リドリー・スコットの情熱の炎に励まされた
──直己さんは、リドリー・スコット監督が製作した2019年の映画「アースクエイクバード」というハリウッド作品に出演され、アリシア・ヴィキャンデルさん演じる主人公リリーを惑わせる東京のカメラマン・禎司というミステリアスな役を演じられました。そのとき、リドリー・スコットさんに実際にお会いして「映画にとって必要な存在感がある」「続けたほうがいい」と言われたそうですが、それ以外にも何かお話しされましたか?
リドリーさんの仕事部屋でお話しさせていただいたり、ロンドンで行われた映画のプレミア上映でもお会いする機会がありました。日本に縁のある話として、(スコットが監督した)「ブラック・レイン」の撮影時に松田優作さんや高倉健さんとこんな会話をしたんだよという貴重なお話をしてくださいました。
リドリーさんはもうすぐ87歳ですよね。僕が会ったときもめちゃめちゃお元気でしたが、去年は「ナポレオン」、今年は「グラディエーターII」と、今も精力的にお仕事をされていて。その原動力ってなんなんだろうと考えます。もしかしたら、映画の中でポール・メスカルさん演じる主人公のルシアスが「怒り」が重要だと話すシーンがあるんですけど、創作の原動力として、リドリーさんの思いが込められているのかもって思いました。
──リドリーさんに会ったことで受けた刺激、また今作を観て受けた刺激もあるのではないでしょうか?
監督は何かを具現化したいという炎が、全然尽きないんだなと思って、自分も励まされました。情熱の炎って、いつか消えてしまうんじゃないかと思っていたんです。自分自身のことで考えても、ライフステージの変化によって、見える景色も、届けたい言葉も変わってきました。そうやって、自分の中の炎が揺らめいたり、大きくなったり小さくなったりを繰り返して、いつかその炎が消えてしまうんじゃないか不安に感じていた部分もあったんです。でも、リドリーさんにお会いしたとき「そんなことは全然ないんだ」と思えたし、そのときだからこそ伝えられるものもあるなと。「まだまだやりたいことがいっぱいある」という思いを聞いて、情熱をいただいた気持ちになりました。
──もし直己さんが、この映画の中に存在するとしたらと考えるといかがですか?
それは考えただけでめちゃくちゃ楽しいです。いわゆる大河的な歴史ドラマであるし、ロケーションやセットも含めて、あんな中にいられたら楽しいでしょうね。もしも「グラディエーター」の第3弾があったら、こういうインタビューにまた呼んでいただきたいです(笑)。
──そんなこと言わずに、第3弾に俳優として出てほしいです(笑)。
機会があれば、オーディションに参加したいですね! ただ東洋人がこの時代にローマにいたのかどうか(笑)。
映画にも通ずるEXILE TRIBEの“継承”
──「グラディエーター」と「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」を観ると、人から人へ伝えていく思いの濃さというものが感じられるので、LDHという事務所やEXILEに所属している直己さんにも重なるテーマなのではないかと思いました。
映画の話と自分たちの話をどのくらい重ねてもいいものかと考えていたんですが、そういう気持ちはあります。実はつい先日EXILE TRIBEのアーティスト総勢84名と作るお祭りのようなスタジアムライブ「LDH LIVE-EXPO 2024-EXILE TRIBE BEST HITS-」があったんです。スタジアムでのライブは過去にも経験していて、前回のスタジアムライブが2010年の「EXILE LIVE TOUR 2010 "FANTASY"」で、そのとき僕はEXILEの中で一番歳下でした。ライブの中での立ち位置も一番後ろの真ん中で、先輩たちの後ろ姿を見ながら、そのライブのスケールの大きさを感じ、ここまで続いてきた歩みの中にいるんだなと、ぐっときていたのを今でも覚えています。
──それから14年経ちました。
今回のライブでは、自分が歩んできた中で、この曲のときは苦しかったなとか、逆に楽しかったなということを思い出しながら84人で一緒にコラボしてステージに立っていたんです。そのライブの最後のMCで、BALLISTIK BOYZの砂田将宏というメンバーが、「24karats TRIBE OF GOLD」という曲のときに一番後ろの真ん中から先輩たちの姿を見ながらパフォーマンスをしていたと話して、当時の自分と同じことを感じていたんだなと感慨深いものがありました。
今回の「グラディエーターII」でも、ルシアスが最初は何者でもない戦士としてローマにやって来て、でも実は(父である)マキシマスの思いや、それ以前のローマのことも背負って、もう一度ローマの夢を叶えるために生きていくわけですよね。自分も、もちろん皆さんも、そうやって過去から未来への流れの中に生きていて。時代を託すために死んでいった人たちもいて、死んでもなお、みんなの希望であり続ける人もいて、そんな人たちの思いを背負って生きる人もいて……。「グラディエーターII」を観て、そういうレイヤーが描かれていることが、リドリー・スコットさんの作品の魅力の1つなんじゃないかなと感じました。
──まさに、「グラディエーター」とEXILEは「継承」という意味ですごくつながっていると思いました。この映画も、若い世代の方に、もっと伝わっていけばいいですね。
「グラディエーターII」って、約2時間半の間、集中して世界最高級の映像や音楽、美術、そして演出や演技を楽しめる作品だと思います。やっぱり、いいものを観てこそ自分の感性は磨かれると思うんです。この作品を観れば、確実に自分の興味の範囲を広げてくれるでしょう。こんな過酷なことを乗り越える人がいたんだと思うと、なぜか観終わって心が晴れるような感覚も得られます。自分のいる世界とは別の世界を知るということで、実は日頃の悩みから解放されて楽になれることってあるんですよね。もっとライトに伝えるならば「この映画、音楽もアクションもヤバい!」ってことですね。
プロフィール
小林直己(コバヤシナオキ)
1984年11月10日生まれ、千葉県出身。EXILE、三代目 J SOUL BROTHERSでパフォーマーを務める。役者としても活動し、2014年に配信ドラマ「医師 問題無ノ介」でドラマデビュー。2017年、映画「たたら侍」に出演。同作は第40回モントリオール世界映画祭のワールドコンペティション部門で最優秀芸術賞を受賞し、個人としてもオークランド国際映画祭で最優秀助演男優賞に輝いた。映画「HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY」「HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION」では九鬼源治役で強いインパクトを残す。2019年、EXILE TRIBEとショートショート フィルムフェスティバル&アジアとの共同プロジェクト「CINEMA FIGHTERS」の1編、行定勲が監督した短編映画「海風」で主演。同年、リドリー・スコット製作によるNetflix映画「アースクエイクバード」でハリウッドデビューを果たす。2021年には著書「選択と奇跡 あの日、僕の名字はEXILEになった」を刊行した。2025年2月下旬に「小林直己ファースト写真集(タイトル未定)」が発売される。
Naoki Kobayashi (@Naoki_works_) | X