中国ドラマ「清越坊の女たち~当家主母~」をイラストに!「瓔珞」ユー・ジョンが贈る“ハードな女の友情”“逆境を乗り越えるヒロインたちの痛快劇”を辛酸なめ子はどう観たか?

中国ドラマ「清越坊の女たち~当家主母~」のDVDが12月2日より順次リリースされている。「瓔珞<エイラク>~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~」のユー・ジョンがプロデュースした本作は、清の乾隆帝の時代を舞台に宮廷御用達の伝統織物・緙絲(こくし)を支える女性たちの波乱の運命を描いた大河ドラマだ。

映画ナタリーではDVDの発売を記念し、女性の関係性をテーマにした作品を手がけてきたマンガ家・コラムニストの辛酸なめ子にインタビューを実施。伝統織物の名家を守るため、対立を超えて手を取り合う正妻の沈翠喜(しんすいき)と妾の曽宝琴(そほうきん)を彼女はどう見たのか? さらに本作の“推しポイント”をイラストに描き下ろしてもらった。

イラスト / 辛酸なめ子取材・文 / 金子恭未子

辛酸なめ子がイラストを描き下ろし!

辛酸なめ子がイラストを描き下ろし!

辛酸なめ子がイラストを描き下ろし!

辛酸なめ子インタビュー

複雑な関係にワクワクしました

──辛酸さんは女性の関係性や友情をテーマにした作品を手がけてきましたが、女性の関係や友情に注目している理由はどこにありますか?

葛藤したり、せめぎ合ったりしながらもお互いを認め合っていくような、単純じゃない複雑な女性の関係性に惹かれます。女性の友情をテーマにしたドラマの場合、幼稚な争いとか恋愛が絡むバトルで終わらずに、登場人物が成長して人間的な魅力を増していく作品が好きです。

──そういったタイプの作品でお気に入りのものはありますか?

アメリカドラマ「ゴシップガール」にはすごくハマっていました。今回「清越坊の女たち」を観てちょっと連想したのが、「ゴシップガール」だったんです。セリーナとブレアは親友なんですけど学園の女王の座を争ったり、恋愛絡みでもめたり、策略をめぐらせたりしながら、成長していく。沈翠喜(しんすいき)と曽宝琴(そほうきん)ももとは親友だったけど、今は正妻と妾という対立する立場。複雑な関係にワクワクしました。セリーナとブレアには取り巻きがいますけど、「清越坊の女たち」の場合は侍女が付き従っていて、2人のカリスマ性を高めている。そんなところも共通しているなと思いました。

「清越坊の女たち~当家主母~」

「清越坊の女たち~当家主母~」

──「清越坊の女たち」では、織物名家・任家の跡取り任雪堂(じんせつどう)の正妻である沈翠喜(しんすいき)と妾の曽宝琴(そほうきん)が、対立を超えて任家を守るため戦友になっていきます。

どんな物語かは聞いていたんですが、途中まで観ていて、ここまで憎しみ合っているなら、2人は絶対戦友にならないんじゃないかと疑いました。殺意に近いものを抱いていて、任雪堂の愛をめぐってマウントを取ったり取られたり。

──1話冒頭から沈翠喜が浮気現場に乗り込んで、曽宝琴に殴りかかったりバチバチですよね。

沈翠喜と曽宝琴は立場が逆転しているんですよね。もともと曽宝琴は令嬢だったのに家が没落して妾になって。だから関係がこじれている。曽宝琴が産んだ子供を沈翠喜が家の後継として奪っていったり、仲良くなれるはずがないと思いました。でも、あまりにも過酷なことが連続で起こってしまって。

ヤン・ロン演じる曽宝琴(そほうきん)。

ヤン・ロン演じる曽宝琴(そほうきん)。

──任雪堂が失踪したり、汚職官僚が罠を仕掛けてきたり、数々の困難が2人を襲います。

この流れだったら沈翠喜と曽宝琴は結託していくしかないなと思いました。

──その過程が本作の見どころの1つだと思います。

何回かお互いのために命を懸けるシーンがありましたよね。川に入って死のうとする曽宝琴を沈翠喜が「ここで死なれたら困る!」みたいに助けたり。ぬるい友情じゃない、すごくハードなつながり。魂のぶつかり合いみたいなことが何度かあって、絆が強くなっていったのかなと。

左からジアン・チンチン演じる沈翠喜(しんすいき)、ヤン・ロン演じる曽宝琴(そほうきん)。

左からジアン・チンチン演じる沈翠喜(しんすいき)、ヤン・ロン演じる曽宝琴(そほうきん)。

──時代劇と“ハードな女の友情”は親和性が高いかもしれないですね。

中国ドラマの場合、背景に映り込む大自然がさらに物語を盛り上げますよね。崖だったり、流れの速い川だったり、自然の過酷さと人間関係の過酷さが連動しているようですごく説得力があります。

人間関係のドロドロだけじゃないドラマ

──ジアン・チンチン演じる沈翠喜は仕事に厳しくも愛情深い女主人、ヤン・ロン扮する曽宝琴は愛にまっすぐで自分に正直な元令嬢というキャラクターです。それぞれにどんな印象を持ちましたか?

ジアン・チンチン演じる沈翠喜(しんすいき)。

ジアン・チンチン演じる沈翠喜(しんすいき)。

ヤン・ロン演じる曽宝琴(そほうきん)。

ヤン・ロン演じる曽宝琴(そほうきん)。

沈翠喜は嫉妬に燃えたネガティブ系の怖い女性なのかなと最初は思っていたんです。曽宝琴は男性に対してのアピールがうまくて、有力者を虜にしていく、ちょっとお色気系というか。でもだんだん2人の男勝りな面が見えてくるようになりました。曽宝琴は頭がよくて、任家を守るためにいろんなところに探りを入れていますし、沈翠喜は伝統織物・緙絲(こくし)の職人としてクリエイティブな才能を突き詰めている。

──彼女たちの生き方に刺激を受ける視聴者も少なくないかもしれません。

「清越坊の女たち~当家主母~」

「清越坊の女たち~当家主母~」

男性社会の中で、潰されそうになりながらも懸命に闘っている女性って普遍的なテーマなのかなと思いますね。正妻と妾の愛憎劇にとどまらず、2人がそれぞれ果たそうとする目的があったり、仕事に対してプライドを持っていたり、何かを極めようとする姿がこのドラマのいいところです。試練や不運が立て続けに2人に訪れるんですが、彼女たちは生きる使命を持っているから、その都度乗り越えていく。観ていくうちに、人間関係のドロドロだけじゃないドラマだというのがわかっていきます。仕事で自分の存在感を発揮したり、自己肯定感を高めたりする姿を見ていると、生まれる時代が早かった人たちなのかなって。現代にいたらキャリアウーマンですよね。