映画ナタリー Power Push - 「ディストラクション・ベイビーズ」
村上虹郎×北村匠海対談 友人でありライバル、同世代俳優が激突した衝撃作
でんでんさんが怖すぎてコケた(北村)
──お二人ともオーディションで出演が決まったそうですが、ご自身とはかなり性格の異なる役ですよね。
北村 最初は将太と健児、どちらの役になるかわからなかったんです。主人公の泰良役が柳楽(優弥)さんっていうことは知っていて、もう1人が虹郎に決まったっていうのも聞いたので、泰良の弟にあたる将太役は、虹郎だろうなと。
村上 似てるからっていう話でしょ? 眉毛とかそういう話でしょ?
北村 うん(笑)。いや、雰囲気も含めてだよ! ただ性格のことを考えると、僕は将太のほうが近いとも思ってました。でも自分と正反対の健児っていう役柄を演じるのもすごく楽しかったですね。もちろん難しさもありましたけど。
村上 難しさと言えば、匠海は普段歌を歌ってるから声がすごくきれいなんですよ。だから最初の本読みのとき、「なんとかじゃボケ!」っていうセリフなのに声がきれいすぎて。
北村 そう、スカしてた(笑)。
村上 監督が「健児はそういう感じじゃないんだよなあ」ってね(笑)。「もっと悪そうに『おらあ!』って言ってよ」って言われてもうまくできない。どうしても都会のカッコいいやつみたいになっちゃうっていう悩みを抱えてたよね。
北村 「おらあ!」とか言うのって、自分の人生で通って来なかった道だったので……。
──それに加えて、方言の難しさもありますもんね。
村上 難しいんですよ、あれ! でも、伊予弁はかなり好きでした。語気も強すぎず、弱すぎずって感じで。
──お二人は取っ組み合いのようなシーンもありましたよね。あの場面の撮影はいかがでしたか。
北村 虹郎が真っ向からぶつかってきてくれたんです。
村上 お互い本気だったね。僕がしがみついて、匠海がそれを蹴るっていう形なので、本気でやってくれないと俺も痛がれないし。そしたら匠海、1回コケて(笑)。
北村 そう、しかもそのカットが使われたんだよ!
村上 匠海がカッコよく「おらあ!」って蹴って、僕を振りきって逃げたと思ったら、途中から走ってきたでんでんさんが怖すぎてコケちゃったの(笑)。
北村 でんでんさんが、あまりにも怖すぎたんですよ!! ただ走ってきてるだけなんですけど(笑)。
村上 僕も必死すぎて、隠して付けてたマイクが映っちゃってる。でんでんさんもけがしてたよね。
北村 全編通して、手加減なしって感じだったね。
男子のいけない憧れを強調した映画(北村)
──共演シーンは多くなかったとは思いますが、メインキャストの柳楽優弥さん、菅田将暉さん、小松菜奈さんと同じ作品に出演したことはいかがでした?
北村 刺激しかなかったですね。やっぱりすごいなって思いました。この映画は、虹郎や俺らの世代と、柳楽さんたちお兄ちゃん世代のストーリーが同時進行していくんです。やっぱり柳楽さんたちの世界観は俺らとは違うんですよ。特に柳楽さんはセリフがほとんどないんですけど、表情だけで伝える力が圧倒的でした。この作品に参加できて、この面々に入れてもらえたのは、僕にとって財産です。
村上 ここで出会うべき人たちに出会えたと思いました。東京に住んでたらフラッと会えちゃったりするんですけど、そうじゃなくて、この作品でこの人たちに出会えたっていうことが大きい。こんな形で絡んだらもう、次はがっつり共演したいって思うしかないですし。そうするには、僕はどうすればいいか?ってことをすごく考えました。
──完成作品を観たときの感想はいかがでした?
北村 初めて観たときは、音が印象的でした。向井秀徳さんの音楽もそうですし、喧嘩シーンでの殴ってる音だったりとか、耳で聞こえる情報が生々しいなって。それで世界観にグッと引きこまれました。
村上 すごく興奮させてくれる脚本だったんですが、映像がイメージできなかったんですよね。どういう画になるのかは松山のその現場に行った人にしかわからないし。でも俺は完成作品を観たときに、「やっぱりこう来たか!」と思ったんです。ただ予想通りっていうことではなくて、期待値をはるかに超えて、貫いてしまう威力がありました。最近は、恋愛要素のない作品がまず少ないですし。メジャーだと特に、原作ものでないオリジナル脚本もかなり珍しくて。暴力とか若者の衝動って、映像化するのは難しいテーマだったと思うんですけど、今回は全部が成立していると思いました。
──作品としては、ずっと喧嘩や暴力のシーンが続く異様な作りですよね。例えば北村さんは、「スラッシャー(DISH//ファンの総称)の若い女の子が観たとき、どう思うだろう?」と想像しましたか?
北村 この作品が刺さる世代って、俺らと同じ10代の、特に男子だと思うんです。心のどこかで、暴力や喧嘩に憧れを抱いたことが絶対にあると思うから。男子のいけない憧れを隠さずに強調して、映画のよさも詰め込んだのがこの「ディストラクション・ベイビーズ」だと思ってます。だから僕を応援してくれてる女性ファンの方々にはかなり刺激的な映画だと思うんですけど、そういう表現もあるんだよって伝えたいです。僕だけに着眼するなら、いつもと違う北村匠海が観れる映画だと言えるだろうし。
村上 むしろ、女性の意見が聞きたいよね。
北村 そう! 俺らにはわからないから、知りたいよね。
村上 Twitterの反応でも、「これ、怖そうだから観れるかわからない」っていう人が多いんですよ。「……でも匠海くん出てるし、がんばって観に行く!」みたいな(笑)。
北村 そう言ってくれる方、けっこういますね。
村上 それって、すごくいいことですよね。僕らが出てるから観てくれるっていうのは、映画にとってもいいことだと思う。
北村 ぜひ覚悟を決めて映画館で観てほしい!
村上 2、3人で劇場に来てもらって、手つないで観てればいいんじゃない? 怖いシーンは友達と一緒に乗り切ってもらって!
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「ディストラクション・ベイビーズ」2016年5月21日より全国ロードショー
愛媛県松山市の小さな港町・三津浜。喧嘩に明け暮れていた青年・泰良は、ある日たった1人の家族である弟・将太を置いて姿を消した。それからしばらく経った松山の中心街に、強そうな相手を見つけては狂ったように喧嘩を仕掛ける泰良の姿があった。野獣のようなその様子に興味を持った高校生・裕也は、泰良に「俺と面白いことしようや」と声をかける。そして2人は車を強奪し、そこに乗り合わせたキャバクラ嬢・那奈を後部座席に押し込んで、“危険な遊び”を加速させていく。その頃必死に兄を探していた将太は、友人の健児から、泰良と裕也が起こした事件がインターネットで話題となっていることを知らされる。
スタッフ
監督:真利子哲也
脚本:真利子哲也、喜安浩平
音楽:向井秀徳
主題歌:向井秀徳「約束」
キャスト
泰良:柳楽優弥
裕也:菅田将暉
那奈:小松菜奈
将太:村上虹郎
三浦:池松壮亮
健児:北村匠海
河野:三浦誠己
近藤:でんでん
©2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会
村上虹郎(ムラカミニジロウ)
1997年3月17日生まれ。東京都出身。2014年、河瀨直美が監督した第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作「2つ目の窓」に主演し俳優デビュー。その後「神さまの言うとおり」「忘れないと誓ったぼくがいた」「さようなら」に出演。2015年に連続ドラマW「天使のナイフ」にてドラマ初出演、実写版スペシャルドラマ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」にてドラマ初主演を果たす。同年「書を捨てよ町へ出よう」で舞台初出演にして初主演を飾った。2016年は出演作「夏美のホタル」の公開を6月11日に控えている。
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北村匠海(キタムラタクミ)
1997年11月3日生まれ。東京都出身。2008年、「DIVE!!」でスクリーンデビュー。主な出演作に「鈴木先生」「陽だまりの彼女」など。2016年に入り、「信長協奏曲」「セーラー服と機関銃 -卒業-」「あやしい彼女」と出演作の公開が続いている。TAKUMI名義で4人組ダンスロックバンドDISH//のメインボーカル兼ギターとしても活動中。
2018年4月5日更新