笑)。
KOUICHI BADASSのツアーはそんなにしょっちゅうできるものでもないと思うので、特別感は出せたらいいなと思います。
TAKUMA 今回新たにBADASSに加わったカライドスコープは、若くて元気もあって、いいやつらなんで、思う存分表現してほしいし、楽しんでほしい。あとは付き合いの長いバンドばかり。バンドっていいことばっかりじゃないから、お互いのいろんな姿を見てきた。そんな仲間と一緒にツアーを回るわけで。同じレーベルである分、少し他人事じゃない部分がお互いにあるような特別な関係ですが、そんな中で勝負したり、ふざけてみたり。僕らも楽しみたいし、観に来る人にもそんな関係性を楽しんでもらえたらと思います。どんな表情のライブになったとしても、観る人にとっても、やる人にとっても、スタッフにとっても、ええ感じの日になったらなと考えています。
公演情報
10-MOBA TOUR 2025 ~1000-FEET~
- 2025年11月20日(木)神奈川県 1000 CLUB
- 2025年11月26日(水)愛知県 DIAMOND HALL
- 2025年12月3日(水)大阪府 GORILLA HALL OSAKA
BADASS TOUR 2026
- 2026年1月6日(火)群馬県 高崎芸術劇場 スタジオシアター
- 2026年1月9日(金)神奈川県 CLUB CITTA'
- 2026年1月22日(木)大阪府 GORILLA HALL OSAKA
- 2026年1月24日(土)京都府 KBSホール
- 2026年4月18日(土)沖縄県 ミュージックタウン音市場
プロフィール
10-FEET(テンフィート)
TAKUMA(Vo, G)、NAOKI(B, Vo)、KOUICHI(Dr, Cho)によるスリーピースバンド。メロディックパンク、ヘヴィメタル、レゲエ、ヒップホップ、ギターポップ、ボサノバなどのさまざまなジャンルを取り入れたサウンドで人気を集める。結成以来精力的にライブ活動を続け、その迫力満点のライブパフォーマンスや人間味あふれる深いメッセージが込められた楽曲、笑顔を誘い出すキャラクターで音楽ファンを魅了。2007年からはバンド主催の野外フェス「京都大作戦」を開催し、地元・京都から音楽シーンを盛り上げている。2022年12月公開の映画「THE FIRST SLAM DUNK」に提供したエンディング主題歌「第ゼロ感」が話題を呼び、2023年に「NHK紅白歌合戦」に初出場した。2024年4月から5月にかけて初のアリーナ単独公演 「10-FEET ONE-MAN LIVE 2024 ~急なワンマンごめんな祭~」を京都・京都市勧業館 みやこめっせ 第3展示場と神奈川・横浜アリーナで開催。2025年10月にアニメ「ウマ娘 シンデレラグレイ」第2クールのオープニング主題歌「スパートシンドローマー」を配信リリースした。