さとうほなみが語る「プロミシング・ヤング・ウーマン」|ゲスの極み乙女。のドラマー、ほな・いこかとしても活動する彼女が衝撃を受けた、甘く危険な復讐エンタテインメント

怖いくらいにリアリティがある登場人物

──キャシーの怒りの矛先は、加害者の男性だけでなく傍観していた女性にも向かいます。周囲の登場人物についてはいかがでしたか?

「プロミシング・ヤング・ウーマン」 ©2020 Focus Features, LLC.

「被害者が愛する人なら?」というキャシーのセリフがありますが、傍観していた人も自分や大切な人のことになると、180度考えが変わるじゃないですか。でも他人のことになると本当に無関心。そして、全員が「自分は悪くない」と自らを正当化しようとするところは、怖いくらいにリアルだなと思いました。自分を正当化したい感情って誰しも持っていると思うので、もしかしたら私も見過ごしていたことがあるかもしれないとゾッとしました。

──観客にも「あなたはどうなの?」と問いかけてくる映画ですよね。

そうですね。今までは同調圧力に対して何も言えなかった人が大勢いた中で、#MeToo運動などSNSを通じて私も声を上げようという方向に少しずつ動いていると思うんです。そんな今だからこそ、作られるべき映画だったと思います。

──アメリカ本国では多くの観客の共感を獲得しつつも、激しい論争を巻き起こしているようです。日本で公開されることでどういった反応があると思いますか?

題材としては男性から女性へのレイプやハラスメントといった重いテーマを扱っているんですけど、それだけじゃない。結末に賛否があるのはわかるんですが、キャシーに共感できたり、登場人物に「こういう人いるわ」というリアリティがあるので、そういった部分にも重点を置いて観てほしいですね。

誰が観ても絶対に刺さるポイントがある

──さとうさんは「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」など、シスターフッドを描いた映画がお好きだとか。普段はどのような作品をご覧になりますか?

女性を題材にした映画は好きです。去年観終わったんですが「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」というNetflixのドラマシリーズが大好きで。女性同士の喧嘩や恋愛だったりドロドロした面が入っていて、「わかる!」という共感ポイントがギュッと詰まっている作品なんです。男性に薦めてもあまりハマってくれないんですけど、女性は大いに共感してくれます(笑)。あと、「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」に出ていたラヴァーン・コックスがこの映画にも出ていたのがうれしかったです!

──ラヴァーン・コックスはキャシーの職場の同僚ゲイルを演じていましたね。

キツいことを言い合ったりしながらも信頼している2人だというのがわかったので、そういう同僚であり友達がキャシーにいるというのはホッとしました。キャシーが30年間生きてきた中で、ニーナだけではない大事な人がちゃんといたんだなと思って、終盤のあるシーンにはグッときましたね。

──いろいろと感想を伺ってきましたが、本作をこれから観る人にはなんと言ってお薦めしたいですか?

キャッチコピーを付けるなら「ハッピー復讐映画」と言ってお薦めしつつ、ラストでドンって食らってほしいです。男性も女性も関係なく、誰が観ても絶対に刺さるポイントがあると思うので、楽しいところもグサッとくるところも含めて、まずは観てもらえたら。そして、今日もこのインタビューがすごく楽しかったので、観た人と語り合いたいです! 観た人は連絡くださいって書いておいてください(笑)。

見逃し厳禁!あなたの想像した結末は半分に過ぎない「プロミシング・ヤング・ウーマン」

ハリウッドのウーマンパワーが結集した、今観るべき映画

近年、男性優位であったハリウッドの映画産業に風穴を開ける女性監督たちの活躍が目覚ましい。2021年には、93年の歴史を誇る米アカデミー賞で、前例を打ち破る“史上初”の出来事が起こった。初めて監督賞に複数の女性がノミネートされ、その1人であるエメラルド・フェネルが、長編デビュー作となる本作で脚本賞受賞の快挙を成し遂げたのだ。今だからこそ製作され大きな支持を獲得した本作は、時代の転換点に立つ我々にとって、まさにターニングポイントになり得る記念すべき作品となった。

そんな新進気鋭の才能を支援したのは、女優としてのみならずプロデューサー業も精力的に行うマーゴット・ロビー。「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」で主演・製作を担った彼女が自信を持ってバックアップしたことからも、本作の完成度の高さがうかがえる。そして、主演を快諾したキャリー・マリガンは「自分以外には演じられたくなかった」と思い入れたっぷりに語り、型破りな復讐に身を投じながら、知性とチャーミングさを兼ね備えたキャシーという難しい役柄を見事に演じきった。

「プロミシング・ヤング・ウーマン」 © Universal Pictures

復讐劇とラブストーリーが融合する予測不能なストーリー

「プロミシング・ヤング・ウーマン」 © Focus Features

ある事件に端を発した復讐劇と、スウィートなラブストーリーが並行して描かれる本作。オスカーに輝いた脚本が紡ぐ物語は、ジャンルの枠を軽々と飛び越え、大胆不敵でロマンティックかつスリリングに観客を翻弄する。「私が描きたかったのは、現実の世界で普通の女性がリベンジするリアリティのある映画」というフェネルの言葉通り、拳銃にもナイフにも過剰な色仕掛けにも頼らないキャシーの復讐は、現代を生きる私たちにも身近に感じられ、観終わったあとはガツンと殴られたような感覚を味わうはず。一方、凍り付いていたキャシーの心を溶かすロマンスは、彼女のミッションにどう関わっていくのか? 予想を裏切る恋と復讐の結末は、ぜひ劇場で目撃してほしい。

「この映画を観たあとはキャシーの計画をバラさないでくださいね。
なぜなら、これは彼女が語るべきストーリーだから」
(本国プレスより)

猛毒を甘いキャンディで包む、ポップなビジュアルと音楽

この物語を、鮮やかなカラーリングとアップビートな音楽で彩りたいと考えたフェネル。「“女の子が好きそうなモノ”を再利用して、恐ろしいものを作りたかったんです」と言うように、重いテーマと相反するポップなビジュアルで、キャシーのいびつな内面を表現した。サウンドトラックには、ブリトニー・スピアーズの「Toxic」のインストゥルメンタルや、パリス・ヒルトンの「スターズ・アー・ブラインド」を使用。きらびやかなメロディに呼応するように、映画のボルテージは急上昇していく。

さらに、彼女が身にまとうファッションにも注目。昼はパステルカラーやギンガムチェックなど甘い雰囲気の服で着飾る一方で、夜はボディコンシャスなドレスや仕事帰りのスーツといった衣装を着るキャシーの七変化は、まるで別人に成り代わっているような違和感を抱かせる。武器であり武装でもあるキャシーのファッションを、復讐という猛毒を包む甘いキャンディとして機能させているのだ。