韓国映画「コンクリート・ユートピア」特集|ぼる塾・田辺智加がラストに涙、自身の“極限状態”エピソードも (2/2)

田辺さんの“極限状態”は?「震える手で炭酸水を買いました」

──怖いといえば、田辺さんがこれまでに経験した“極限状態”を教えてください。いつも穏やかなイメージですが、取り乱すようなことはあるんですか?

あります、あります。この映画のレベルとは違いますけれども、滝行のお仕事をしたことがあるんです。朝の4時頃に出発するロケだったのですが、早朝すぎたため「朝ごはんは大丈夫です」とお断りして山道を歩き始めたところ、最終的に滝にたどり着くまで12時間ぐらい掛かってしまって。その間、ごはんを食べられなかったので空腹。しかも足元は足袋で歩いていたので、地面の石が足の裏に当たって痛くて痛くて。さらに、私の巻き爪問題もヤバくて……。いろいろと重なって、震えながら歩きました。

ぼる塾・田辺智加

ぼる塾・田辺智加

──空腹だと代謝が上がらず、寒そうですもんね。

それが、暑かったんです! 滝に打たれるからというのでウェットスーツを着て山登りをしていたので、重たいウェットスーツが体に張り付いてきてしんどくて。滝行では、滝に打たれて「うわあー!」と厳しい表情をしている画が撮りたいと言われていたんですけど、そこまでがあまりにも苦しすぎたので、滝を見たら「やったー! 水だ!」と興奮し、いざ滝に打たれたときは「気持ちいい~」となってしまいました(笑)。下山したらすぐにウェットスーツを脱いで、震える手で自動販売機にお金を入れて炭酸水を買いました。ロケで食事をしなくてはならなかったので、その場は炭酸水でしのいだのですが、「生き返った!」と感じたあのときの一口は、今でも忘れられません。あれこそ、本当に極限状態だったと思います。そのあとに食べたソースカツがめちゃくちゃおいしくて、おいしくて。

滝行ロケで体験した“極限状態”を思い出す田辺智加。

滝行ロケで体験した“極限状態”を思い出す田辺智加。

──けっこう体を張るロケをされているんですね。

普段から「ぼる塾は体を張るロケはしない」と言っているんですけど、気が付いたら意外と張っているんですよね。でも、そこから私は常に食べ物を持ち歩くようにしているんです。

──確かに、YouTubeで田辺さんのカバンの中身を公開する動画を観たりすると、バックパックにたくさんの食べ物が入っていますよね?

そうなんです。まさにその滝行後から始めたことで、サバイバルのために食料を入れています。今日もこのあとは劇場に行くんですけど、めちゃくちゃお菓子を持って来ています。みんなで食べるおやつでもあり、いざというときのための食料でもある。今日はレモンケーキなんかを用意しています。それから大阪の劇場などに行く際は、新幹線に乗っている3時間の間に何かあったらどうしようとか、出番の待ち時間の間に何かあったら怖いなと思って、必ず1~1.5Lのペットボトルを持ち歩くようにしています。いざ何かあったら大パニックになりそうなので。あと、パニックと言えば、私、閉所恐怖症でもあるんです。

──そうなんですか?

はい。一度ロケで、新潟県に伝わる伝統行事「むこ投げ」というのを体験したんです。新婚の男性を雪の中に放り投げて、結婚をお祝いするんですけど、そのむこ役として雪山に放り投げられまして。コロコローッと斜面を転げ落ちるんですけど、そのときに着ていた上着が私の頭をすっぽりと覆ってしまい、急に閉塞感に襲われたんです。それで大パニックになって「助けてー!!」と大声で叫んでしまって。あのときの取り乱し方を思い出すと、自分でもちょっと怖いくらいです。

ラストがすごく印象的で、私は泣いてしまいました

──今作は自分を犠牲にしてでも家族(=住民)を守るという正義が、人々を狂気へと誘う部分もあると思います。田辺さんにとって、何があっても守りたいと思う存在はいますか?

自分です。こういう場面ではかっこつけたいところなんですけど、どうやっても誰かを守るなんてことはできない。想像すらできません。ぼる塾のメンバーといても、そんな余裕はない気がします。

映画の感想を書いたメモを見るぼる塾・田辺智加。

映画の感想を書いたメモを見るぼる塾・田辺智加。

──ぼる塾のメンバーの中で、いざというときに頼りになるのは誰なのでしょうか?

ぼる塾は酒寄(希望)さんがリーダー的な存在で、それをあんりが支えるという感じなので、一番は酒寄さんでしょうね。以前、「もし、ぼる塾のみんなが川で溺れるようなことがあったら、誰を助ける?」という話になったことがあるんです。そうしたら、酒寄さんも、あんりも、はるちゃん(きりやはるか)も、全員が「田辺さんを助ける」と言ったんです。みんなが「ほかのメンバーと田辺さんを比べてもしょうがないよ。みんな田辺さんを助けるよ」って。私はそうやってみんなが「田辺さんを助ける」と言えるのがすごいなと思いました。私も「この人を助ける」と言ってみたいですが、でもねえ~。無理なんですよ。

──ちなみに、今作のキャッチコピーが「狂気が目覚める」なのですが、よく知る人たちの中で狂気が目覚める瞬間を目撃したことはありますか?

狂気ではないんですけど、あんりは仲間を傷付けた人に対しての怒りというか、熱量はすごいです。1回仲間が傷付けられたときがあったんですけど、そのときの目付きの変わり方に、「わ、この人すごいな」と思いました。

韓国映画「コンクリート・ユートピア」場面写真

韓国映画「コンクリート・ユートピア」場面写真

──復讐心に燃える感じなのですか?

いえ、そういうのではなく「仲間を守れなかった」という思いです。狂気とは違いますけど、彼女は自分が傷付くよりも仲間が傷付くほうが許せないんです。

──ぼる塾の皆さんの仲のよさが伝わってきます。何かあってもみんなで手を取り合って苦難を乗り越えそうな感じがします。

それはあるかもしれないです。その事件があったときに、私とあんりの前にでっかい焼きたての肉があったんですけど、あんりは「仲間を守れなかった」と言って泣いていて。私は焼きたての肉を食べたいんですけど、あんりが泣いてるのでどうすべきか迷い、「いったん、食べるのはやめておこう」と思ったんです。でも、あんりも私が熱々なものが好きなことを知っているから、食べないと食べないで彼女もまた気を使う……。ということで、私はあんりが泣いている横で肉を食べました(笑)。

ぼる塾・田辺智加

ぼる塾・田辺智加

──そういう話を聞けば聞くほど、普段「コンクリート・ユートピア」のような作品はあまり観ないというのがわかりますが、今作をご覧になってその考えに少し変化はありましたか?

はい。今作は災害の怖さもありますが、それ以上に人間のドラマであって、怖さの中にブラックなユーモアがあったりして、想像していたものと違ってものすごく面白かったです。どういう展開になるのかも読めないので、ずっとドキドキしていました。そして、ラストシーン! ラストがすごく印象的で、私は泣いてしまいました。結局自分の行いは自分に返ってくるのかな?なんていうことも感じましたし、“生きる”ってすごいことなんだな、ごはんの備蓄は大事なんだな、ということも改めて学びました。ここでは多くは語れませんけど、ミンソンさんのキュンポイントもあるので、そこにも注目です。

韓国映画「コンクリート・ユートピア」場面写真

韓国映画「コンクリート・ユートピア」場面写真

プロフィール

田辺智加(タナベチカ)

1983年10月18日生まれ、千葉県出身。酒寄希望とのコンビ・猫塾と、あんりときりやはるかのコンビ・しんぼるの2組が合流し、2019年にお笑いカルテット・ぼる塾を結成。「女芸人No.1決定戦 THE W」では2020年、2023年に決勝進出を果たした。趣味は韓国ドラマ、特技はお菓子作りで男性を虜にすること。韓国語能力試験1級を保持している。