10-FEETがテレビアニメ「ウマ娘 シンデレラグレイ」第2クールのオープニング主題歌「スパートシンドローマー」を配信リリースした。
「ウマ娘 シンデレラグレイ」は、クロスメディアコンテンツ「ウマ娘 プリティーダービー」のキャラクター・オグリキャップを主人公とした、久住太陽によるコミカライズを原作としたアニメ作品。10-FEETと「ウマ娘」という組み合わせの意外性は、第一報から双方のファンの大きな反響を呼んだ。しかし、「ウマ娘」といえば現代の“王道スポ根”。“怪物”と呼ばれる少女・オグリキャップの熱さに満ちた物語と、勢いよく走り抜けていくような10-FEETのエネルギーあふれる音楽は、これ以上ないほどのシンクロを果たしている。
音楽ナタリーでは今年の10-FEETの歩みを振り返りつつ、「ウマ娘」の印象や新曲の制作過程について話を聞いた。
取材・文 / 小林千絵撮影 / YOSHIHITO KOBA
“生き生きバンドをしている”ということが重要だと思っている
──昨年12月から今年の頭にかけて、KOUICHIさんが手術とその療養のため、ライブをお休みされていました。ということで、まずはKOUICHIさん、おかえりなさい。
KOUICHI(Dr, Cho) ありがとうございます。
──その間、バンドはSHANKの早川尚希さんやROTTENGRAFFTYのHIROSHIさん、ヤバイTシャツ屋さんのもりもりもとさん、HEY-SMITHのTask-nさん、komakiさん、PxOxNさんをサポートメンバーに迎えてライブを行っていました。これまでの活動の中で、1人のメンバーが2カ月くらい離れることってありましたか?
TAKUMA(Vo, G) 過去に1回だけあります。
KOUICHI 僕が大学4回生のときに。卒論を書かなあかんくなって、ライブしている暇がなくて、2カ月くらい休みました。
NAOKI(B, Vo) えっ、それなん? 腱鞘炎の話をするのかと思った。
KOUICHI あ、そっち? 腱鞘炎でも休んだわ。
NAOKI 腱鞘炎は20年前くらい。2ndアルバム(2004年1月リリースの「REALIFE」)のツアーで、半分くらい休んでました。
KOUICHI そう考えると僕はけっこう休んでますね。
──とはいえ、それも20年前くらいのことですもんね。今回のKOUICHIさんの休養期間中、TAKUMAさんとNAOKIさんはどのような心境でしたか?
NAOKI バンドって、ドラマーが変わると一番大きく変わると思っていて。今回叩いてくれたドラマーはみんな超一流のドラマーですけど、やっぱりそれぞれが持っているグルーヴは違うので、フロントの俺とTAKUMAが絶対にミスったらあかんって気持ちでしたね。そのプレッシャーはありました。普段はミスったらあかんとかあんまり考えないので。
──そうですよね。
NAOKI ROTTENGRAFFTYのHIROSHIに関してはプレッシャーが大きかったのか、ライブが終わったあと、ケータリングの食べ物や飲み物をいっぱい持って帰ってました(笑)。
──大きなプレッシャーから解放されたんでしょうね。
TAKUMA HIROSHIとかは付き合いが濃くて、本音も建前も話せるから、「自分のところの活動が忙しかったら無理しないで」みたいな話もできるんですけど、正直それくらいの相手じゃないと、頼れなくて。というのも、みんな男気があるから助けてくれようとするんですよ。少々無理してでも来てくれてしまう。でも、バンドって1人でやるもんじゃないから、実際に叩いてくれるドラマーだけやなくて、そのバンドにも迷惑がかかる。だから声のかけ方が難しくて。普段経験することでもないし。だけど、みんな向こうから「空いてますよ」とか「なんでもやりますよ」って、声をかけてくれて。本当にありがたかったですね。そういうカッコいいバンドマンの仲間が多くて助かりました。
──普段から横のつながりを大切に活動している10-FEETだからこそできることなんだろうなと思いました。
TAKUMA そうですね。それはほんまにそうでした。
──そしてKOUICHIさんは1月に行われた「FUKUOKA MUSIC FES.」で復帰されましたが、また3人で活動できるようになっていかがですか?
KOUICHI 福岡のときはちょっと不安もありましたけど徐々に楽しめるようになっていきました。
TAKUMA 「福フェス」はKOUICHIのことが気になっていましたね。「普通にやれてんのかな」とか「なおかつ、楽しくやれてるかな」とか。そもそもドラムってアスリート並に体力がないと叩けないじゃないですか。灼熱の中で、全力で。しかも、ギターとかやったら、「ジャカジャカジャカジャカー」って弾く合間で休むこともできるけど、ドラムは休めない。無理しないとできひんと思うし、けどまた倒れてもあかん。そういうことも含めて、休む前と同じようなグルーヴ感が戻ってきたときは「ほんまによかったな」と思いました。
──その後、ライブのペースを落とすことなく、相変わらずライブ三昧の日々を過ごされています。変な話、キャリア的にも年齢的にもライブの本数を減らしてもいいはずなのに、これだけのライブをし続けるのはどうしてなのでしょうか?
TAKUMA ライブって1週間空いただけでブランクを感じるし、それがツアー中やったら、1日休みがあるだけでちょっと下手になったなと感じるんですよ。スキル的にもやし、体力に対する意思の強さや耐久性みたいなものも落ちていく感覚があって。それは年齢関係ないところだと思うけど、年齢がいけば余計、体力も落ちていくだろうし。だから普通は歳を食うたぶん、ペースをゆっくりにしましょうって話になるもんやけど、「そんなこと言ってるうちにどんどん歳食うていくで」とも思うし、どんどんできひんようにもなっていく。無理じゃない範囲で、「ちょっとしんどいな」くらいの感じでやっていないと、ライブの本数に対する心の耐性が弱っていきそうな気がして。“生き生きバンドする”という感じじゃなくなっていくというか。“生き生きバンドをしている”ということが重要だと思っているから、バンドを続けるなら、いい状態をキープさせるペースでライブを続けていかないといけない。年間100本くらいライブをやっていた頃から思っていたことですし、そういう話はメンバーともしますね。「休みすぎたら、たぶん気が付いたときには戻れないで」って。
──夏フェスもたくさん出ていらっしゃいますもんね。
TAKUMA いい人やと思われたいんで、あんまり断らないです(笑)。
──きっとそういう姿勢が後輩のバンドにも影響を与えているでしょうし、その必死に活動し続けている姿を、仕事や勉強をがんばっている自分に重ねて勇気や元気をもらっているリスナーも多いんでしょうね。
TAKUMA そうやって共感してくれる人が僕らに出会ってくれていたらうれしいですね。
みんな「ウマ娘」観てるんや!
──そんな中、新曲「スパートシンドローマー」が完成しました。「スパートシンドローマー」はテレビアニメ「ウマ娘 シンデレラグレイ」第2クールのオープニング主題歌です。情報解禁時に大きな話題になりましたが、その反響をどのように受け取りましたか?
TAKUMA びっくりしました。昔からの知り合いから急に連絡が来たりして。さっきNAOKIとも話していたんですけど、意外と自分らと同い年や、年上の方からも連絡が来たので、「みんな『ウマ娘』観てるんや!」と思いました。「ウマ娘」は競馬を題材としたアニメで、実際にいた馬をモデルにした名前も出てくる。年齢性別問わず、いろんな人に知られている作品なんやなと実感しました。
NAOKI 年上の先輩で「『ウマ娘』全部観てきてんねん」って人がいたりして。僕は正直、今回のお話をいただいてから観たんですけど、もちろんアニメの存在は知っていました。勝手に“かわいい女の子が出てくるアニメ”というイメージだけを抱いていたんですけど、ちゃんと観てみたらすごく面白くて。実際にあった競馬のレースが出てくるし、ストーリーも面白かったので、僕ら世代の人が好きなのが納得できました。
TAKUMA 連絡くれた先輩、誰やったっけ? コンモリさんやったっけ?
NAOKI 冠さん(THE冠)です。
TAKUMA コンモリさんやなかったか(笑)。
KOUICHI 間違えすぎやろ!(笑)
TAKUMA この記事が(冠に)届けばいいなあと思って(笑)。冠さん、これまでの「ウマ娘」全部観ているらしいので。
──届けましょう。皆さんは、「ウマ娘」のオープニング主題歌の話を担当すると聞いたときはどう思いましたか?
TAKUMA 「ウマ娘」についてなんとなくは知っていたんですけど、ちゃんと触れたことはなくて。でも、もともと「ウマ娘」を好きな人から「絵はかわいらしいですけど、内容はけっこうスポ根の感じがあって面白い」という話を聞いていたんです。しかもそれを教えてくれたのも年代が近い人で、「これは面白いのかもしれん」と思って、興味を持ち始めていた頃にオファーをもらったのでうれしかったですね。スマホのゲーム(「ウマ娘 プリティーダービー」)も大人気と聞いていたので、そういうところからお話をいただけたこともうれしかったです。
KOUICHI 僕も「ウマ娘」というタイトルは知っていて、オファーをいただいてからアニメを観たんですけど、とにかくスピード感がすごくて。僕らの曲がどういうふうにハマるのか楽しみだなと思いました。
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オグリキャップが負ける場面から生まれたフレーズ