「なんでそこまで相手しちゃうの?」
──メンゴ先生は作品で、男女の恋愛に限らず、恋愛以外の執着や寂しさについても描いてますよね。
恋愛や才能への執着はわかるものだからこそ描くのが楽しい一方、もちろんわからない種類の執着というのもあって。自分にはわからないが故にとても関心があります。女同士の巨大感情を描くのが、本当に好き。寂しさって数値化できなくて、他人と比べようがないから狂っていくんでしょうね。グレタも別に、自分が特別寂しがりとは思ってないだろうし。でも、その昔私もバスとか乗ってると、隣の席のおばあちゃんから「うちに来ない?」って言われたことがありました。1人で寂しくて疑似孫・疑似娘を求めている歳上女性には心当たりがあるかも。
──家まで付いて行くこと、あるんですか?
さすがに家は怖いなと思って断ってますよ。付いて行ったらこうなるのかな?という目線でも「グレタ GRETA」を観てました(笑)。私、けっこうフランシスタイプかもしれない。遺失物センターが閉まってたら本人に荷物届けちゃう気がするし、わりと不用心だし、女の人相手だと警戒心下がっちゃうし、面白いと思ったことに抗えないし……気を付けないと!
──(笑)
エリカに散々注意されていたけれど、私もよく友達から「なんでそこまで相手しちゃうの?」って言われることがあるんです。フランシスって、今相手にこの言葉を掛けたら癒やせるということに夢中になって、自分の発言が相手を依存させてしまわないかというところを無視しちゃうんですよね。その結果、人間関係が大変になる。もっと早く「あれ、この人危ないな」って気付けたはずだよなーって思っちゃうけど、なんなんだろうな。好奇心が強かったのはありますよね。エリカが誘ってくれた、同年代が集まるパーティには関心を持たないのに、親くらいの歳の身なりがきれいな女性には、新しいことが知れるかもと期待して付いて行っちゃう。
──グレタには、それだけの引力がありますよね。最初はいい関係に見えましたし。
行きすぎた執着によって人間関係がおかしくなった経験は私にもあります。なかなかそこから完全な関係に戻るのは難しいんですよね。対人関係には、ちょうどいいところで歯止めをきかせて、バランスをとって、維持するための努力が常に必要。失敗を経て学んだことではありますが……。「グレタ GRETA」を観たら、記憶がよみがえってきました。
グレタに必要なのは…町内会!?
──「グレタ GRETA」では、グレタとフランシスだけでなく、フランシスとエリカ、グレタとエリカの対比が物語にメリハリをつけていましたよね。
後半は、グレタとフランシスの関係を展開させつつ、フランシスとエリカの関係の大切さが身に染みましたね。「グレタ GRETA」に、エリカがいてくれて本当によかった。彼女は絶対闇落ちしないという安心感があるから、最後まで観れたところがあります。一貫してヘルシー。服によってキャラの違いが出ているのもすごいよかったな。同い歳なんだけど、エリカはイケてる女の子の服を着ていて、フランシスはまだティーンの面影が残っていて。
──だからこそ、グレタが、エリカをストーキングするシーンではかなり緊迫感を抱きました。
イザベル・ユペールの演技を観るのは初めてだったんですけど、美しい顔立ちだからこそ半端なく怖くて見入っちゃいました。グレタって、代替可能な関係性をずっと求めているところが独特ですよね。とっかえひっかえしている女の子の本質は見ていない。同じ関係性を模倣しようとすると、絶対にひずみが出るんですよね。「グレタ GRETA」で描かれている寂しさって、男性にもわかるものだろうとは思うのですが、「繰り返し」は女性独特の傾向だという気がするんです。前の失恋を、似たような相手との恋愛で埋めるという話は、女性から多く聞きますし。グレタはどうすればよかったのかな。町内会とかグループカウンセリングとか行ったらいいのに……と思いました。
──町内会(笑)。
グレタは家の中でピアノを弾いたり料理をしたり、よき主婦がたしなむ趣味ばかりしているんですよね。もっと外向きなことをやってほしい。エリカみたいに、ヨガ行くとか。マンガ家もね、家にずっと1人でいることの多い仕事なので、自分の声とばっかり向き合って病んじゃう人もいるんですよ。私も歳をとったら“寂しいモンスター”になる可能性は0ではないので、「グレタ GRETA」を通して、イメトレができたかもしれません。グレタのように若い女性との関係性だけにこだわって、寂しさを感じる物事を一本化してしまっているのは危険。もっと分散させないと。
──この映画を、どんな人に薦めたいですか?
寂しさや好奇心というのは、別に女性だけのものではないので、男女どちらにも観てもらいたい映画ですね。さっぱりしている人とさっぱりしていない人同士で行って感想を言い合ってほしい!
- 「グレタ GRETA」
- 2019年11月8日(金)公開
- ストーリー
-
ウェイトレスとして働くフランシスは、地下鉄内で置き忘れられたバッグを見つける。中に入っていた物から持ち主がグレタという女性であることを知ったフランシスは、彼女の自宅までバッグを届けることに。それをきっかけにして、未亡人のグレタと母親のいないフランシスは互いの寂しさを埋めるかのように交流を深めていった。しかしフランシスはある日、グレタの家の戸棚に自分が届けた物と同じバッグがいくつも並んでいるのを発見する。嫌悪感をあらわにするフランシスだったが、グレタによる付きまといは日に日にエスカレート。そして、フランシスの友人・エリカも巻き込んだ恐ろしい事態に発展する。
- スタッフ / キャスト
-
監督・脚本:ニール・ジョーダン
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
出演:イザベル・ユペール、クロエ・グレース・モレッツ、マイカ・モンロー、コルム・フィオール、スティーヴン・レイほか
- 「グレタ GRETA」公式サイト
- 【公式】映画「グレタ GRETA」 (@greta_jp) | Twitter
- 映画「グレタ GRETA」 (@greta.movie.jp) | Instagram
- 「グレタ GRETA」作品情報
©Widow Movie, LLC and Showbox 2018. All Rights Reserved.
- 横槍メンゴ(ヨコヤリメンゴ)
- 1988年2月、三重県生まれ。2009年、マガジン・ウォーにて成人向けマンガでデビュー。2010年にCOMICすももにて、エロマンガ家と双子美少女の三角関係を描いたコメディ「はるわか」の連載を開始する。2012年に週刊ヤングジャンプにて掲載された、岡本倫原作「君は淫らな僕の女王」は、ヒロインが自制心を失うという設定と、かわいらしい絵柄とエロのギャップが人気を呼んだ。同年、月刊ビッグガンガンにて、高校生の純粋かつ歪んだ恋愛を描く「クズの本懐」の連載を開始。テレビアニメ化、実写ドラマ化も果たした。2018年に「クズの本懐」の最終9巻となる「クズの本懐 décor」が発売。インターネット上ではヨリのハンドルネームで活動し、ニコニコ動画などボーカロイドを使用した楽曲のイラストも手がける。イラストレーターとしても活躍中。