ジムに行っては焼き鳥を食べて、生ビールで乾杯(東出)
──北九州で2度の長期ロケを行ったそうですが、男性キャストばかりということもあり、“男臭い”現場だったのでしょうか。
町田 男臭かったですね。ごはんもみんな一緒に行ってました。でっくんはマッケン(新田真剣佑)とずっとジムに行ってましたし、現場全体が終始汗臭かったですね(笑)。
東出 本当だね(笑)。ジムに行っては焼き鳥を食べて、ジョッキの生ビールでガツンと乾杯して。
──ドライバーに比べると、東出さんの役は筋肉があからさまに見えるようなカットはなかったかと思うんですが、そんなに鍛えていたんですか?
東出 そうですね。メカニックとして腰を鍛えないといけなかったので。あとジムには(北村)匠海も一緒に行ってましたし、みんなで仲良く余暇を過ごすっていう意味も大きかったですね。楽しかったですし、青春でした。
──少し脱線しますが、エンディングで流れるメイキング映像で、メカニックチームの皆さんが「Choo Choo TRAIN」の踊りをしていましたよね。あれは町田さんが所属する事務所つながりなのかなと……。
町田 いや、絶対違いますね!(笑)
東出 ずっと反対してたよね。
町田 僕はずっと「先輩たちに怒られますから!」って言ってて。でも羽住組ではあれが恒例だと聞いて、「確かに! じゃあやらせていただきます」と。
東出 一番ビクビクしてたよね。でもみんなが「いいからいいから、啓太前に行け!」って(笑)。
町田 みんな、すごい押してくるんですよ! 先輩方になんて言われるかハラハラするので、先に事情を話しておきます(笑)。
でっくんが工具を見つめて「これ欲しいんだけど」(町田)
──先ほど東出さんがおっしゃっていた、羽住監督の「役者バカであれ」という言葉について伺えればと思います。お二人の考える“役者バカ”とはどんな人物ですか? またご自身は役者バカだと思いますか?
東出 役者にはいろんなタイプがいるので、その日にもらったセリフをすぐに演じることができる方もいて、それは素晴らしい技術だと思うんです。ただ自分のタイプとしては、やっぱりセリフの意味がわかっていないと駄目で。メカニックの役をやるんだったら、本物のメカニックの方から見て「あいつはちゃんとわかってる」と言われるようになりたいんです。時間がない現場もある中で、今回は専門用語を教えてくださる方がいて、メカニックの技術を勉強させてもらう機会もあったので、本当にありがたかったです。まず監督が「この車、バラせ」と言って車を1台持ってきてくれたんですよ。それだけ役者バカを信頼してくれていて、役者バカが好きだということがわかって、大変光栄でした。
町田 そうですね。僕はこういうでっくんを見ていて、いい意味で「役者バカなんだなあ」と思ってました(笑)。
東出 いやいや、啓太も“バカ”だよ(笑)。
町田 “バカ”じゃないよ、俺は! 一番面白かったのは、あるときでっくんがずっと工具を見つめていたので「どうしたの?」って聞いたら、「いやあ、これ欲しいんだけど、買おうかどうか迷ってる」って答えたことですね(笑)。
東出 ははは! 嘘、俺そんなこと言った!?
町田 言ってました! すごいなと思いましたもん。でも、役者バカってそういうことなのかなって。狙っているわけではなく、本気でその世界に染まっている、のめり込んでいるっていうのは、見ていて面白いし清々しい。やっぱりそういう人が、お芝居に対して素晴らしい“バカ”なんだと思います。まあ、一番“バカ”なのは羽住さんだったと思いますけどね。もちろん素敵だという意味で!
俳優をやめられない理由は多い(東出)
──劇中では、表舞台に立って戦うドライバーと、コツコツと裏で支えるメカニックの姿が対照的に描かれていました。俳優という表舞台に立つ職業だからこそ意識していることはありますか?
東出 僕は正直、裏も表もないと思っていて。こうやって取材していただいて話す言葉は、僕自身の言葉でもあるけど、僕が現場で感じたものやスタッフの皆さんから受け取ったものでもあるんです。この映画では、番手で言うと主演を務めさせていただいていますが、俳優部は1人ひとりが主役でいい、1人ひとりがその役の人生を全うしてほしいと思っていて。そう考えると番手に関係なくみんながそれぞれ1つのパーツであるべきだし、それは撮影部も照明部も美術部も同じです。
──なるほど。
東出 でももちろん俳優部は人々の目に触れやすい立場ではあるので、責任を持ってやっていることには変わりないです。ただ僕はみんなで一緒に表に立っているし、みんなが裏方だと思っています。
町田 僕もあまり表と裏の境を気にしたことはないですね。ただやっぱり、例えば「OVER DRIVE」で言うとでっくんの主演作というイメージがあるじゃないですか。だからそれを背負う責任は生まれてくると思いますし、僕も出演させてもらったからには、こういう場でも責任を持って発言させてもらおうと考えています。
──森川葵さん演じるひかるが篤洋に「なんでラリーやってるんですか?」と聞くセリフが印象的でした。お二人は「なんで俳優やってるんですか?」と問われたらなんと答えますか?
町田 僕はもともとすごくフラフラした人間で、目の前に楽しそうなことがあったら飛びついてやってみるようなタイプだったんです。失礼に聞こえてしまうかもしれませんが、俳優というお仕事を始めたのも最初は興味本位で。でもそうしてやっていくうちに、いろいろな作品やスタッフさん、共演者の方々との出会いがあって、毎回すごく新鮮だったんです。そういうことの積み重ねがあったから、今も俳優をやっているんだろうなと思いますね。
東出 俳優をやっている理由は正直わからないんですが、俳優をやめられない理由はすごく多いです。それはごはんを食べていくためとか、生活のためにということももちろんありますが、例えば自分が1カ月の撮影をがんばって、10万人のお客さんが観てくれたとしますよね。それで10万人の人が2時間いい思いをして、それによって将来の夢を持ったり「明日もがんばろう」「ちゃんと学校に行こう」と思ったり、生きる希望を得られるとしたら、こんなに影響力の大きい仕事はないと思います。きれいごとを言うようですけれど、自分のために俳優をやっているとか、演じている瞬間が楽しいから俳優をやっているという意識はあまりないです。苦労してでも10万人が「観てよかった」と思ってくれたらこれ以上のことはない、それがやめられない理由かなと思います。……まあ、10万人が観てくれたらいいんですけど(笑)。
男性たちに「俺らは味方だから!」と言いたい(東出)
──この特集は対談の2本立てになりますので、ドライバーチームの新田さん、北村さんの印象を伺えればと思うのですが。
町田 マッケンは、とにかく出会ったときの衝撃が半端なかったですね。「なんだこの彫刻みたいな顔は!」って(笑)。それでいて本当にナイスガイで、陽気で、ずーっと現場を楽しんでいる。僕もそこに引っ張られる感じがあって、魅力的でした。匠海は……なんであの歳でこんなに落ち着いてるんだろう? 人生何周したらこうなるんだろう?という印象で。その2人のバランスがすごくよかったんです。お互いが持っていないものを持っていて、見ていて面白かったです。
東出 マッケンは天真爛漫で太陽のようでもあるんですけど、ちょっと親しくなるとデリケートな、ある意味“闇”の部分みたいなものも見える(笑)。その両方を持っているから魅力的ですし、役者をやっていくうえで強みになると思いました。匠海は一見穏やかで静かなんですけど、深く知ってみると“男が惚れる男”というか。歳上の僕から見ても男らしいんです。あの歳で“好青年”ではなく“いい男”である人は珍しいんじゃないですかね。
──ありがとうございます。では最後に、メカニックチームがオススメする本作の見どころを教えてください。
町田 メカニックの……泥臭さ(笑)。
東出 うん(笑)。
町田 みんな本当に泥まみれになって、本気の汗を垂らしながらやっていたので。その匂いは画面を通しても伝わるんじゃないかなと思います。シーンで言うと、嬬恋ラウンドでのレースのときに、大破したスピカの車を全員でバラしていく場面があるんです。完成版では作業の冒頭部分だけが映っているんですが、現場では車が骨組みだけになるまでずっと外し続けていたんですよ。そういう本気度合いも映像に乗っかっていると思うので、そこを観て「男臭くていいなあ」と思ってもらえたらうれしいですね。
東出 マッケンの肉体美や、記者会見シーンで鋭い眼光を放つ匠海など、女性が観に行きたいと思ってくれるようなポイントはもちろんたくさんあります。でも間違いなく、男ウケのいい映画でもあると思います。だから彼女に「あの映画、一緒に観に行こうよ」と言われた男性がいたら、「おい、そこの彼氏! 俺らはお前の味方だからな!」と言いたい(笑)。
一同 (笑)
東出 男だけで観に来てもらっても、「俺らはお前らの味方だから!」と言えるので大丈夫。この映画の中で僕らは、男に寄り添う存在でいます。
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新田真剣佑×北村匠海 ドライバー対談
- 「OVER DRIVE」
- 2018年6月1日(金)全国公開
- ストーリー
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公道での自動車競技“ラリー”の世界最高峰、WRC(世界ラリー選手権)。その登竜門である国内トップカテゴリーのSCRS(SEIKOカップラリーシリーズ)では、若き才能たちがしのぎを削っていた。WRCへのステップアップを目指すスピカレーシングファクトリー所属の天才ドライバー・檜山直純は、真面目で確かな腕を持つメカニックの兄・篤洋の助言を無視し、リスクを顧みない勝ち気なレースを展開。ラウンドごとに衝突を繰り返す2人だったが、ある日直純の新しいマネジメント担当の遠藤ひかるがやってきて……。
- スタッフ / キャスト
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監督:羽住英一郎
脚本:桑村さや香
音楽:佐藤直紀
主題歌:WANIMA「Drive」(unBORDE / Warner Music Japan)
出演:東出昌大、新田真剣佑、森川葵、北村匠海、町田啓太、要潤、吉田鋼太郎
©映画「OVER DRIVE」製作委員会
- 東出昌大(ヒガシデマサヒロ)
- 1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。モデルとして活動後、2012年に「桐島、部活やめるってよ」で俳優デビューし日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞した。主な出演作に「デスノート Light up the NEW world」「聖の青春」「関ヶ原」などがある。2018年には参加した映画「パンク侍、斬られて候」「菊とギロチン」「寝ても覚めても」の公開を控えるほか、現在フジテレビ“月9”枠のドラマ「コンフィデンスマンJP」へ出演中。
- 町田啓太(マチダケイタ)
- 1990年7月4日生まれ、群馬県出身。2010年に第3回劇団EXILEオーディションに合格し、俳優デビュー。主な出演作に「HiGH&LOW」シリーズや、「劇場霊」「こいのわ 婚活クルージング」といった映画、「花子とアン」「人は見た目が100パーセント」「女子的生活」といったドラマがある。2018年には大河ドラマ「西郷どん」に参加。劇団EXILEと映画監督・SABUのコラボレーションによる映画プロジェクト「jam」の始動もアナウンスされている。
2018年5月30日更新