映画ナタリー Power Push - 「掃苔のすすめ ~お墓を巡る物語~」

掃苔人・夏帆が教える偉人たちの知られざる一面

偉大な人を身近に感じる

──黒澤監督のお墓は、ご本人には縁のない鎌倉に建っていますね。

はい。奥さまのために鎌倉に建てられて、そのあと黒澤監督も同じお墓に入ったそうです。こぢんまりとした墓石で、気軽に足を運べないような場所に建っているんです。

──そうなんですね。少し意外です。

功績を考えれば、銅像が立っていてもおかしくないような方ですものね(笑)。一般開放されているお墓ではないので、参りに来るよりも、作品を観てほしいという黒澤監督の思いがあるようです。

──僕も勝手に銅像が立っている風景を思い浮かべていました(笑)。

黒澤監督のお墓はまず奥さまのために黒澤監督が建てて、奥さまお1人だと寂しいだろうということで、その隣が奥さまのご姉妹のお墓になっているんです。勝手に亭主関白な方だと思っていたので、私も意外でした(笑)。仕事で偉大な功績を遺す一方で、家庭でも奥さま思いで素敵な方だったことを知れて、少し身近に感じることができました。

私らしいお墓を建てたい

──先ほど、お墓から家族の形が見えてくるというお話がありましたが、夏帆さんの理想の家族像というものがあれば教えていただけますか?

うーん、難しいですね……今回お墓を訪ねた方たちの中でもいろいろな家族の形があって、どれも魅力的だなと思ったので。でも、やっぱりお互い思いやれる関係というのが一番だと思いますね。

──たしかにそれが一番ですね。まだ若い夏帆さんに伺うべきではないのかもしれませんが、いろんなお墓を見てきて建てたい自分のお墓のイメージは湧きましたか?

自分で建てるのか、人に建ててもらうのかで違ってくると思うんですけど、その人らしさのあるお墓だったら素敵だなと思いますね。

──夏帆さん自身はロケでお墓を訪れてみていかがでしたか?

背筋が、しゃんとしました。自分の人生はまだまだこれからだと思うんですけど、自分のこれまでのことや、これからのこと、家族のことなど、さまざまなことを見つめ直すいいきっかけになりました。

──最後に番組の見どころを教えていただけますか?

有名な方々だからこそ、知られざる一面が強く見えてくる番組になっています。誰がそこに眠っていて、そのお墓を誰がどんな思いで建てたのかを知ることはすごく興味深いことだと思います。

──著名な方々だからこそ、いろいろな発見があるかもしれませんね。

インタビューなどを通して、周りの人たちの思いを知ることができたのも、すごく面白かったです。あと今回お墓を巡らせていただいた人たちのことを知らない方がこの番組を観たときに、興味を持っていただけたらうれしいですね。

ラインナップ

第1回

三船敏郎(1920~1997)

1947年、「銀嶺の果て」で俳優デビュー。翌年公開された「酔いどれ天使」以降、「羅生門」「蜘蛛巣城」「どん底」など多数の作品で黒澤明とタッグを組む。「用心棒」「赤ひげ」でヴェネツィア国際映画祭の主演男優賞を2度受賞している。

黒澤明(1910~1998)

山本嘉次郎、成瀬巳喜男らの作品に助監督として参加した後、1943年「姿三四郎」で初メガホンを取る。1998年に逝去するまでに30本の作品を遺す。「羅生門」でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞、「影武者」でカンヌ国際映画祭パルムドールを獲得。

第2回

森光子(1920~2012)

1935年公開の「なりひら小僧 春霞八百八町」で銀幕デビュー。劇作家・菊田一夫に見いだされ、1961年に舞台「放浪記」にて主演を務める。以後も同舞台への出演を続け、上演回数は計2017回を数えた。2009年、女優としては初となる国民栄誉賞を受賞した。

田中絹代(1909~1977)

1924年公開の「元禄女」で女優デビュー。以後、「マダムと女房」「雨月物語」「流れる」などに出演し、キャリアを重ねる。「サンダカン八番娼館 望郷」にてベルリン国際映画祭の女優賞にあたる銀熊賞を受賞。また監督として「恋文」「月は上りぬ」などを手がけた。

第3回

開高健(1930~1989)

1950年に処女作「印象生活」を発表。1957年に「文學界」に掲載された「裸の王様」で芥川賞に輝く。小説のほかに、「ベトナム戦記」「オーパ!」といったノンフィクション作品を多数執筆。映画化作品に「巨人と玩具」「片隅の迷路」(映画タイトル「証人の椅子」)がある。

寺山修司(1935~1983)

歌人、シナリオライターとして活躍した後、1967年に演劇実験室・天井棧敷を設立。市街地を劇場に見立てた「ノック」をはじめ異色作を多く手がける。1971年公開の「書を捨てよ町へ出よう」で長編監督デビュー。長編第2作「田園に死す」は芸術選奨新人賞を受賞した。

WOWOWプライム「掃苔のすすめ ~お墓を巡る物語~」
「掃苔のすすめ ~お墓を巡る物語~」
WOWOWプライム
2015年10月17日(土)スタート
毎週土曜 13:00~ほか ※全3回
出演者:夏帆
ラインナップ
  • 10月17日(土)三船敏郎 / 黒澤明
  • 10月24日(土)森光子 / 田中絹代
  • 10月31日(土)開高健 / 寺山修司

女優の夏帆が案内人を務め、俳優、映画監督、文筆家など各界第一人者の墓を3回にわたって紹介。墓碑銘や墓石の形状、墓地の由来を通して故人やその家族の秘められたエピソードを見つめていく。第1回の放送では俳優・三船敏郎と映画監督・黒澤明の墓を訪問。三船の墓石に刻まれた納骨されていない人物の名前の由来、自身とは縁のない鎌倉の地に墓を建てた黒澤の真意を照らしだす。

夏帆(カホ)

1991年6月30日、東京都生まれ。2003年、スカウトをきっかけにデビュー。2004年、CM「三井のリハウス」11代目リハウスガールに抜擢される。2007年公開の初主演映画「天然コケッコー」で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞ほか多数の映画賞に輝く。以後、ドラマ「ヒトリシズカ」「みんな!エスパーだよ!」「夢を与える」、映画「箱入り息子の恋」「パズル」「海街diary」などに出演し、キャリアを重ねる。出演作「ピンクとグレー」の公開を2016年に控える。