タランティーノとギレルモ・デル・トロがどう思うか知りたい(山寺)
──先ほど完成版を観終えたばかりということですが、ご覧になった感想をお聞かせください。
山寺宏一 アフレコの時点で、これはすごい作品になるぞという予感はしていたんです。そして今日、それが確信に変わりました。アメリカのヒーローをモチーフとしているのに戦国時代の日本が舞台。どちらの要素もうまくミックスされていて、今まで観たことのない作品になっていました。(クエンティン・)タランティーノとギレルモ・デル・トロがどう思うか知りたいなあ(笑)。
高木渉 僕も想像以上の作品だと思います。アフレコではまだ画が未完成だったので、どういう仕上がりになるのかわからない部分もあって。いざ完成版を観たら、プロフェッショナルが集結したガチのぶつかり合いと言いますか。僕たち声優も、画に負けたくない、音楽にも負けたくないという気合いで臨んだので、勝ち負けじゃないですけど、そういう思いが融合してうまく形になったんだと思います。
──確かに、設定やストーリーからして「今まで観たことのない」作品です。本作への出演が決まったときの心境はいかがでしたか?
山寺 まずは、よくDCが許したなと!(笑) バットマンを主人公にした作品を、日本のチームが作る。しかも戦国時代の日本に飛ばすって……普通ならOK出ませんよね。あとマネージャーに「『バットマン』の仕事が入りました。忍者です」って言われたとき、「レゴニンジャゴー」の新作にバットマンが出るんだと思いました(笑)。アメコミ原作の長編アニメーション自体が珍しいのに、それを日本が制作するなんて本当にすごいことですよ。
高木 昔から「バットマン」シリーズを知っているファンの方は、あらすじを読んで「え?」と感じる部分があるかもしれません。でも実際に映画を観ると、すべてのシーンにおいて真剣に遊んでいるところが面白い。遊びと言っても悪ふざけではないですよ。映像のクオリティと音楽の迫力、それに僕ら声優陣のセリフが融合して、「バットマン」の世界でこんなことが起こっちゃっていいの!? いや、いいんです!って、真剣にやっているから迫力があります。
山寺 それに見てくださいよ、ポスターのバットマンのビジュアル。まるで、最初からいつか甲冑を着ることが予想されていたかのような。このビジュアルを見ただけで、戦国時代に飛ぶっていうのがナイスアイデアだったと思い知らされました。少し前は「スーサイド・スクワッド」でマーゴット・ロビーが演じたハーレイ・クインのコスプレが流行りましたけど、今年は和のテイストを取り入れたDCキャラのコスプレイヤーが世界中のハロウィンを席巻するんじゃないかな(笑)。
アニメーション業界の新しい風、まさに神風(高木)
──海外での展開も続々と始まっていますが、どのようなところが海外のファンに受けると思いますか?
山寺 日本でも海外でも、アニメ好き、アメコミ好き、歴史好き、コスプレ好きな人たちや、日本好きの外国の方……いろんな人に響くと思います。あと海外の人にとっては、やっぱり日本っていうと戦国時代のイメージがあるんじゃないかな。黒澤明監督の作品や、若い世代はジャパニメーションからの影響など……そのへんは裏切りや謀反っていう時代劇によくある展開も、バットマンとジョーカーの争いとうまくシンクロしていますよね。
高木 忍者や侍も人気がありますしね。あと殺陣のシーンがすごいです。モーションキャプチャなしで描かれたと聞いて驚きです。すごい技術ですよね!
山寺 それに「尾張の国=The End」とかの言葉遊びをどうやって訳すかも気になる(笑)。
──本作は神風動画が初めて手がけるオリジナル長編作品ということでも話題です。
高木 アニメ業界も革新的かつクオリティの高い制作会社がどんどん出てきていますよね。しかもずっとアニメをやっていたわけじゃなくて、ミュージックビデオとかを作っていたりした会社が。そういう意味では、神風動画もこの業界に吹く新しい風なのかな。まさに神風ですよ。
山寺 僕はこの「ニンジャバットマン」で初めて神風動画の存在を知って、こんなにカッコよくてクオリティの高いアニメーションを作る会社があるのかと驚いたんです。次にその名を目にしたのが、「ポプテピピック」が大流行しているというニュースを読んだときで……嘘だろ、同じ会社なの!?って(笑)。振り幅がすごいですよね。こんな両極端の作品ができるんだから、もう全部できますって言っていいんじゃないかな(笑)。
- 高木渉(タカギワタル)
- 1966年7月25日生まれ、千葉県出身。1987年に声優デビュー。「機動新世紀ガンダムX」のガロード・ラン、「め組の大吾 火事場のバカヤロー」の朝比奈大吾、「はじめの一歩 Rising」の青木勝、「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」の虹村億泰、「名探偵コナン」シリーズの小嶋元太と高木刑事など数多くのキャラクターの声を担当する。俳優としても活動し、NHK大河ドラマ「真田丸」でテレビドラマに初出演した。
- 山寺宏一(ヤマデラコウイチ)
- 1961年6月17日生まれ、宮城県出身。1985年に声優デビュー。ジム・キャリー、エディ・マーフィー、ウィル・スミスといったハリウッドスターや、ディズニーアニメーション「美女と野獣」のビースト、「アラジン」のジーニーなど多数の作品で日本語吹替を担当する。1989年公開作「バットマン」ではマイケル・キートン演じるブルース・ウェイン / バットマンの吹替を務めた。そのほか「ポケットモンスター」シリーズのミュウ役、「それいけ!アンパンマン」のめいけんチーズ役、「ルパン三世」シリーズの銭形警部役などでも知られる。
- 「ニンジャバットマン」
- 2018年6月15日(金)全国公開
- ストーリー
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戦国時代の日本。現代の犯罪都市ゴッサムシティからタイムスリップしてきた悪党たちが、“ヴィラン大名”として勢力を振るっていた。彼らが好き放題に暴れ続ければ、世界の歴史が変わってしまうことに。同じく日本に降り立ったバットマンは最狂の悪党ジョーカーたちに立ち向かう。
- スタッフ
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監督:水﨑淳平
脚本:中島かずき
キャラクターデザイン:岡崎能士
音楽:菅野祐悟
アニメーション制作:神風動画 - キャスト
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声:山寺宏一、高木渉、加隈亜衣、釘宮理恵、子安武人ほか
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