「昆虫物語 みなしごハッチ」「科学忍者隊ガッチャマン」「新造人間キャシャーン」「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」などを手がけてきた制作会社タツノコプロが今年の10月19日に55周年を迎える。それを記念し、1974年から1975年にかけて放送されたテレビアニメ「破裏拳ポリマー」が実写化され、5月13日より全国公開。“破裏拳”の達人である鎧武士(よろいたけし)の活躍をド派手なアクションとともに描き出す。

映画ナタリーでは映画の封切りを前に、キャストの溝端淳平と山田裕貴、監督・坂本浩一のインタビューを公開。また原作のアニメや「ガッチャマン」「キャシャーン」などに参加した脚本家・酒井あきよしにインタビューを実施し、タツノコプロの魅力を語ってもらったほか、本作とタツノコプロのつながりに迫った紹介記事を展開する。

取材・文・撮影 / 伊東弘剛

正義のヒーロー鎧武士を熱演!溝端淳平 インタビュー

──オファーを受けたときの心境と役どころを教えてください。

僕、ヒーローものに出演したことがなかったんです。もうできないとあきらめていたので、出演できると聞いて楽しみでした。鎧武士は、一匹狼で破天荒だけど、情に厚くて根っこに正義感がある男で、ヒーローものの王道のような人物です。

──バディを務める来間譲一役の山田裕貴さんとの初共演はいかがでしたか?

「破裏拳ポリマー」より、左から鎧武士(溝端淳平)、来間譲一(山田裕貴)。

気も使えるし、空気も読めるし、面白いし、何よりも芝居に対してすごく熱い男なんです。ワンシーンワンシーン撮影が終わるたびに「やりにくくなかったですか?」「ここはこうですよね?」とか言ってきてくれて、シーンをよくするためにいろいろと話せました。でもふざけるときは一緒にバカできて、現場での相性はよかった。ピュアでかわいいですし、裕貴がいると現場が楽しいです。

──激しいアクションが魅力的に描かれていますね。

「破裏拳ポリマー」より。

本格的なアクションが初めてだったということもあり大変でした。練習もたくさんして臨んだんですけど、坂本組独特の手法なのか、現場で動きが変わるんですよ。その場で覚えなくちゃいけないから大変なんですけど、そのことによってテンションが上がりましたし、現場にライブ感が生まれていましたね。

──撮影を振り返ってみていかがですか?

楽しかったです。こういう役柄も初めてだったし、アクションも含め新しいことを経験できました。憧れの存在であるヒーローになれて本当によかった。スタッフも情熱的な方が多くて、現場に行くのが楽しかったです。

純粋な刑事・来間譲一に共感!山田裕貴 インタビュー

──オファーを受けたときの心境と役どころを教えてください。

デビュー作の「海賊戦隊ゴーカイジャー」でご一緒した坂本浩一監督とまた仕事ができると聞いてうれしかったです。溝端さんをはじめご一緒するのが初めての方ばかりだったので、新たな刺激をいただけそうだと思っていました。来間譲一はまっすぐでピュアな男です。僕自身似たような部分があると思っているので、純粋に感じたまま動いてみようと考えていました。あとは武士とのバディ感を大切にしました。

──溝端淳平さんとは初共演ですが、どのような印象を持たれましたか?

「破裏拳ポリマー」より。

びっくりするほど優しかったです。初日から「芝居やりづらくない?」って聞いてきてくださって、そのときこの人がパートナーでよかった!ってすごく思いました。ディスカッションしながら撮影ができましたし、1歳違いなので音楽やお笑いについての他愛もない話もできて、波長が合う方でした。

──坂本監督とのお仕事はいかがでしたか?

何度かご一緒しているので、僕のことをわかってくださっているんですよ。だから演技の提案をしやすいし、僕が考えているものをすべて拾ってくださって、もう感謝しかないです。あと監督の「よーい、はい!」という声を聞くとすごく懐かしい気分になって、初心を思い出せました。

──山田さんもアクションに挑戦していますね。

坂本監督はすごくカッコよく撮ってくれるので、いっぱい戦えたらと思っていたのですが、やられるシーンが多かったです(笑)。でもやられても這い上がるところが譲一らしさだと思いましたし、そこで譲一の人間味を出せればと考えていました。

憧れの原作を実写化!坂本浩一 インタビュー

──原作のテレビアニメが好きだったと聞いています。

坂本浩一

僕は1970年生まれでタツノコ世代。「破裏拳ポリマー」は子供ながらにその当時珍しい作品だと思っていました。コメディとヒーローアクションの両方の面を持ち合わせた作品で、その頃の格闘技ブームも手伝い憧れていました。

──実写化するうえで注意した点はありますか?

アニメ放送当時はよかったけれど、今やると矛盾する点や不自然に感じる点があるので、どのようにアレンジしていくか試行錯誤しました。あとアクションは必殺技の“破裏拳”を新たに解釈して、ブルース・リーが創設したジークンドーを取り入れて、裏拳を主体として組み立てて行きました。またポリマースーツごとにアクションを細かく分けています。アニメの必殺技をいかに再現するかにもこだわりましたね。

──溝端淳平さんにオファーした理由は?

「破裏拳ポリマー」のメイキングカット。左から山田裕貴、溝端淳平、坂本浩一。

あからさまに兄貴肌の役者さんでは意外性がなく面白くないですし、ポリマースーツを着るにあたってスタイルがよく、運動神経があるなどいろいろな要素を考えたときに溝端くんしかいないと思いました。いつも弟分的な役柄を演じている印象でしたが、実際の撮影では主人公と同じような兄貴肌な部分もありましたし、普段の明るい感じが役に合っていたと思います。

──これから作品を観る人たちに一言いただけますか?

特に普段アクション映画を観ない女性の方にカッコいいヒーローに触れてみてほしいです。特撮好きの方だけではなく、溝端くんと山田くんのバディ感、男同士の熱い友情もあるのでときめくところも多いと思います。

「破裏拳ポリマー」
2017年5月13日(土)全国ロードショー
「破裏拳ポリマー」
ストーリー

組織犯罪に対抗するため、警視庁と防衛省はポリマースーツと呼ばれる特殊装甲スーツを開発。しかし、軍隊をも壊滅できる絶大な力を危険視した当時の警視総監は、その力を封印する。数年後、ポリマースーツの開発が再開されるが、テスト版ポリマースーツのうち3体が盗まれ、その強大な力を使った犯罪が頻発する事態に。盗まれたポリマースーツを取り戻すためには、特定の声によって初めて起動するオリジナル版を使うしかない。刑事部長の土岐田は、最強の拳法・破裏拳の唯一の継承者でありながら元ストリートファイターで今は探偵の鎧武士に捜査協力を求める。彼こそ世界で唯一オリジナル版を着用できる男だったのだ。武士は、心優しき新米刑事の来間譲一とバディを組み、捜査に乗り出していくが……。

スタッフ / キャスト

監督:坂本浩一
原作:タツノコプロ
脚本:大西信介
キャラクターデザイン:野中剛

鎧武士:溝端淳平
来間譲一:山田裕貴
稗田玲:原幹恵
南波テル:柳ゆり菜
八城章人:神保悟志
土岐田垣:長谷川初範

溝端淳平(ミゾバタジュンペイ)
1989年6月14日生まれ、和歌山県出身。2006年に開催された第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを獲得。2007年放送のドラマ「生徒諸君!」で俳優デビューを飾る。その後2008年放送の「ハチワンダイバー」でドラマ初主演、同年公開の「DIVE!!」で林遣都、池松壮亮とともに主演を務める。ほか出演作は「赤い糸」「君が踊る、夏」「黄金を抱いて翔べ」「珍遊記」など。出演する舞台「ミッドナイト・イン・バリ~史上最悪の結婚前夜~」が9月より全国で公演される。
山田裕貴(ヤマダユウキ)
1990年9月18日生まれ、愛知県出身。2011年に放送を開始した特撮ドラマ「海賊戦隊ゴーカイジャー」で俳優デビュー。その後もドラマ、映画に出演を重ね、公開待機作に「トモダチゲーム 劇場版」「HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY」「HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION」「亜人」「二度めの夏、二度と会えない君」「あゝ、荒野」(前篇・後篇)が並ぶ。現在、TBS系にて放送中のドラマ「3人のパパ」、Amazonプライム・ビデオにて配信中のドラマ「ガキ☆ロック」にも出演している。
坂本浩一(サカモトコウイチ)
1970年9月29日生まれ、東京都出身。倉田アクションクラブを経て、1989年に渡米。「サイボーグ2」「リーサル・ウェポン4」などにスタントマンやアクション俳優として参加する。1995年にアメリカの特撮ドラマ「パワーレンジャー」のアクション監督に抜擢され、その後監督やプロデューサー、製作総指揮を歴任。特撮ドラマの監督作には「海賊戦隊ゴーカイジャー」「仮面ライダーW」、監督した劇場公開作には「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」「赤×ピンク」「仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴースト with レジェンドライダー」などがある。