映画ナタリー Power Push - テラヤバい!映画「テラフォーマーズ」大解剖

伊藤英明×山下智久編

山下くん、今いい体してるよ!(伊藤)

──伊藤さんは「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」「悪の教典」「喰女 -クイメ-」に続き、三池監督と組まれるのは4度目ですね。今回は監督と現場でどのようなお話をされましたか?

伊藤英明

伊藤 恥ずかしながら、キャラクター同士の関係性とか、役についての細かいことはあまり考えなかったかもしれないです。細かいことにこだわらず、勢いがあってテンポがよくて、アトラクション的な映画になればいいなって。この映画に関しては本当に娯楽ムービーなんで。だからどういう世代に観てもらうか、どういう人たちが興味を持つかとか、そっちを大事にしながら監督と話しました。

──方向性の共有ですね。一方で山下さんは三池組初参加でしたが、いかがでしたか?

山下 最初、監督から「とにかくこの役はものすごくハングリーで、周りに敵意むき出しで、常に飢えている状態でやってくれ」と言われました。それ以降はワンシーンごとに監督が「ここはこういう感じで」って丁寧に指導してくださり、僕はただそれに付いていって。できる限り要求に応えられるようにがんばろうと思ってやった結果、ああいうふうに仕上がりました。もちろん物語が進むにつれて仁の心境が変化していくことも頭にはあったんですけど、それよりもワンカットワンカットに必死で取り組んでいましたね。

伊藤 三池組はほかの現場と違って段取りとかもなく、衣装着た瞬間もう「はい、行きましょう!」って始まるんですよ。だからあまり余計なこと考えて入る現場ではないですね。その場でどんどん変わっていくし。山下くんなんかセリフがポンポン変わってたよね。

山下 そうですね、英語のセリフが入ったり。

伊藤 英語しゃべりながら演技もしなきゃいけないもんね。普通の俳優さんだったら1カ月かかる作業だと思うよ?

──撮影に入る前に監督から準備しておくよう指示されたことはありましたか?

山下 そうですね……「ちょっとだけ鍛えといてね」とは言われました。宇宙服が映えるように。ちょうど、ドラマ(「アルジャーノンに花束を」)をやっていて痩せていたので。

伊藤英明

伊藤 大変だったよね、すごい痩せててびっくりしたもん。今いい体してるよ、めちゃくちゃ!

山下 (笑)

伊藤 俺は特に何も言われてないけど、昆虫図鑑を読み直したかな。“アナフィラキシーショック”とか、そういう単語も出てくるし。監督にもあげようとしたら、「俺も持ってる!」って言われました(笑)。

──同じことを考えていたと。アクションに関しての準備は特になさらず?

伊藤 それはね、こっちがやりたいって打診しても、スタッフ側が「いや、現場でなんとかなりますから」って感じで(笑)。でも今思えば、練習したところで“無”ですよ。あの宇宙服を着ると着ないじゃ全然違うから、着ないでやっても意味ないんです。

見えない敵と戦いました(山下)

──確かに。宇宙服を着てあれだけ激しいアクションをこなすのは相当苦労されたのではないでしょうか。

「テラフォーマーズ」より。

伊藤 すごくフィットしているから脱ぎ着だけでも大変で。総重量20kgぐらいあるんじゃないですかね。アクションやるのが大前提だったんで、宇宙服は動きやすく、強度があり、軽量化させて作っていたんです。それでもものすごく汗かくし、カロリーも消費しました。あれ着て1回撮っただけで死にそうになりますから。汗が本当にすごくて、パンチすると水が飛ぶし、ブーツ脱ぐとジャーって出てきますからね(笑)。

──サウナ状態ですね。

伊藤 それでも衣装さんたちが寝ずに乾かしてくださっていたので、次の日になるときれいな状態に戻っていました。

──山下さんは元キックボクサーという役どころでしたが。

山下 僕はキックで戦うんですけど、サバクトビバッタに変異するので脚が逆関節なんですよ。だから下半身はけっこうCGが使われているんです。上半身と下半身のイメージを近付けるのが大変で、監督がわかりやすいように物差しを使いながら「こういう軌道だよ」って教えてくださいました。合成用にグリーンのタイツをはいたり、初めて経験することが多くて、できあがりのイメージを想像するのが難しかったです。

「テラフォーマーズ」絵コンテの一部。

──撮りながら完成図を考えるのってすごく難しそうですが、どのようにイメージを共有していったのでしょうか?

伊藤 実は今回の撮影は台本に沿ってやらなくて、絵コンテがメインだったんです。現場でも、足りないカットの絵コンテをその場で描いてくれる人がいて。だからその日撮るシーンの台本を読むっていうより、カットを絵で見ていました。俺らもそのほうがやりやすかったですね。

山下 見えない敵と戦うわけですし。

伊藤 そうそう。今回、CGやVFXが多用されてるじゃないですか。動いているテラフォーマーたちは全部CGなので、俺たちはずっと見えない敵と戦っていたんです。

──具体的に、どのように撮影したのでしょう?

「テラフォーマーズ」より。

伊藤 まずはテラフォーマーの代わりの人たちが3人ぐらいいて、どういう動きになるか一緒にゆっくり合わせていく。その動きが確認できたら俺1人で撮るんですけど、「ここでパンチされて、よけるとこっちに行くのか」とか考えながら、最低3、4回は同じシーンの動きをやるんです。だからみんな想像力を働かせて、監督の緻密な計算に付いていこうと必死でしたね。

山下 監督を信じてやっていました。

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伊藤英明×山下智久編
「テラフォーマーズ」2016年4月29日より全国公開
「テラフォーマーズ」
あらすじ

21世紀、地球の人口は爆発的に増加し、人類は火星地球化計画を実行。苔と“ある生物”を火星に送り、気温を上げることで地球化させようとした。それから500年の歳月が過ぎ、生物を駆除するため15人の隊員が火星へ派遣されることに。簡単な仕事のはずだったが、そこにいたのはヒト型に異常進化を遂げて凶暴化したテラフォーマーたち。出発前に特殊能力として昆虫のDNAを授かった隊員たちは、変異して超人的なパワーを発揮。人類と異常生物による生き残りを懸けた戦いの火蓋が切って落とされる。

スタッフ
  • 監督:三池崇史
  • 原作:貴家悠、橘賢一(週刊ヤングジャンプにて連載中)
  • 脚本:中島かずき
  • 主題歌:三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「BREAK OF DAWN」
キャスト
  • 小町小吉:伊藤英明
  • 秋田奈々緒:武井咲
  • 武藤仁:山下智久
  • 蛭間一郎:山田孝之
  • ゴッド・リー:ケイン・コスギ
  • 森木明日香:菊地凛子
  • 堂島啓介:加藤雅也
  • 大張美奈:小池栄子
  • 大迫空衣:篠田麻里子
  • 手塚俊治:滝藤賢一
  • 連城マリア:太田莉菜
  • 榊原:福島リラ
  • 本多晃:小栗旬

©貴家悠・橘賢一/集英社 ©2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

伊藤英明(イトウヒデアキ)

1975年8月3日、岐阜県生まれ。1993年、第6回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞する。2000年に「ブリスター!」で映画初主演。海上保安官の活躍を描いた「海猿」シリーズで劇場版・ドラマ版ともに主演を務め、劇場版第2作「LIMIT OF LOVE 海猿」は2006年の邦画実写作品で興行収入第1位を記録した。三池崇史作品には、これまで「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」「悪の教典」「喰女 -クイメ-」に出演している。主演ドラマ「僕のヤバイ妻」がフジテレビ系にて放送中。

山下智久(ヤマシタトモヒサ)

1985年4月9日、千葉県生まれ。ジャニーズJr.の一員として活躍した後、2006年に「抱いてセニョリータ」でソロCDデビュー。この曲が主題歌となったドラマ「クロサギ」で初の単独主演を果たし、以降ドラマ「プロポーズ大作戦」「ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~」「SUMMER NUDE」「アルジャーノンに花束を」などに主演。また映画主演作に「映画 クロサギ」「あしたのジョー」「近キョリ恋愛」がある。音楽活動も継続して行っており、今年1月にベストアルバム「YAMA-P」をリリース、6月9日よりコンサートツアー「Tomohisa Yamashita The Best Live Tour 2016 Future Fantasy」を開催。