SWAYが語る「ブラックパンサー」|魅力的すぎるヴィランに憧れて

ケンドリック・ラマーは、ヒップホップを変えてくれた

──この作品は、音楽を担当したケンドリック・ラマーなしには語れません。SWAYさんにとって、ケンドリック・ラマーはどんな人物ですか?

SWAY

天才だと思います! ヒップホップってもともとニューヨークのゲットーで生まれた音楽だから、ギャングのイメージが強いと思う。実際、1990年代には2PACとThe Notorious B.I.G.が抗争の影響で亡くなっているけど、現在はその頃とはかなり状況が違っていて、ビルボードチャートの上位を席巻したり、グラミー賞を獲るのが当たり前のジャンルになってきた。ケンドリックは、ワルのイメージがあったヒップホップを変えて、アーティスティックなものにしてくれた存在なのかなって思いますね。

──ケンドリック・ラマーは、「人として正しい行いをすることこそが本当にカッコいい」という行動を示して、世界中を納得させましたよね。

それまではギャングがヒップホッパーになるっていう仕組みがあった中、もともとギャングでもなかったケンドリック・ラマーはまったく別の生き方をしてきましたよね。だから彼にしか作れない音楽があると思うし、彼がこうやって「ブラックパンサー」という映画へ大々的に参加することが、ヒップホップに1つの夢を与えていると思うんですよ。これからケンドリック・ラマーを追いかけるラッパーが、もっと増えるんじゃないかなって。

──映画にインスパイアされたアルバム「ブラックパンサー ザ・アルバム」は聴きましたか?

「ブラックパンサー」より、ブラックパンサー。

聴きました! この映画を観てから、かなり聴いてましたね。音楽を聴くだけで映像を思い出せるので。ケンドリック・ラマーとSZAの「All The Stars」のリリックを調べて、映画の内容とすごくリンクしていると思いました。この映画全部が、エンディングで流れる「All The Stars」のミュージックビデオのように感じましたね。

──ケンドリック以外にも、影響を受けた海外のアーティストがいたら教えてください。

僕がヒップホップを始めたのは16歳の頃で、親のおかげで普通に高校まで行って、苦労なく育ててもらっていたんです。そんな中、「8Mile」っていう映画がヒットして。

──日本では2003年に公開されたエミネムの自伝的映画ですね。

SWAY

はい。映画の中で、エミネムが演じる主人公のラビットがトレイラー暮らしをしていたんですよ。本当にそういう生活をしている方に対してすごく失礼になっちゃうんですけど、当時はそれに憧れたというか、「なんで俺んちは普通なんだよ!」「なんで俺ってギャングじゃないんだろう」って思っていたときがあって。それで必要ないのにワルぶったり、ヒップホップイコール“ワルじゃないと駄目”みたく考えていたんです。でもカナダのトロントへ行っていた19歳から21歳の頃に、カニエ・ウェストがフックアップしたルーペ・フィアスコっていうシカゴのラッパーを知って。

──カニエ・ウェストの「Touch The Sky」にゲスト参加し注目されたラッパーですね。

はい。彼のリリックには日本のアニメ、マンガ、ファッションブランドの名前がたくさん入っているんですよ。周りにはギャングの友達がたくさんいるけど、彼自身は日本オタクで、家でマンガを読んでいるような人物。そんな人が自分のライフスタイルに合わせて作った音楽がすごくカッコよくて、「俺、めっちゃバカなことしてたな、なんで無理してワルぶってたんだろう」「俺も本当に好きなものを音楽にできるようなアーティストになりたい」と思って、無理をしない音楽スタイルを目指すようになりました。

「ブラックパンサー」から得たアイデアが生かされるかも

──今はDOBERMAN INFINITYのニューアルバムを制作中なんですよね。

絶賛制作中ですね。歌詞を書くときが一番大変なんですが、その山は越えたかなっていう状況です。

──今回の歌詞はどんなテーマですか?

SWAY

今回のアルバムは「OFF ROAD」っていうタイトルです。僕らDOBERMAN INFINITYも今の体制になって4年目に入ったんですが、実際のところ、目標地点まですんなり行けていないという気持ちがあって。でもそれをマイナスに捉えず、「どんな道筋を描いてでも絶対にゴールまでたどり着こうよ」という思いが込められています。どんな障害があるかわからないけど、5人で一緒に乗ったこのオフロードカーで、派手に行きましょうか!っていう感じで。

──ヒップホップらしいテーマですね。

そうですね。自分たちの生活と常にリンクしているのがヒップホップだと思っているので。きれいにホップ・ステップ・ジャンプで高みに行けるグループもいれば、僕らみたいに次のステップへ行くまで時間がかかるグループもいる。でも僕たちなりに、絶対夢をつかみましょうっていう気持ちです。

──何があっても受け入れて前に進んでいくという意味では、ケンドリックが発しているメッセージとも通じている部分がありますね。

だから「ブラックパンサー」を観て、がんばろうって思えました。僕、マーベル作品も含め映画を観るのが大好きなんですけど、だいたいアルバムや楽曲のアイデアを出すのは映画を観た翌日ですね。

「ブラックパンサー」より、マイケル・B・ジョーダン演じるエリック・キルモンガー(手前)。

──そうなると、今回のアルバムに「ブラックパンサー」から得たアイデアが生かされる可能性も?

バンバンありますね。だいぶ影響受けてますから。実際にファッション面では、グリル作ったくらいなので(笑)。

──ありがとうございます。では最後に、この映画をどんな人にオススメしたいかを教えてください。

「ブラックパンサー」

始まった瞬間、最初の映像からヒップホップの世界に引き込まれるんです。僕はマーベル映画ということを楽しみにして、何も予習せずに観たんですが、一発目から「今までのマーベル映画ともちょっと違うかも」と思いました。マーベルファンの方はいい意味で裏切られると思うし、映画としてのクオリティが高いのでマーベルを知らない人でも楽しめる。ストーリー性も、音楽性も、ファッション性も強いので、どれか1つでも好きなポイントがあればこの世界にバッと入り込めると思う。だから今はこの流れに身を任せて、何も考えずにただ観てください!と言いたいですね。

「ブラックパンサー」
2018年3月1日(木)全国公開
「ブラックパンサー」
ストーリー

アフリカの秘境・超文明国家ワカンダには、ある秘密があった。それは、世界を滅ぼしてしまうほどのパワーを秘めた希少鉱石“ヴィブラニウム”の産出地であるということ。歴代のワカンダ王は、この鉱石が悪の手に渡らないよう秘密を厳守するとともに、鉱石を研究し最先端のテクノロジーを生み出していた。父を亡くした若き国王ティ・チャラは、儀式を経て国を守るヒーロー“ブラックパンサー”に即位する。しかしまだその心構えを持てず、かつての婚約者ナキアへの思いも断ち切れないティ・チャラは葛藤していた。その頃、ワカンダを狙う謎の男エリック・キルモンガーと、武器商人のユリシーズ・クロウが手を組み、大英博物館にあったヴィブラニウム製の武器を盗み出し……。

スタッフ / キャスト

監督:ライアン・クーグラー

脚本:ライアン・クーグラー、ジョン・ロバート・コール

出演:チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、マーティン・フリーマン、ダニエル・カルーヤ、レティーシャ・ライト、ウィンストン・デューク、アンジェラ・バセット、フォレスト・ウィテカー、アンディ・サーキスほか

DOBERMAN INFINITY「OFF ROAD」
2018年4月18日(水)発売 / LDH MUSIC
DOBERMAN INFINITY「OFF ROAD」

初回限定盤 [CD+DVD]
4536円 / XNLD-10014/B

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DOBERMAN INFINITY「OFF ROAD」

通常盤 [CD]
3218円 / XNLD-10015

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SWAY(スウェイ)
SWAY
1986年6月9日生まれ、北海道出身。2014年に結成されたDOBERMAN INFINITYでMCを担当するほか、HONEST BOYZ®や「HiGH&LOW」シリーズから生まれたMIGHTY WARRIORSとしても活動中。ソロとしても多くのビッグアーティストの楽曲に客演参加し、2017年11月にDef Jam Recordingsよりソロデビューシングル「MANZANA」をリリースした。劇団EXILEメンバーの野替愁平名義で俳優業もこなしており、「ホットロード」やドラマ「ワイルド・ヒーローズ」、「HiGH&LOW」シリーズなどに出演した。2018年4月18日には、DOBERMAN INFINITYの3rdアルバム「OFF ROAD」が発売される。

2018年3月6日更新