小関裕太が語る「メリー・ポピンズ リターンズ」|あの魔法に再び会える!俳優の道へ導いてくれた僕の原点

クラシックのよさも改めて感じられる

──ほかにも続編ならではのよかった部分はありましたか?

メリー・ポピンズを演じたエミリー・ブラントが素敵でした。脚をくっ付けてつま先を外側に向ける、あの特徴的な立ち方をうまく再現されてましたね。(前作でメリー・ポピンズを演じた)ジュリー・アンドリュースと比べてしまう瞬間がまったくなくて、これがメリー・ポピンズだ!と思わされる堂々とした風格がありました。

「メリー・ポピンズ リターンズ」より、エミリー・ブラント演じるメリー・ポピンズ。前作にもあった“違う動きをする鏡”のシーン。

──さらに今回は9曲もの新曲が作られました。

新曲の多さには驚きました。その中に「チム・チム・チェリー」とか前作の楽曲と同じ音が入ってて、ディズニーはこういうところがイケてるなと思ったり(笑)。

──中でも楽しかった楽曲は?

小関裕太

「Turning Turtle(ひっくりカメ)」がキャッチーで面白かったです。そういえばこのシーンで気になったんですけど、何度も繰り返される「第2水曜日」というワードにどんな意味があるのかわからなくて。恐慌に関係あるのかな?と思って、観終わったあと父に電話したんです。金融関係の仕事をしてるので。でもイギリスの銀行や証券会社には「第2水曜日」や「水曜日」にまつわる何かは特にないみたいでした。

──「第2水曜日は嫌い。でもひっくり返したら考え方が変わって水曜日が好きになった」という言葉が出てくるシーンですね。

「ブラックサーズデー(ウォール街大暴落)」が関係あるのかな。木曜の前日だから水曜が嫌いとか? うーん。でも脚本が素晴らしいこの映画において、世界恐慌の時代を背景にしたのも必ず意味があってのことだと思うので、「第2水曜日」にも何かあるんだろうなと思います。

──大迫力で描かれる街灯夫たちのミュージカルシーンはいかがでしたか?

「メリー・ポピンズ リターンズ」より、街灯点灯夫たちをメインとしたミュージカルシーン。

ダンスの力を感じました! ここ20、30年ぐらいの間でストリート、ヒップホップ、ロック、ハウスとダンスの種類がどんどん刻まれてますけど、「メリー・ポピンズ」はあくまでクラシックなのがいいです。タップダンスの中でも「ストリートタップ」と「クラシックタップ」に分かれていて。(立ち上がって踊りながら)「メリー・ポピンズ」は胸を張って背筋を伸ばすクラシックなスタイル。現代の人が観ることで、クラシックのよさも改めて感じられるんじゃないでしょうか。

自分を奮い立たせてくれる映画

──たくさん感想をお伺いしましたが、子供の頃とはだいぶ観方が変わったのでは?

はい。幼少期に「メリー・ポピンズ」を観たときは「Supercalifragilisticexpialidocious(スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス)」とかいつも口ずさんで、僕の生活の中にあった作品なんです。歌って踊って楽しい映画だなって。でも今観るとそれだけじゃない。“2ペンス”に対する価値観が変わるし、違うものが見えてきます。

──大人にならないと気付かないこともあると。

「メリー・ポピンズ リターンズ」より、ベン・ウィショー演じる大人になったマイケル。

前作ではお父さんが悪者みたいに描かれていますが、バートが子供たちに「君たちのお父さんは毎日楽しいわけじゃない。銀行で冷たいお金に囲まれて過ごしてる。それでも働かなきゃいけないんだ」と言ったセリフが響くようになりました。僕の父はただのサラリーマンですけど、同じように冷たいお金に囲まれて働いてるのかな? 味方してくれる人はいるのかな?と考えてしまって。だから父親をちょっといいお店にごはんに誘って、会話する時間でも作ろうかなと思います(笑)。

──きっと喜びますね。大人になったマイケルは画家を目指していますが、生活のため銀行で働いています。大人は彼に共感できる部分があるかもしれません。

僕自身こういう仕事をしていますが、芸術がお金に直結しないものであることもよくわかってます。でも世界恐慌の時代、働いて稼いで重宝されている人たちも、時に苦しむことがあったはず。そんな中、日常に彩りを加えてくれるのがアーティスト。映画では悪いことに悪いことが重なり負の連鎖が起きていきますが、それを解決に導いてくれるのがメリー・ポピンズで。大人が観るとつらいことにも楽しいことにも共感できるし、自分を奮い立たせてくれる映画だと思いました。

子供たちを映画館に連れて行ってほしい

──ご自身の今後の活動に向けても、映画からいい刺激を得られましたか?

はい。アニメーションと実写が融合したショーの場面で「ああいうステージにもっと立ちたいな」と思いましたし、映画にもらった感動を僕もパフォーマンスで皆さんに届けたいです。

「メリー・ポピンズ リターンズ」より、メリー・ポピンズ(左)とジャック(右)がステージで踊るシーン。

──ステージでのパフォーマンスといえば、2012年の「Amuse presents『SUPER ハンサム LIVE 2012』」(小関が所属する芸能事務所アミューズのファン感謝祭)ではタップダンスを披露されていましたね?

あれはめちゃくちゃ緊張しました! 後ろで先輩の佐藤健さんと三浦春馬さんがスタンバイしていて、全然知られてない僕が何千人もの前でタップダンスを踊って。楽しむよりもステップを踏むことに精一杯でした。「好きなように踊っていいよ」と任せてもらえたので、全部アドリブだったんです。でも逆にプレッシャーでしたね(笑)。

──最近もタップダンスのレッスンに通われているのですか?

実は最近また復活して。僕は時間の使い方がずっと下手で、なかなか自分の原点であるはずのタップダンスができずにいたんですけど、最近ようやく自分の時間を作れるようになってきて。この映画の力もお借りして皆さんを奮い立たせるパフォーマンスができるようにならなきゃと思いますし、もっとタップダンスも人にお見せできるようがんばりたいです。

──「メリー・ポピンズ リターンズ」を観て、昔の小関さんのように「自分も踊りたい!」と思う子供もいるかもしれませんね。

“楽しい”だけを求めてる純粋な時期に観てほしいです。大人は自分で作品を選んで観るけど、子供は選んでもらわないと出会えない。大切な思い出の映画になるはずなので、ぜひ子供たちを映画館に連れて行ってあげてほしいです! 大人の皆さんにとっても「空からメリー・ポピンズが降りてくるかもしれない」「バスタブの中に海が広がってるかもしれない」、そんな想像で普段の生活を彩り豊かにしてくれる映画だと思います。

「メリー・ポピンズ リターンズ」より、メリー・ポピンズの魔法でバスタブの底から海の冒険に繰り出すシーン。
小関裕太(コセキユウタ)
1995年6月8日生まれ、東京都出身。2003年にデビュー。2006年から2008年にかけてNHK「天才てれびくんMAX」のてれび戦士として活躍するなど、子役として俳優活動をスタートさせる。その後、映画「あしたになれば。」「Drawing Days」「ドロメ 男子篇」「覆面系ノイズ」、ドラマ「ごめんね青春!」「恋がヘタでも生きてます」、舞台「ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン」や「FROGS」「わたしは真悟」など多くの作品に参加してきた。2018年は映画「ちょっとまて野球部!」「曇天に笑う」「わたしに××しなさい!」「春待つ僕ら」、ドラマ「ゼロ 一獲千金ゲーム」や連続テレビ小説「半分、青い。」などに出演。2019年2月22日には「サムライマラソン」が封切られる。