岡田将生が主演、金子修介が監督を務めたクライムエンタテインメント「ゴールド・ボーイ」が、3月8日に全国で公開される。中国の作家ズー・ジンチェン(紫金陳)の小説「坏小孩(悪童たち)」を映画化した本作。完全犯罪をもくろむ男・東昇と、その犯行現場を目撃し共謀する子供たちの駆け引きが描かれる。
映画ナタリーでは、東昇を演じた岡田のインタビューを掲載。殺人犯という“共感できない”キャラクターの役作りや、東昇と対峙する安室朝陽に扮した羽村仁成(Go!Go!kids)との共演について語ってもらった。また最近は「ドキュメンタリー作品にハマっていて」と、プライベートな一面も明かしてくれた。
取材・文 / 奥村百恵撮影 / 曽我美芽
映画「ゴールド・ボーイ」予告編公開中
どんなに疲弊しても、とにかく撮影を楽しもうと
──まずは本作の台本を読まれた感想をお聞かせください。中国ではドラマが製作され、2021年に「バッド・キッズ 隠秘之罪」として日本でも放送されました。
純粋に面白いなと思いました。そのあとドラマ版の1話を観てみたら冒頭から引き込まれて「これ以上は引っ張られてしまうかも」と、自分の芝居に影響が出る予感がしたので途中で観るのをやめました。僕が演じた東昇は冷酷でサイコパスな人物。当たり前ですが共感できる部分がほとんどなくて。でも、そういう役を演じられるのがこのお仕事の醍醐味でもあるので、どんなに疲弊しても、とにかく撮影を楽しもうと。そう覚悟してオファーをお引き受けしました。
──東昇を演じるにあたり、どのような役作りをされたのでしょうか?
僕はこれまで何度か悪役と言われるような、あまり共感できないキャラクターを演じさせていただきましたが、基本的にはどんなに悪い人間でも自分の中で正当化するようにしているんです。「この人はこれが正義だと思っているはずだ」と、つい役に寄り添いたくなってしまう。だから今回の東昇に関しても、どこかで彼なりの正義を信じて演じることを意識していました。
──普段の岡田さんは穏やかでソフトな印象ですが、東昇を演じている岡田さんは完全に別人でとても怖かったです。
そういう感想はとてもありがたいです。ただ、現場では役のモードでいることが多かったので、それに引っ張られて周りに対してよくない態度を取ってしまっているんじゃないかと、ちょっと不安になるときもありました。演じていて楽しい。けれどちょっとつらい……。みたいな状況でした。
──羽村仁成さんらが演じた子供たちに振り回されて、東昇がどんどん疲弊していく姿もリアルでした。
僕自身、いろいろな面で消耗していました(笑)。それはメンタルのことだけじゃなく、本作の撮影中に別の作品の番宣をしていた関係で、飛行機移動がものすごく多かったんです。(沖縄の)那覇空港に着いたらすぐ現場に向かい、撮影が終わったら東京に戻るというのを繰り返していたので。だけど、それすらプラスに働けばいいなと思っていましたし、それがちゃんと役に反映できていたなら何よりです。
お芝居の最中に想像とまったく違う反応が返ってきたりした
──東昇のことを殺人犯だと知っている朝陽たち。彼らとの頭脳戦は本作の見どころとなっていますが、羽村さんたちとはどのようにコミュニケーションを取っていたのでしょうか?
東昇にとって朝陽たちはものすごく邪魔な存在で、彼らと対峙するシーンも多かったので、役として緊張感を持たせるためにも羽村くんたちとはあえて、あまりコミュニケーションを取らないようにしていました。きっとそのほうが彼らにとってもやりやすいんじゃないかなと思ったんです。でも、これまでは共演者の皆さんと楽しくコミュニケーションを取りながら関係性を作ることが多かったので、改めて自分にはいつものやり方のほうが合っているなと実感しました。もちろん、今回はいつもと違うことを試してみてよかったと思っています。羽村くんたちとはあまり話せませんでしたが、スタッフの方々とたくさんコミュニケーションを取り撮影に臨めたことは大きな意味がありました。
──北野武監督の作品で知られる撮影監督・柳島克己さんや、木村大作監督の「散り椿」や石川慶監督の「ある男」の照明を担当した宗賢次郎さんなど、そうそうたる方々がスタッフとして参加されていますね。かなり深いお話ができたのでは?
そうですね。貴重なお話を聞かせていただく機会がたくさんありました。本作についても皆さんの意見を伺いながらお芝居することができたので、すごくいい経験になりました。
──羽村さんたちのお話に戻りますが、お芝居で3人(羽村、上間夏月役の星乃あんな、上間浩役の前出燿志)と対峙されてみていかがでしたか?
経験を重ねてくると、ある程度“こんな感じで来るかな”と予想できるので、羽村くんたちとは事前に打ち合わせなどをしなかったこともあり、お芝居の最中に想像とまったく違う反応が返ってきたりしてすごく新鮮で楽しかったです。どこか昔の自分を見ているような不思議な感覚にもなりました。あと、僕が出ていないシーンに関して「羽村くんたちのお芝居とてもよかったよ」とスタッフさんが教えてくださることもあったので、「東昇とのシーンはより一層引き締めてやったほうがいいですね」と話したりする時間も楽しかったです。とても刺激的な現場でした。
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殺害方法を話せる相手なんて普通はいない