レキシっていうプロジェクトに後押しされてる

──アルバムは前作「レシキ」以来、2年ぶりのリリースとなりました。

このご時世で2年はリリース間隔開きすぎでしょう！ってね。ライブやるとそれだけ新しい曲も欲しくなってくるし、さすがに「SHIKIBU」だけじゃもう引っ張れないから（笑）。

──去年はNegiccoや関ジャニ∞などへの楽曲提供もありましたが、ほかのアーティストへ曲を作ったことで、レキシの曲作りに変化はありましたか？

レキシの曲を作るとき、以前はもっと日本史を意識して作ってたけど、今は感覚がちょっと変わってきたというか。例えばNegiccoに提供した「ねぇバーディア」も、普通の曲に「愛の兜」っていうような“レキシワード”を入れていった感じなんだけど、レキシにおける曲作りでもそういう方法を取るようになってきたかも。普通に楽曲を作る延長線上に、自然とレキシワードが出てくるような感じかな。

──歴史を題材にした曲というよりも、普遍的なテーマの中に歴史の設定やエッセンスを絡めていくっていう感じにシフトしていったんでしょうね。

思えば「SHIKIBU feat. 阿波の踊り子」もそういう曲だったしね。でも変な話、「これはレキシ色が薄いんじゃないか」とか、「マンネリなんじゃないか」とか心配にもなってくるわけ。曲自体はわりとスムーズにできるのよ。だけど「同じようなことばっか言ってるんじゃないか」とか、「コード進行が似てるんじゃないか」とか、はたから見たらそんなに気にならないようなことも難しく考えがちになってたところがあって。

──さすがに5枚目のアルバムとなると、そういう悩みも出てくるんでしょうね。悩みを打破できたきっかけはありますか？

やっぱりダベりだね。足軽先生（いとうせいこう）やシャカッチ（ハナレグミ）とアレンジを作ってるときに言われた一言がひらめきになったりする。もちろんスタッフも含めてね。今回は特に「1人で作ってないんだな」ってつくづく思ったね。レキシっていうプロジェクトに後押しされて作らせてもらってるっていう感覚が大きかったかな。

「かまたり」って連呼したかった

──今回の「Vキシ」を聴かせてもらって、The Beatles中期から後期あたりのサウンドを連想したんです。

確かにそういう要素はあるかも。もともと自分もThe Beatlesを聴くようになったのがきっかけで音楽に入ったしね。で、これは今回に限らずいつもそうだけど、アレンジについては降りてきたものを素直に曲にしていっただけなんです。The Beatlesが活動を重ねるにつれていろんな音楽からの影響を曲に反映していったように、レキシの音楽もあらゆるジャンルにまたがってる。例えば「刀狩りは突然に」を作るときにイメージしたのはEarth, Wind & Fireだったし、「寺子屋FUNK feat. シャカッチ」って曲でイメージしたのはLed Zeppelinだったりね。毎回そうだけど、このジャンルをやろうと思って作ってないから。

──では、ここからはいくつか曲をピックアップしてお話をうかがっていきたいと思います。まずは「牛シャウト！」。

これはとにかく華やかでオープニングっぽいものをと思ってできた曲。ティナ・ターナーをイメージしたドライブソングだね。

──ティナ・ターナーが歌った「Proud Mary」では、ミシシッピ川を下る蒸気船の外輪が回ってましたが、「牛シャウト！」では牛車の車輪が回ってます（笑）。

こんなに疾走感ある曲なのに、牛車は全然速くないっていう（笑）。それが面白いじゃない？ あくせくしないで、牛のスピードぐらいでいいじゃない。「あわてない、あわてない」っていう一休さんの名ゼリフにもつながるし。

──おお、なるほど（笑）。で、続く2曲目はキュウソネコカミを迎えた「KMTR645 feat. ネコカミノカマタリ」。バンドが違うとこんなに音も違ってくるのかと、新鮮な驚きを覚えました。

ね。それ、みんなに言われる。実はこの曲、最初はいつものバンドメンバーで合わせてみたんだけど「もっと若い感じにしたい」って思っちゃって。アレンジ的にもいい意味で荒々しい感じが欲しかったというか。そうして「誰が合うかな？」と考えたら、キュウソがいいんじゃないかってひらめいてね。キュウソとはフェスでも一緒になる機会がよくあって、「対バンしたいね」なんて言い合う仲だったからね。

──池ちゃんから見た彼らの魅力は？

やっぱりライブがすごい。最初にキュウソを知ったのはライブ写真なんだけど、それがボーカルの（ヤマサキ）セイヤが「魔女の宅急便」のキキの格好で客席にダイブしてる写真で。「これはヤバい！」って思ってさ。俺もジブリ好きだしね。

──そうですよね。

バンドと丸ごとコラボしたいっていうのは以前から考えてたことで、もし実現したらそのバンドにアレンジも任せちゃおうと思ってたのよ。だから今回はアコギの弾き語りで作ったデモとリフのアイデアだけ渡して、あとは「いつものキュウソでやってください」ってお任せして。向こうも気合い入れてアレンジしてくれたから、すごくいい曲になったね。

──藤原鎌足をテーマにした理由は？

みんなが知っている歴史上の人物だっていうのはもちろん、「かまたり」って連呼したかったんだよね。俺的にはユニコーン「服部」のイメージなんだけど、誰も気付いてくれない（笑）。意味のないフレーズを連呼するのって、レキシ初期の頃に作ってた曲と通じる部分があって。今回収録した「寺子屋FUNK」もそうだけど、連呼していくうちに言葉の意味も意識しなくなって、語感の気持ちよさだけが残っていくんだよね。それに加えてこの「KMTR645」だと「全てを変えることは僕にはできないけど」みたいな、ちょっとドラマチックなエッセンスも入れてみて。そうすると、歴史とは関係なく時代を超えたメッセージのように聴こえてくるのが面白いよね。