「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」特集|主人公と一緒に3D眼鏡を掛けてください──驚異の60分ワンカットで巡る夢と記憶の時間旅行

Column

長回しの本番は計5回、3Dへの不安と啓示

「凱里ブルース」 ©Blackfin (Beijing) Culture & MediaCo.,Ltd – Heaven Pictures (Beijing) The Movie Co., - LtdEdward DING – BI Gan / ReallyLikeFilms

長編デビュー作「凱里ブルース」でも後半40分間のワンカットを実践していたビー・ガン。しかし限られた予算で制作した前作では、技術的な部分から満足のいく結果を得られなかったという。

そして「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」で再び長回しに挑戦。さらに主人公の旅路を前半とは異なる質感にするため3Dでの表現を選んだ。ビー・ガン曰く「すべてを事前に計画し万全を期す必要があった」という3Dワンカットの撮影は、広大な美術セットが組まれた凱里の郊外で行われている。

「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」

撮影直前まで大きな不安を抱えていたが、ウォン・カーウァイ作品で知られる照明のウォン・チーミンの存在が支えになった。ビー・ガンは「彼が照明を準備するや否や、私は再び啓示を受けたように感じました。何も妥協する必要がないことを知らしめてくれた」と、その多大な影響を明かす。

撮影監督は計3人がクレジットに名を連ねており、3D部分の撮影は「裸足の季節」で知られるフランス人ダーヴィッド・シザレが担当。基本的にルオの行動を追っていく長回しだが、徒歩はもちろん、トロッコやバイク、リフト、空中浮遊といった移動シーンを流れるようなカメラワークで捉えていく。本番は計5回のテイクが重ねられ、最後のショットが本編に使用された。3Dのイメージを「単なるテクスチャー」「からくり」とも語っているビー・ガンの真意とは。ぜひ主人公と一緒に映画館で眼鏡を掛けて、新しい3D映画を体験してほしい。

「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」メイキング写真

なおコロナウイルスの影響により、観客へ3D眼鏡を貸与するシステムの映画館では、当初予定していた3D上映が中止となった(2020年2月28日現在)。2D版では画面が明るく保たれるため、ビー・ガンこだわりの美術セットのディテールをより細部まで堪能できるという利点がある。上映の詳細は映画の公式サイトで確認を。

また「凱里ブルース」も4月18日より全国で順次公開される。

本作に影響を与えた3D映画たち
「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」

アルフォンソ・キュアロン「ゼロ・グラビティ」(2013年)

「ゼロ・グラビティ」(写真提供:Warner Bros. / Photofest / ゼータ イメージ)

宇宙空間に放り出された女性の姿を描いたSFサバイバル。公開当時、無重力空間を縦横無尽に動き回る長回しのカメラワークが大きな話題を呼んだ。

ビー・ガン
「“3Dによる長回し撮影”という技術面で直接参考にしました」

アン・リー「ビリー・リンの永遠の一日」(2016年)

「ビリー・リンの永遠の一日」(写真提供:TriStar Pictures / Photofest / ゼータ イメージ)

イラク戦争から一時帰国した青年の戦争体験と心の葛藤を描いたドラマ。世界で初めて毎秒120フレームという映像技術が用いられた4K撮影の3D映画として知られる。

ビー・ガン
「この作品ほど3Dを自然に取り込んだ映画を観たことがありませんでした。もう少し3Dの可能性を探求してみたいと思うきっかけになった作品です。大きく刺激されました」