印象に残ったのはよだれ玉
──「アウトレイジ 最終章」で特に印象に残った場面を教えてください。
瀧さん(花田)のよだれ玉です(即答)。
──(笑)。
瀧さんは登場から面白い。予告編とか観ていたときはもっとイケイケな人物なのかと思っていたんですが。くじかれるまでのスピードが想像以上に速かった。
──大友が匿われている張グループと西田たちの花菱会が起こすいざこざのきっかけを作るだけでなく、花田は要所要所で物語を大きく展開させていきますよね。
今回たけしさんが怖かった。まさに暴走してました。日本に帰ってきてから特にそうですが、顔は冷静なのにやることは過激というか、暴走したまま止まらない。
──池内博之さん演じる吉岡との場面やバンのシーンなど大友の表情がつかめないぶん本当に怖い。
あと大友と市川の殴り込みの場面はカッコよかった。乱射するシーンとか痺れましたね。僕は銃の1発1発にビクビクしちゃってましたけど(笑)。
──北野監督の過去作「ソナチネ」を思わせる印象的なシーンに仕上がっています。
塩見さんが西田さんに対して仁義を見せる場面もよかった。それと大杉さんが「ビヨンド」の加瀬さんみたいにヒステリックで嫌なやつを演じていて、今回もこういう登場人物がいて安心しました。あとは山王会が小さくなってたなーと(笑)。
顔は法人モードなのに見た目がそれに伴っていない
──本作で一番ツッコミを入れたくなったキャラクターは誰ですか。
やっぱり花田ですね。位置関係がわからずに噛み付いちゃったり、絵に描いたような典型的な失敗を重ねていくので。出来事のきっかけを作っていく人物でもあり、ツッコむポイントが多いし、豪快なようでいて豪快じゃない感じもいい。何より性癖が偏っていて、冒頭から面白い。
──性癖に関しては山里さんと重なるのでは?
僕はここまでハードじゃない(笑)。大友とのシーンで、精神的なスイッチや顔は法人モードになっているのに、見た目はそれに伴っていないのが面白かった。ツッコミどころ満載で。堂々としているけど偏った性癖を満足させるいろんなアイテムが散らかっていて、あのギャップがいいですよね。あとは山王会のポンコツ2人組かな。何1ついいところなく終盤に向かっていくのでツッコミがいがある。
──自分が「アウトレイジ 最終章」の世界に入ったらどのポジションだと思いますか。
とにかく花田の下は嫌だなあ(笑)。
──花田がお気に入りですね(笑)。
僕はマル暴(警視庁組織犯罪対策部)で上の意見に従順に従っていそうですね。繁田(松重豊)みたいに自分の信念を持った人間ではなく、魅力のない人間になっていそう。かと言って花菱会側に入る自信もないですし、花田の下の丸山(原田泰造)みたいに兄貴のために死のうとかという感覚もない。
──過去作では自分の利益のためだけに動くマル暴・片岡(小日向文世)が多く登場していたということもあり、信念を持った繁田の姿がカッコよく映ります。
そうなんですよね。あと偉いキャラクターでできそうなのは野村ですね。僕は虎の威を借るタイプなんで、野村みたいにお金やポジションをもらって偉そうにするのはできそう。昔、兄貴がめちゃくちゃヤンキーで、僕が中学に入ったとき、中2と中3のヤンキーが挨拶しにくるぐらい影響力があったんです。それでその人たちの言葉に対して「兄貴に伝えとくわー」と言っているタイプだった(笑)。
──それは確かに野村っぽい(笑)。
野村みたいに嫌なこと言うのもすごい得意です(笑)。
泰造さんのあんな表情見たことない
──北野監督は過去作のときのインタビューで“悪い人”のイメージがない人をキャスティングしている旨発言しています。
ギャップを大切にしているということなのかもしれませんね。確かに皆さんほかの作品やバラエティ番組では見せない表情をしています。いい人にこの作品で登場するような人物をやらせることで悪さを強調しようとしているんですかね? そういえば、チャンバラトリオの南方(英二)師匠が「ソナチネ」に出たとき、殺し屋の役だって知らされなかったそうです。真顔でやってもらったほうが怖いからって理由だったようで。確かに殺し屋って聞くと眉間にシワ寄せちゃったりしそうですし、今回もそういう演出があったのかもしれませんね。
──今回ネプチューンの原田泰造さんが出演されていますが、いかがでしたか?
すごいギャップがありました。泰造さんは普段は物腰柔らかで、本当に優しい方なんです。本作に登場する丸山のイメージはまったくなかった。あんな表情見たことない。
──襲撃のシーンで鬼気迫る表情を見せていますね。
本当に。北野監督は、深層心理で違和感を持ってしまうような人を選ぶことで、無意識的に恐怖を生み出して、シーンのインパクトを向上させているのかもしれませんね。
──山里さんのようにご本人にお会いする機会がある人だとなおさら怖いでしょうね。
皆さん殺すときの顔が本当に怖い。ステレオタイプな顔がほとんどないですし、タマ取ったあとで震えているやつとかヤクザ映画の典型みたいな人物も全然いない。そういう人たちが耳を傾けなきゃ聴き取れないようなテンションでセリフをしゃべるじゃないですか。僕これ聴き取れなかったら殺されるんじゃないかと思ってしまいました(笑)。それぐらい画面に緊張感があったし、そういうもしも話が自然と頭に浮かぶってことはそれだけリアリティを感じさせられているということかなと。とんでもなく離れた世界なのに身近に感じてしまうところがすごい。
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「アウトレイジ」は何かに例えられない究極の形
- 「アウトレイジ 最終章」
- 2017年10月7日(土)全国ロードショー
- ストーリー
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元はヤクザの組長だった大友は、日本東西の二大勢力であった山王会と花菱会の巨大抗争のあと韓国に渡り、歓楽街を裏で仕切っていた。日本と韓国を股にかけるフィクサー張のもとで働き、部下の市川らとともに海辺で釣りをするなど、のんびりとした時を過ごしている大友。そんなある日、取引のため韓国に滞在していた花菱会の幹部・花田から、買った女が気に入らないとクレームが舞い込む。女を殴ったことで逆に大友から脅され大金を請求された花田は、事態を軽く見て側近たちに後始末を任せて帰国する。しかし花田の部下は金を払わず、大友が身を寄せる張会長のところの若い衆を殺害。激怒した大友は日本に戻ろうとするが、張の制止もあり、どうするか悩んでいた。一方、日本では過去の抗争で山王会を実質配下に収めた花菱会の中で権力闘争が密かに進行。前会長の娘婿で元証券マンの新会長・野村と、古参の幹部で若頭の西野が敵意を向け合い、それぞれに策略を巡らせていた。西野は張グループを敵に回した花田を利用し、覇権争いは張の襲撃にまで発展していく。危険が及ぶ張の身を案じた大友は、張への恩義に報いるため、そして山王会と花菱会の抗争の余波で殺された弟分・木村の仇を取るため日本に戻ることを決めるが……。
- スタッフ
監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一- キャスト
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大友:ビートたけし
西野:西田敏行
市川:大森南朋
花田:ピエール瀧
繁田:松重豊
野村:大杉漣
中田:塩見三省
李:白竜 -
白山:名高達男
五味:光石研
丸山:原田泰造
吉岡:池内博之
崔:津田寛治
張:金田時男
平山:中村育二
森島:岸部一徳 ※「アウトレイジ 最終章」はR15+作品
©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
- 山里亮太(ヤマサトリョウタ)
- 1977年4月14日生まれ、千葉県出身。しずちゃんとのコンビ・南海キャンディーズでツッコミを担当。南海キャンディーズとして第25回ABCお笑い新人グランプリや第40回上方漫才大賞で優秀新人賞を獲得するなど高く評価されているほか、2004年、2005年に出演したオートバックスM-1グランプリで知名度を上げる。ソロ活動では「たまむすび」「山里亮太の不毛な議論」といったラジオ番組、「スッキリ!!」「ヒルナンデス!」「アウトデラックス」「東大王」といったテレビ番組にレビュラー出演中。また「手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャー THE MOVIE 忍者・イン・ワンダーランド」に出演したほか、「映画プリキュアドリームスターズ!」「パワーレンジャー」では声優に挑戦している。