映画ナタリー Power Push - 真島ヒロが語る「スーサイド・スクワッド」

少年マンガならNG!? 型破りなアンチヒーロー作品の魅力に迫る

「こんなジョーカー見たことない」っていうくらい新鮮

──本作は、ジャレッド・レトがジョーカーを演じていることでも話題になりました。近年では「ダークナイト」でヒース・レジャーが演じた印象が強いかと思いますが、いかがでしたか?

「スーサイド・スクワッド」より、ジョーカー。

ヒース・レジャーが演じるジョーカーはとにかく最高なので、「あれは超えられないだろう」っていう意見があったじゃないですか。でも今回のジョーカーは違う意味ですごかったですよね! いいキャスティングだと思いました! 別路線というか、「こんなジョーカー見たことない、こんなジョーカーもありだな」っていうくらい新鮮で、なおかつすごく怖かった。

──今回は恋人であるハーレイ・クインとの関係を含め、ジョーカーの違う一面が描かれていましたよね。

「スーサイド・スクワッド」よりジョーカー(中央)、ハーレイ・クイン(右)。

そうですね。ジョーカーのそういう部分はこれまでの映画にはなかったところなので、ナイスじゃないですか。僕は敵キャラを主役にすることはないですけど、作品を続けていくうちにファンの人はだんだんと悪役にも愛着を持ってくると思うんです。だから敵キャラにもバックストーリーを持たせることがありますね。あとこの映画のジョーカーは、全然カッコつけていないところがよかったなあって。この角度で見せたらカッコいいぞっていう姿ではなく、ありのままを撮ってるみたいな。もちろん実際には一番いい構図で撮っているとは思うんですけど、観てるほうからするとわざとらしいカメラの計算みたいなものがなくて、怖さが増していました。

──デッドショット、ハーレイ・クイン、ジョーカー以外のキャラクターはいかがでしたか?

炎を操るディアブロもいいキャラでしたね。コップの中で火をゆらゆらと躍らせるシーンがあったんですけど、「FAIRY TAIL」の主人公ナツも火を使うキャラなので……「これはやられた!」と思いました!(笑) あとはキャプテン・ブーメランも人間臭くてよかったですし、魔女のエンチャントレスは妖艶で、しゃべるたびに体をクネクネさせるところなんか演出が効いてますよね。

「スーサイド・スクワッド」より、エル・ディアブロ。

──そんな濃いキャラクターたちを短い時間ながら魅力的に紹介している導入部分は、本作の大きな見どころなのかなとも思ったのですが。

最初に1人ひとりキャラクター紹介をするというのは、マンガの作法ではNGと言われているんですよ。特に少年マンガでは主人公をバーンと見せるところから始まるのが定番なので。「007」の冒頭と同じですよ、お約束だけど毎作ジェームズ・ボンドが活躍する場面から始まるっていう(笑)。そんな作法に反してはいるんですけど、この映画は上手にまとまっていて「次はどんなやつが出てくるんだろう」ってワクワクしました。

── バットマンらDCコミックのほかのキャラクターも登場しますよね。

真島ヒロ

ええ。予告編にもバットマンが映ってましたけど、あれだと一瞬だけだったので「あごだけベン・アフレックに似てる人を使って撮ったのかな?」って思っていたんですけど(笑)。でもまあ……あとはしゃべっちゃいけないかな。本編を観てのお楽しみですね。次の映画につながってくるのかなって気もしますし。

──今後、ご自身の作品の中で出してみたいと思ったキャラはいましたか?

うーん、ジョーカーですかね。今回の彼があまりにもよかったので。少年誌だとあんまりぶっ飛んでるキャラみたいなのは難しくて、僕も描くのは苦手なんですけど、ああいうのを出してみたいですね。

どこかで「こいつら好きかも」と思えるポイントがあるはず

「スーサイド・スクワッド」より。

──本作はアメリカで若年層からも人気を得ました。先生の作品の読者も主に10代や20代が中心かなと思うのですが、そういった層に届けるためのポイントは何でしょう?

ビジュアルの面白さっていうのはすごく大事だと思うんです。ハーレイやジョーカーの見た目でまず興味を持ちやすいと思うんですが、あとはやっぱり内容ですよね。ただ、正義の味方が世の中で受け入れられるのはある程度想像がつきますけど、こういうアンチヒーローもので奇抜な設定だとすごく難しいと思いますよ。「FAIRY TAIL」を描くときも、正義の味方というよりは“悪ガキたちの集まり”ってことを最初に考えて作ったので、少し似ているところはあるんですけど。それでも僕はみんなに好いてもらえるように、悪いところよりはいいところをたくさん描いている。「スーサイド・スクワッド」は悪いところばっかり描いているけど、ほろっとそれぞれの人間らしい部分を見せるっていう絶妙なバランスが若者の共感を得る核になっていると思います。

真島ヒロ

──ありがとうございます。最後にこの映画のオススメの観方を教えて下さい。

悪者集団が暴れるだけの映画かと思いきや、実はみんなそれぞれちゃんと心を持っているということが肝心な部分です。悪いやつらだけど、どこかできっと「こいつら好きかも」って思えるポイントがあるはずなので、そういうところを楽しみにしていただけたらと思いますね。

Contents Index
真島ヒロインタビュー
DISH//インタビュー
キャラクター紹介

「スーサイド・スクワッド」9月10日(土)全国公開

「スーサイド・スクワッド」9月10日(土)全国公開

迫り来る世界崩壊の危機を前に、米国政府諜報担当高官アマンダ・ウォーラーは“タスク・フォースX”の結成を提案。型破りなこの計画は、バットマンらヒーローに捕らえられ服役中の悪党たちに、減刑と引き換えに命懸けのミッションへ挑ませるというものだ。命令に背いたり任務に失敗したら、首に埋め込まれた自爆装置が即作動するこの“スーサイド・スクワッド(自殺部隊)”に集められたのは、最強スナイパーのデッドショットや、女ピエロのハーレイ・クインたち。正義感も団結力もない寄せ集めの最狂軍団は世界を救えるのか? また彼らの前に、ハーレイの恋人である悪の権化・ジョーカーも現れ……。

スタッフ / キャスト

監督:デヴィッド・エアー

キャスト:ウィル・スミス、ジャレッド・レト、マーゴット・ロビー、ジョエル・キナマン、ヴィオラ・デイヴィス、ジェイ・コートニー、ジェイ・ヘルナンデス、アドウェール・アキノエ=アグバエ、アイク・バリンホルツ、スコット・イーストウッド、カーラ・デルヴィーニュ、アダム・ビーチ、福原かれんほか

真島ヒロ(マシマヒロ)

1977年5月3日生まれ、長野県出身。1998年、「MAGICIAN」で週刊少年マガジン第60回新人漫画賞に入選。翌1999年から2005年まで、週刊少年マガジンにて「RAVE」を連載する。2006年には同誌にて「FAIRY TAIL」の連載を開始。同作は累計5年半の長期テレビアニメ化や劇場版アニメ化、舞台化もされた。さらに多くのスピンオフ作品も誕生するなど、国内はもとより海外でも多くのファンを獲得し、現在も週刊少年マガジンの看板作品の1つとして連載中。


2016年9月9日更新