伊藤さん、今何にハマっていますか?(大童)
大童 伊藤さん、今何にハマっていますか? 苔ですか?
伊藤 わあ、下調べもしてきてくださって(笑)。今は切り花とか、生花ですね。生命力に癒やしを感じます。お花を素敵に飾りたいがために花瓶の収集を始めたので、家に置き場がない状態です。相変わらず石も飾っていますし。あとは……すみません、どんどん増えちゃう。
大童 どうぞ、どうぞ!
伊藤 あの、昔から面白い画像を集めるのが好きで。これ!と思った画像を投稿しているんですけど、あまりにも数が多くなったので、スクショしてZINEにしてみました。誰かに見せるわけでもなく、ただの自己満足で。それをまたコンビニでプリントアウトして、コラージュして額に飾って、ただただ眺めたり。
──お花にしても画像にしても、何かしら自分のこだわりを加えて楽しむんですね。
伊藤 ただ集めるだけでもいいんですけど、それを何か形にしないと自分のものにならないと思っちゃうんです。順番もバランスも自分で決めて飾ったり投稿して。
大童 (大きくうなずきながら)わかる。
伊藤 で、さらにコラージュしたりすることで自分にしかできない形になる。
大童 (大きくうなずきながら)わかる。今思い出したのが、昔Tumblrをやっていて(※自由にカスタマイズできるブログ型SNS)。
伊藤・松本 Tumblr!
松本 Tumblrは青春だったなあ。
伊藤 私も大好きです!
大童 見るだけじゃなくて、自分で投稿もしていたんです。自分で描いた絵を載せるんですけど、この順番じゃないなって1つひとつ消して、また投稿し直したり。同じようなことをやっていたなと思い出しました。
「どうせ青春映画でしょ」と思う人こそ観てほしい(松本)
伊藤 大童さんだったらマンガやアニメ、松本さんだったら映像だったり。大切な趣味があって、それを自分の中にため込むだけじゃなく、何か物にしたいという気持ちがそれぞれ今につながってきたんですね。ハダシもたぶん同じです。
大童 ハダシは未来で映画監督になっている設定でしたけど、なるだろうなと思った。この子、絶対抜け出せないだろうなって。
伊藤 私はアイドル時代、自分の趣味はよくないんじゃないか?と悩んでいて。個性として捉えられることもあるけど、アイドルとしての自分よりも「私はこれが好き」という気持ちが先に立ったとき、自分の中のバランスが一気に崩れてしまったんです。みんな私の好きなものを理解してファンになってくれるんですけど、かわいげとかお茶目とか「まりっかの歌いいね」とか……アイドルである自分の何がいいのか正直わからなくて。ずっとさまよっていました。
──何か吹っ切れるきっかけがあったんですか?
伊藤 「伊藤まりかっと。」という個人PVです。「万理華のやりたいことやっていいよ」と言われて、みんな何を観たいかな?と考えたとき、歌を復活させようと。ちょうど役作りで髪を切るタイミングだったので、だったら記念に歌にしちゃおうと思って、実際に髪を切りながら歌う内容にしました。それが好評だったので、やっとバランスが取れた気がしました。
──3人ともフィールドは違えど、創作への熱意で通じ合っているんだなと感じました。「サマーフィルムにのって」も「映像研には手を出すな!」も、作品を通して「好きなものを好きでいていいんだ」と背中を押してもらえる人が多くいると思います。
大童 「サマーフィルムにのって」は誰にでも響く作品だと思います。と言いますのも、「映像研」は“誰にでも”な作品じゃないだろうと思っていたら、案外広く受け入れてもらえたので。こういうのでもいいのかと。僕自身ひねくれているところがあるので、斜に構えているやつらに「サマーフィルムにのって」を観てくれと言いたいです。
松本 確かに斜に構えている人には観てほしいです(笑)。「どうせ青春映画でしょ」と思っている人にこそ届いてほしい。
大童 僕、「映像研」に文句を言ってくる人が大好きなんです。「こんなに天才ばかり集まらんやろ」とか。自分もほかのマンガを読んでマンホールのディテールに「こうじゃないよ!」とか思ったりしているので。あ、仲間だって(笑)。だから“青春くそくらえ”の気持ちがある人が観てくれたらうれしいですよね。
伊藤 私も同じようなところがあります(笑)。でも、そういう自分は案外嫌いじゃない。それから好きなものをちゃんと「好き」と言えるのも大事。「好き」って原動力になるし、今忙しく働いている大人たちがこの映画を観て、昔熱中していたことへの初期衝動を思い出してくれたらうれしい。「どうせ理解してもらえない」とくすぶっている人にも、意外と仲間はいるんだよと作品を通して伝えたいです。
- 伊藤万理華(イトウマリカ)
- 1996年2月20日生まれ、大阪府出身。2011年に乃木坂46に1期生メンバーとして加入。2017年12月にグループ卒業後、同年に初の個展「伊藤万理華の脳内博覧会」を開催した。以後、俳優として映像作品や舞台で活躍する一方、雑誌・装苑での連載や、2020年にPARCO展「HOMESICK」を開催するなどアート方面でも個性を発揮している。これまでに「映画 賭ケグルイ」やドラマ「ガールはフレンド」「東京デザインが生まれる日」「夢中さ、きみに。」などに出演。現在は地上波初主演ドラマ「お耳に合いましたら。」がテレビ東京で放送中。
- 松本壮史(マツモトソウシ)
- 1988年生まれ、埼玉県出身。コマーシャル、ミュージックビデオ、映画・ドラマを手がける映像監督。MVを監督した江本祐介「ライトブルー」は第21回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で審査委員会推薦作品に選出される。同年、伊藤万理華が主演を務めるドラマ「ガールはフレンド」を監督。自身が手がけたWebドラマを長編映画化した「青葉家のテーブル」は2021年6月に劇場公開された。放送中の伊藤万理華主演ドラマ「お耳に合いましたら。」ではメイン監督を務める。
- 大童澄瞳(オオワラスミト)
- 1993年3月19日生まれ、神奈川県出身。オリジナル同人誌即売会・コミティアに出品したところ、ビッグコミックスピリッツ編集部員に声を掛けられ、2016年にデビュー作「映像研には手を出すな!」が月刊!スピリッツで連載開始。同作は2020年に湯浅政明によりテレビアニメ化、同年に乃木坂46のメンバー主演で実写映画化・ドラマ化と数々のメディアミックスを展開し、シリーズ累計発行部数は100万部を突破した。最新刊となる6巻は2021年10月12日に発売。